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インタビュー

平成29年度時差Biz推進賞-ワークスタイル部門受賞

平成29年度時差Biz推進賞

ワークスタイル部門受賞

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

受賞理由

2016年7月から、働く場所・時間を社員が自由に選べる新しい働き方「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入している。上司に申請すれば、理由を問わず、自宅やカフェ、図書館など会社以外の場所でも勤務できる。また、平日の6時~21時の間で自由に勤務時間と休憩時間を決められ、期間や日数の制限もない。導入後10カ月で社員の92%が一度でもWAAを実施。75%が「生産性が上がった」と感じている。社員がライフスタイルに合わせて働き方を選ぶことで、生産性や幸福度が上がり、残業時間が減っている。

ラックス、ダヴ、クリア、アックス、リプトンなどのブランドを世に送り出しているユニリーバ・ジャパン。同社は、「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」というビジョンを掲げ、働く人々の環境にも高い意識を持って取り組んでいる。2016年7月からは、すべての社員が自分らしくいきいきと働き、豊かな人生を送れるよう、新人事制度「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入し、会社全体で働き方改革を進めてきた。通勤時間を意識する時差BizはWAAのコンセプトとマッチしていて、相乗効果があったという。同社の成功のポイントや今後に向けた取組について、島田由香取締役人事総務本部長に話を伺った。

時差Bizに参加した目的

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長 島田 由香様
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
取締役人事総務本部長
島田 由香様

2016年7月より働く場所・時間を社員が自由に選べる新しい働き方「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入している同社にとって、時差Bizは時差出勤の意識をさらに高め、浸透させていく良いきっかけになったという。
「時差Bizを知ったとき、一企業ではなく東京都がこうした取組を行うのはとても素晴らしいことだと思いました。私たちの考え方と共通していると感じて、すぐにこちらから連絡して参加しました」(島田取締役)
何かを大きく変革するときには、制度や仕組みを変えるだけではなく、社員一人ひとりの意識改革が欠かせない。なぜ皆が同じ時間に通勤しなければならないのか。なぜ通勤ラッシュで疲れ果ててでもオフィスに行かなければならないのか。当たり前となっていることを疑い、根本的に変えていくことが重要となる。「働き方改革は生き方を決めること」という考えのもと、一人ひとりが生き方を考え、自分らしい働き方・生き方を選ぶことを大切にしている同社にとって、時差Bizは非常に親和性の高い取組だったという。

具体的な取組内容

パーソナルケア、ホームケア、リフレッシュメントのブランドを展開する同社
パーソナルケア、ホームケア、リフレッシュメントのブランドを展開する同社

時差Biz実施期間は、都営大江戸線新宿西口駅で7:00から8:00の間、「リプトンリモーネ」と「ベン&ジェリーズミニカップアイスクリーム」を通勤する人に無料配布したほか、東急電鉄が行った混雑緩和策とタイアップするなど、時差通勤がちょっと楽しみになるようなキャンペーンに注力した。そこには、自分らしくいきいきと働き、豊かな人生を送れるような新しい働き方を、自社から日本全体に広めていきたいという願いが息づいている。
もちろん自社内でも時差Bizを含む新しい働き方を積極的に推進。社員からは「通勤ラッシュが避けられるだけで、こんなに心も体も楽になるとは思っていなかった」「家族との時間が増えた」という声が多く聞かれるようになり、生産性も上がったという。
「生産性というと、残業時間やコストが減れば減るほど効率的だといった視点で見る方もいらっしゃると思いますが、それでは本当の意味での生産性は上がりません。社員が仕事もプライベートも含めた自分自身のライフそのものを考えていくことが大切なのです」(島田取締役)
自分はいつ、どこにいるときが一番集中できるのか?どんなときに疲れを感じ、どうすれば回復できるのか?何をしているときに楽しみを感じるのか?社員が自ら考え、自分自身が最高のパフォーマンスを発揮できる働き方を知る。そうすれば仕事のスピードや効率が上がり、生産性も必然にアップし、もちろんプライベートも充実していく。全社員がそうした働き方・生き方を選べるようにしていくことが同社の目指すところであり、時差Bizは社員の自己管理の意識づけのきっかけにもなったという。

時差Bizに期待すること

時差Biz参加後の社内アンケートでは、「新しい働き方により毎日が良くなった」「以前より生産性が上がった」という回答が約7割にも上った。「WAA」によって社員の意識改革は確実に進んでおり、時差Bizもその一端を担ったことが伺える。
「多くの社員が時間を意識し、通勤時間を変えるようになったと思います。時差Bizについても、できれば年1回ではなく、日本の四季ごとに季節感のあるイベントと交えて実施できたら素敵ですね」(島田取締役)
さらに、時差Bizに参加したことでもう一つ大きな成果があったという。それは、協議会や表彰式などに参加した企業同士の交流だ。今後は定期的な情報交換の場などのプラットフォーム作りを東京都に期待しているとのこと。例えば、受賞企業同士がお互いのオフィスをシェアオフィスのように使えるようにするなど、企業同士でコラボレーションできれば、もっと新しいことが生まれてくる可能性があるのではないか――同社からは時差Bizを切り口とした働き方改革に対する新しいアイデアがまだまだ生まれそうだ。
島田取締役は「時差Bizなどの取組は、とにかく継続することが重要です」と強調する。企業単位ではなく、経済の中心でもある東京都全体で進めていくことに大きな意味があると、時差Bizに対する期待は大きい。

WAA DE 地方創生

本社受付フロアには、企業理念と行動原則のキーワードが散りばめられている
本社受付フロアには、企業理念と行動原則のキーワードが散りばめられている

「WAA(Work from Anywhere and Any Time)」には、働く「場所」と「時間」を選べるという二つの側面があり、時間の概念が時差Bizと共通項を持っている。「WAAの『Anywhere』は、会社や自宅以外の場所、つまりシェアオフィスやカフェなどでも働けるということ。言わば“場差Biz”です」(島田取締役)。
今、その“場差Biz”の可能性をさらに広げる取組を考えている。それがWAAによる地方創生だ。これまでにも社員が年末年始のようなピーク時を避けて旅行先・帰省先に移動し、何日か仕事をしてから休暇に入るケースはあった。今後は社員が地方にいる間、その土地の人々や地域活性の役に立ちそうなことを企画し、実現していく仕組みも考えている。そうしたことができれば、社員は新しい経験ができ、同社にも社会に貢献する新しいアイデアがもたらされ、地方の活性化にも貢献できる。働く人も、社会も幸せであるように。同社はそんな大きな視点で働き方改革に取り組んでいる。