令和元年度受賞企業インタビュー
スムーズビズ推進大賞 大賞 特別賞【エリア連携賞】
浜松町駅周辺TDMプロジェクト
受賞理由
東京ガスとJR東日本が幹事企業となり、「浜松町駅周辺TDMプロジェクト」を発足。浜松町駅周辺に所在する企業計11社が連携して人の流れに関する取組を展開し、スムーズビズ推進期間コア日である7月24日を中心にトライアルを実践した。加えて、浜松町駅を利用する乗降客に向けスムーズビズ普及啓発を行うことで、プロジェクトの活動をエリア全体に向けて発信。地域と企業が連携してスムーズビズに取り組んでいる点が、他にはない特徴として評価された。
- ●人の流れに関する取組:浜松町駅周辺TDMプロジェクトの発足(他企業への働きかけ)、プロジェクト参加企業によるトライアル集中実施(休暇取得、テレワーク、時差出勤など各社状況に応じて参画)、大会時の取組に反映するため、プロジェクト参加企業のトライアル結果の把握
- ●普及啓発に関する取組:ポスターの掲出およびアナウンスの実施、駅構内でのポケットティッシュの配布を実施(時差出勤のご協力依頼を記載)、駅ご利用者への取組み結果のフィードバックの実施(ポスター掲出)
周辺に多くの企業を抱え、羽田空港へのアクセス主要駅ともなっている浜松町駅。東京2020大会時の交通混雑緩和に向けた重点取組地区内に位置し、常に多数の乗降客で混み合っているこの駅の混雑緩和を目的として「浜松町駅周辺TDMプロジェクト」は立ち上げられた。幹事企業として取組をけん引してきた東京ガスと、鉄道事業者であるJR東日本の2社は、短い準備期間で、複数企業と地域が協力して実践されたこのプロジェクトを進めてきた。プロジェクトを代表して、東京ガス株式会社東京2020オリンピック・パラリンピック推進部マネージャーの芳賀様と、東日本旅客鉄道株式会社 東京2020オリンピック・パラリンピック推進室の村井様の二人から、プロジェクトの詳細について話を伺った。
スムーズビズに参加した理由
浜松町駅に本社を構える東京ガスは、同じく東京2020オフィシャルパートナー企業であるJR東日本と情報交換を行う中で、駅の混雑緩和につながる何かしらの取組を共同で行えないかと模索を始めた。しかし、2社だけで「点」の活動を起こしても、駅全体の混雑緩和を図ることは難しい。そこで周辺企業にも参加を促し、「面」の活動として「浜松町駅周辺TDMプロジェクト」を立ち上げた。
「特に混雑の激しい、朝8時台のご利用の分散をまずは目標に定めました。大会期間中の輸送をいかにスムーズに完遂するか、特に朝の通勤時間帯をどう乗り切るかは鉄道事業者である当社の重要な課題です。そして、その解決のためにはお客さまのご理解をいただき、一緒になって取り組んでいただくことが必要不可欠です。この連携は他に先駆けた取組として、とてもありがたい機会になったと思っています」(JR東日本 村井様)
「社内的にもちょうどテレワーク等の制度活用を進めようとしていた時期でもあり、より大きな成果に繋げられればと、JR東日本様や近隣の企業様と協力することになりました。当社は、各企業様へプロジェクト参加の声掛けを担当したのですが、その際、共通のキーワードとして『スムーズビズ』という公の取組をベースに呼びかけができたのは、とてもやり易かったです」(東京ガス 芳賀マネージャー)
協議の上、トライアル実施日はコア日である7月24日に設定。参加企業11社が、休暇取得、テレワーク、時差出勤など、自社の持つ制度を活用して、浜松町駅の混雑緩和に取り組んだ。
取組に当たり苦労したこと
「プロジェクトへの賛同を得るために、一社ずつ企業訪問をしてご説明していきました。この参加呼び掛けによって、東京オリパラ時の混雑緩和への具体的な取組イメージが初めて湧いたという企業様がいた一方で、参加を即断できない企業様もあり、時間的余裕が持てなかったことが残念な点でした」(東京ガス 芳賀マネージャー)
JR東日本では、トライアル実施日一週間前から浜松町駅において、ポスター掲示や時差出勤の協力依頼を記したチラシを挟み込んだポケットティッシュを配布した。いずれも限られた期間内での活動となったが、結果としてトライアル実施日の浜松町駅のTDM効果(ピーク1時間:8時台)は約12%減、プロジェクト参加企業の出勤者は43%減と大きな成果を残した。
一定以上の結果をもたらした本プロジェクトだが、そこから見えてくる課題もあったという。「今回は1日だけの取組となりましたが、来年の東京2020大会期間は、一カ月以上と長期にわたります。その間、混雑緩和を維持していくには、私たちとしてどんなことを行えばいいのか。残された時間で、解決すべき課題はたくさんあります」(JR東日本 村井様)
「今回の成果を裏付けとして今後も活動を進め、浜松町駅周辺の混雑緩和のために尽力していきたいと考えています」(東京ガス 芳賀マネージャー)
東京2020年大会のレガシーを目指す取組
「浜松町駅周辺TDMプロジェクト」は、今後も参加企業を募り、その裾野を広げながら推進していく予定だという。今後は、今年度の取組から見えてきた課題をどう解決するか、増加していくであろう参加企業同士で情報交換を行いながら、その策を見つけていく予定だ。
「特に来年の大会本番時においては、競技の開催時間等により、いつ、どの時間に浜松町駅が混雑するかという情報を得ることが重要です。それによって、企業側も対策の取り方が変わってくるでしょうから、細かい情報もやりとりし、今回同様に一定の成果を出せればと考えています」(東京ガス 芳賀マネージャー)
JR東日本では、その他地域への横展開も検討中だ。「今後は、その他の重点取組地区の皆さまとも、今回のトライアルのような取組を一緒になってどう行っていけるか考えていきたいと思っていますし、大会以降も継続していっていただけるようなレガシーになったら嬉しいです」(JR東日本 村井様)
東京2020オフィシャルパートナー企業同士がかじ取りをし、同じエリアで働くあらゆる業種の企業と協力しあいながら、混雑緩和や働き方改革を目指していく。まさに、『新しいワークスタイルや企業活動の東京モデル』スムーズビズを象徴するような取組である本プロジェクトは、企業と地域がつながりながら、今後も地道に、かつ着実な活動を続けていく。
スムーズビズ推進者の声
関わった取組
浜松町駅におけるスムーズビズ普及啓発活動
プロジェクトのトライアル実施日に向け、PRポスター掲示のほか、時差出勤をPRする1万個のポケットティッシュを駅にて配布しました。朝8時30分頃からのスタートでしたが、9時前には予定個数を配布終了。利用者の皆さんも、関心を持って受け取ってくれていたように感じます。
その効果があってか、トライアル当日には、目に見えて改札口を通過するお客様の数が減りました。周辺企業の皆様のご協力が大きな要因ですが、私たちの取組みも大切だと考えており、今後もより多くの皆様にご協力をいただけるよう、地域の皆様と連携しながら努力を重ねていきたいと思います。