株式会社MUGENUP
テレワークを活用したクリエイターの人材確保とスキルアップ
テレワークは、生産性向上や感染症の拡大防止に役立つだけでなく、優秀な働き手の確保にもつながります。今回は、イラストなどのクリエイティブ制作事業で、人材不足の解消を図るためにテレワークを導入・活用し、全国の優秀なクリエイターを採用・育成することで、自社の強みにつなげている株式会社MUGENUPの取組を紹介します。
広報担当の秋山さんに、テレワーク導入に至った背景、コロナ禍における社員の声を踏まえた取組などについて、オンラインのインタビューでお話をうかがいました。
〇MUGENUP社について
MUGENUPは、「創るを創る」を経営理念とし、2011年に創業した企業です。イラスト、3DCG、映像制作が主要事業で、例えば、最近話題になっているものだと、絵本『えんとつ町のプペル』のイラストも当社が制作しています。
他にも、クリエイティブ制作に特化したプロジェクト管理ツール「Save Point」の提供や、クリエイター向けの人材事業、メディア事業なども展開しています。また、弊社は、クリエイターが登録できるお仕事紹介サイト「MUGENUP STATION」を設けており、2021年2月現在4万人以上のクリエイターが登録しています。
〇テレワーク導入による全国からのクリエイター確保
新型コロナ感染症拡大を受け、多くの企業がテレワークを導入したと思いますが、弊社は感染症拡大前から、すでに社員約220名のうち、約4割近いメンバーがフルタイムの在宅勤務で仕事をしていました。テレワークを選択肢として設け、場所や時間にとらわれない働き方を提供することで全国の優秀な人材を確保するためです。
弊社が2011年に創業した時点で、イラストや3DCGを制作する企業としては後発でした。当時は、スマートフォン用のオンラインゲームが普及してきた時期で、クリエイターの需要が非常に高まる一方、優秀なクリエイターは既に他社に所属していたりお仕事を請け負っていたりするなど、その確保が困難でした。そのため、地方にいる優秀なクリエイターとお仕事ができないか、と考えました。クリエイティブに関わる出版社、広告代理店、大手ゲーム企業などは大都市に多く、必然的に仕事は大都市に集中し、地方にはあまりチャンスが多くありません。しかし、様々の事情により地方に在住する優秀なクリエイターは多くいらっしゃるので、彼らと一緒にお仕事をするために、2012年にテレワークを導入しました。さらに、テレワークが選択肢にあることで、出産や介護といった事情がある人がキャリアを継続しやすくなっています。 地方在住者の場合、採用の面接はリモートでも行っており、入社後、会社に1度も出勤したことがない人もいます。それでも仕事ができるのか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、後でお伝えするように、進行管理は適切にできていますし、仕事内容の評価についても、成果物で判断できますので、問題はありません。
〇働く機会の裾野拡大
実際にイラストや3DCGを制作するにあたっては、弊社のお仕事紹介サイト「MUGENUP STATION」に登録していただいたクリエイターの皆様と一緒に制作しています。線画や着色などの作業工程や、人物や背景などのジャンルを分解し、クリエイターの皆様が得意な分野・スキルにあわせて仕事をお願いすることで、効率とクオリティを両立しています。登録いただいているクリエイターは日本全国にいらっしゃるのはもちろん、海外に在住される方もいらっしゃいます。大都市で働いていたクリエイターが、結婚や配偶者の転勤に伴い、地方に移住すると、仕事がなくなりキャリアも途切れてしまうこともありましたが、当社の「MUGENUP STATION」に登録いただき、私どもと一緒にお仕事をすることでキャリアを継続していただけることもあります。また、育児や家族の介護、自身の体調などといったご事情にとらわれず、スキルを活用する機会を提供できていると思います。中には1日数時間でも仕事をすることで自分の居場所があるといってくださる方もおり、オンラインでの仕事を通じて、社会との接点を感じてくださっている面もあると思います。 弊社社員のみならず、登録クリエイターにお願いする作業の進行管理については、自社で開発した管理ツールを活用し、弊社のアートディレクターがクライアントのご要望に沿った制作物になるよう定期的にチェックしながら、必要に応じて修正を行うなど、しっかりと行っています。
〇スキルアップの機会提供
クリエイターの仕事の質の向上のためには、スキルアップの機会を提供することが必要ですが、地方のクリエイターにとっては、大都市と比べた時に、イラスト制作などの分野でのスキルアップの機会が少ないなどの課題があります。そこで、我々が運営するメディア「いちあっぷ」で絵の描き方やアイデアなどの情報発信をしたり、オンライン上でのクロッキー会を開催しています。また、さらなるスキルアップの機会提供に向け、オンラインの育成プログラム「いちあっぷゼミ」も開設し、広く活用いただいています。
〇コロナ禍での働き方の更なる変化
新型コロナ感染症拡大に伴い、昨年(2020年)2月から原則として全社員在宅勤務に切り替えました。コロナ禍前から、既に社員の約4割弱がテレワークを実施するなど、テレワーク活用の土壌があり、テレワークでの業務フローのノウハウも整っていたため、比較的切り替えるのもスムーズでした。1年経った現在(2021年2月)も、管理職やバックオフィス勤務の者など、出勤が必要な場合を除き、在宅勤務を継続していますし、コンテンツ制作の面でも支障は出ておりません。
全社員在宅勤務に関し、社員にアンケートをとってみたところ、93.6%が「在宅勤務にメリットを感じる」と回答しました。こうしたことも受け、5月には、ポスト・コロナを見据えて、2か所のオフィスのうち、1か所を解約することを決定しました。コロナ前のようにフルメンバーで出勤する働き方に戻ることはないという判断によるものです。
一方、先のアンケートでは、「在宅勤務にデメリットを感じる」と回答した社員が74.5%となり、テレワークにはメリット・デメリットの両面があることが判明しました。デメリットのうち、上位は「運動不足を感じる」、「コミュニケーション不足や不都合を感じる」、「オフィスよりも作業環境が劣る」でした。
これを受け、それぞれの課題への対応策として、①運動不足の解消に向けた、オンラインヨガ教室の開催、②コミュニケーションの活性化のための社内活動として、オンラインランチ会・オンライン飲み会の開催、周年パーティーのオンライン開催・ビンゴ大会、在宅料理部の設立、③作業環境向上のため、会社のPC機材の社員自宅への配送やモバイルWi-Fiの貸与、などの対策を行っています。
このようにコロナ禍でのテレワークの継続・推進に向けて、様々な取組を進めていますが、引き続き、課題解決に向けた取組を検討してきたいと思います。今後は特に、創造性の発揮・向上にもつながるコミュニケーションの確保に努めていきたいと思います。
〇最後に
今回は、クリエイターの不足という課題解決に向け、テレワークを活用した結果、多様な人材の確保・活用につながり、業務拡大につながっている事例を紹介しました。
感染症拡大防止に向け、多くの企業の皆様にテレワークを導入・活用していただいていますが、今後、テレワークの活用を経営戦略として位置づけ、人材獲得や生産性向上につなげていくことを検討していただく際に、参考になればと思います。