平成30年度時差Biz推進賞
ワークスタイル部門受賞
株式会社パソナテック
受賞理由
平成29年よりテレワーク・デイと併せて時差Bizを実施後、3~4カ月ごとに継続的に同様の取組を実践。今年は時差Biz、テレワーク・デイズの実施期間を含む7・8月の2カ月間を「テレワーク推奨月間」と設定し、生産性の向上や柔軟な働き方の実現を目指す取組を行った。一方で、昨年の時差Bizで従業員の満足度が高かった始業時間前の時差出勤を可能にするべく、今年の7月より就業規則を改定。今後は、これまでに得た従業員の声を踏まえ、より柔軟な働き方を選択できるようにすること、社員一人ひとりが時間の有効活用を考える、働きがいのある企業となることを目指す。
「働きやすい職場づくり」のために、段階を追って確実に各種制度を整えてきたパソナテック。当初、これら制度や施策の利用対象は一部の従業員のみにとどまっていたが、段階的に利用可能者の幅を広げていった。それに加え、「働き方改革」という大きな枠組みで社内の体制を整えるよう尽力もしているという。そんなパソナテックが、「今」新しく何に挑戦しようとしているのか。執行役員兼 人事部長の末久様と、人事部 人事企画グループ グループ長の山本様からお話を伺った。
時差Bizに参加した目的
平成12年にスタートした、シフト勤務(時差出勤)、モバイルワークの導入以降、「働きやすい職場づくり」のためにさまざまな施策・活動を実践してきたパソナテック。その取組をさらに推し進めるため、同社は昨年から時差Bizにも積極参加している。
実は、昨年の時差Biz期間以前においても、社内では時差出勤制度についてすでに充分に周知されていた。それでも社員の半数程度は制度を未使用のままだったという。このような状況の中、単に自社の制度を活用するよう勧めるだけではあまり効力を持たない。そこで時差Biz参加を通して、社会全体が時差出勤を推進する方向にあると訴え、その意義を周知することにより制度利用者の増加を狙ったのである。
また、今年のパソナテックのテレワーク推奨月間は時差Biz期間を含め2カ月と設定されたため、昨年の時差Biz期間中(平成29年度は2週間実施)に夏季休暇を取るなどの理由で活動に不参加だった社員にも、制度利用のチャンスが生まれるというメリットがあった。全ての従業員が平等に時差出勤を体験し、ライフ・ワーク・バランスについて考える機会を持てるよう、同社なりの工夫がなされていたのだ。
具体的な取組内容
当初パソナテックの時差出勤は、正社員を対象に週一回以上、9:00の始業(定時)を13:00まで1時間ずつ遅らせることが可能という制度だった。しかし、前年の時差Bizで試験的に8:00からの始業も可としたところ、事後アンケートで好意的な意見が多く寄せられたので、就業規則も改定した。さらに今年のテレワーク推奨月間では、期間限定ながら7:00からの始業も可能とし、なおかつ制度利用対象者の幅も広げることとした。
「昨年の時差Bizの際、多く挙がったのは『朝早い時間の方が業務に集中できる』との声でした。そこで7時始業にチャレンジしたのです。期間や対象、選択可能な出勤時間の幅を広げたことで、これまで制度未使用だった社員の利用が増え、今後時差出勤をやってみたいとの意見も9割を占めました」(山本グループ長)
「出勤時間に幅を設けたことで、個人のライフスタイルに合わせて臨機応変な出勤が可能となりました。なかでも定時の前後両方に、時間の幅をもたせたことが大きなポイントになったのではと考えています」(末久執行役員)
この場合、気になるのは社員間のコミュニケーションだが、パソナテックは従来活用していた音声通話ソフトのほか、ビジネス向けコミュニケーションツールも導入。スムーズな連絡が可能な環境づくりに配慮して、制度の運用を進めていった。
時差Bizに期待すること
「時差出勤ほか、各種制度を取り入れている企業は多いと思います。しかし、自社社員にそれが適応されても、パートナー企業に常駐している社員等については、自社のルールはそのまま適応されません。これは、当社のような人材サービス業を営む企業にとって、大きな問題です。その点について、東京都などが中心となって改善がなされていくと、時差Bizのムーブメントはさらに飛躍するのではないでしょうか」(末久執行役員)
「これからは、自社外で勤務する社員も自分で働き方を選択できる制度づくりができるようになってほしい。その実現に向け東京都に動いてもらう、それが今後の時差Bizに対する期待だと言えます」(山本グループ長)
今後、時差Bizを通じて、より多様な働き方を受け入れる企業が増えることによって、「誰もがそれぞれのライフスタイルにあわせた働き方で、豊かな人生設計を描ける社会」の実現に近づくのではないかと、パソナテックでは考えている。
「むろん私たちも、より良い働き方に向けた取組は継続していきます。そのうえでライフ・ワーク・バランスより一歩進んだ、ライフ・ワーク・シナジー(プライベートと仕事のバランスを取るだけでなく、そこから相乗効果を引き出していく)の構築に尽力していきたいですね」(末久執行役員)
情報と制度を両輪として介護に向き合う
今後の社会について考えたとき、「介護」の問題は決して小さいものではない。労働人口が減っていく中、介護を理由に退職する人材は、できればなくしていきたいというのが世の中の流れだ。パソナグループはグループ全体でこの問題に向き合い、その活動を進めている。
パソナテックにおいては、介護休業制度の存在をアピールするだけでなく、介護保険制度の有効な利用法などについて周知。介護を理由として仕事を離れる期間を可能な限り短くし、社員のキャリアを継続できるよう努めている。また、介護保険制度等の活用だけでは不足する場合に向け、時差出勤やテレワークなどといった自社制度もうまく組み合わせて活用することを勧めているという。
「労働力不足となるこれからの日本を、どのようにして救っていくか。それは社会の課題であり、私たちの課題でもあります。その際、必要となるのは“情報発信”と“制度を使いやすい環境”という2つの武器。それを当社社員に提供し、介護があっても自身の将来を描いていける環境づくりに努めていきたいと考えています」(末久執行役員)