ここから本文です。

インタビュー

スムーズビズ推進期間結果公表イベント

令和元年度受賞企業インタビュー

スムーズビズ推進大賞 大賞

TDMテレワーク実行委員会(23社連合)

受賞理由

東京2020大会時の交通混雑緩和に貢献することを目的に、首都圏に所在する中小IT系企業23社が連携した「TDMテレワーク実行委員会」。「子連れテレワーク」など、ユニークな取組を進め、期間中に延べ5,000回以上のテレワークを実施した。また、連携のきっかけが各社の広報担当者で運営するコミュニティだったこともあり、参加した23社でプレス会見を行うなど、メディアへの発信力も高く、スムーズビズやテレワークの普及啓発に貢献した。

  • ●人の流れに関する取組:23社の対象社員1,300人に対象期間のテレワーク、有給休暇取得、ワーケーションを推奨
  • ●モノの流れに関する取組:宅配便配達日の管理、紙の削減など配送車両の頻度を減らす取組を企業ごとにできる項目で実施
  • ●普及啓発に関する取組:23社内でのノウハウ共有、SNSを通じてテレワークの情報発信、TV新聞ウェブメディアなど30社が集まった記者発表会で各社取組を紹介

取組の詳細についてはこちら

東京2020大会の交通混雑緩和に貢献したいという思いから、アステリア社の呼びかけに応じた22社が集まり「TDMテレワーク実行委員会」という連合体で、スムーズビズの取組を実施した。社員数の少ない中小企業1社では効果が限定的であるという発想から、各社のノウハウを共有して、一定の成果を上げることを目的にした今回の連合は、23社1,300人でテレワークを合計5,000回以上にわたり実施するなど、大きな成果を残した。実行委員会の発足から現在に至るまでについて、アステリア株式会社広報・IR室 室長 長沼様に話を伺った。

スムーズビズに参加した理由

アステリア株式会社 広報・IR室 室長 長沼 史宏 様
アステリア株式会社 広報・IR室
室長 長沼 史宏 様

近年、夏の気温上昇が話題になっているが、アステリア社では夏の期間中、最高気温予想が35度以上の日は出社せず「猛暑テレワーク」を実施している。「猛暑の中通勤して体力を奪われて生産性が落ちるより自宅で快適に仕事をする」というユニークな働き方を実践する中で、東京2020大会に向けてスムーズビズという取組があることを知った同社。テレワークは当たり前のことになってきたが、TDMに貢献できるテレワークとは何か?を追求していきたいという思いから、自社のネットワークを使って各社に声をかけたという。

「以前より当社が中心となって、広報のコミュニティを運営しています。個性的なテレワークを実施している企業は思いのほか多くあります。1社1社で進めるよりも連携した方が社会への貢献度も高まるのではないかと考えて声をかけていきました」(長沼室長)

当初40社以上の賛同があったが、まずはスムーズビズ推進期間に間に合わせることが可能な23社で実行委員会を作り、社会に対して新しい考え方を発信していく活動をスタートさせた。

取組に当たり苦労したこと

参加23社が集う最初のミーティングに、お子さん(乳児)を連れてきていたメンバーがいたという。その企業では子連れでの出社が可能ということから子供と一緒に働くニーズについて議論したところ、東京2020大会期間中は都内の学校は夏休み中であり、子連れでのテレワークも必要ではないかという話に展開していき、「子連れテレワーク」を実施することになったという。更に7月21日には、参加企業23社が集まって記者会見を実施するなど、普及啓発活動にも注力した。また、TDMテレワーク実行委員会名義でSNSを利用し、23社持ち回りで投稿することで情報共有を図った。このように情報発信をしたこともあり、外部からの問い合わせも増えたというが、テレワーク未導入の大企業からの問い合わせの中には「在宅勤務する社員と出勤する社員の不公平感は、どう解決したらよいのか」 というものもあったという。

「“いざ鎌倉”ではないですが、何があっても会社に行くことが良いことだという文化で日本は成長してきました。しかし、そうした文化に新しい風を吹き込むことが私たちの目的であり役割だと思っています」(長沼室長)

そんなアステリア社では、現地の文化・風習に触れながら仕事をする海外テレワークも積極的に進めている。海外テレワークは特に管理職から率先して参加させているという。上層部から 進めれば制度の浸透が早いという理由の他に、マネジメント能力の向上も大きな目的である。テレワークの成功には、管理する者のスキルアップも重要な要素となる。日々一緒に目の前で 仕事をした方が、所属メンバーの仕事ぶりを見ることができ、表情や態度から感じ取れることも多く、当然ながらマネジメントしやすい環境にある。しかし、これからテレワークを含めた多様な働き方をスムーズに導入していくには、管理職には離れて仕事を進めながらも、しっかりとマネジメントしていくという能力が必要不可欠になっていくという。

東京2020年大会のレガシーを目指す取組

実行委員会の中には、実は今回始めてテレワークを実施する企業もあった。そうした企業からは「とても参考になり、これからの働き方が見えてきた」という声も多かったという。今後は、 テレワーク定着のために、勤怠管理に関する勉強会を開催することも予定している。また、ワーケーションを推進し、地方自治体とのつながりを強化してコワーキングスペースを準備、設置する企業も増えている。休みに農家民宿に泊まって、地元の人と交流しながら仕事を進めることで、「関係人口」を増やしていくとともに、その地域に新しい価値を生み出ていこうと考えているという。

「東京2020大会のパブリックビューイングを地方で行っても面白いと思うんです。地方で仕事をしながら、現地の方と一緒に観戦して盛り上がり、よりつながりが深くなっていく。また、期間中に地方に行くことで、都内の混雑緩和にも貢献できます」(長沼室長)

東京2020大会に向けたTDMはもちろんだが、BCP対策にもテレワークは重要だ。育児や介護などはもちろん、労働力のグローバル化など多様性が求められる中で、多様な人材を活用するための最適な手段でもある。スムーズビズ推進期間をきっかけに誕生したTDMテレワーク実行委員会は、この後もテレワーク浸透に向けて活動していくという。賛同企業数は現在30社となり、来年の夏には50社程度に増える予定だ。

スムーズビズ推進者の声

株式会社Waris HR&PR 西原 沙季氏
株式会社Waris HR&PR
西原 沙季氏

関わった取組

テレワークの必要性と、より良いテレワークの活用法を発信

当社はオンラインで働く環境が整備されていますし、フレックスタイム制も導入するなど、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を実践しています。ですので「TDMテレワーク実行委員会」に参加するのは、とても自然な流れでした。今回、この取組に参加して子連れテレワークをトライアルしたことで、「子供が病気になったときや、夏休みなどに自宅で仕事ができることのメリットが大きい」という声が多く上がりました。ただ、子供がいる社員ばかりではないので、子連れテレワークを可能にする環境作りだけではなく、ベビーシッターのサービスと提携するなど、今後に向けた対策の検討を進めて、具体的な制度案を考えているところです。当社だけではこうした発想は生まれていませんでしたね。実行委員会に参加したからこそ得られたことだと感じています