株式会社ヴァル研究所 様
社員自ら「働き方改革」を推進。満足度を高めるさまざまな取組
企業では現在、従業員一人ひとりが主体性を持ち、創造的に働くことで付加価値やイノベーションの創出につなげる「働き方改革」が進められています。経路検索サービスの「駅すぱあと」で知られている株式会社ヴァル研究所では、創業時から社員の「やってみたい」気持ちや、意欲を起点として商品開発などの事業を展開してきました。管理部 総務チームの小泉さんと渡辺さんに、同社の働き方について伺いました。

経路検索ソフトの開発からMaaSへ事業を拡大
渡辺 当社は「進化したコンピュータ言語を開発する」という志のもと、1976年に設立され、来年(2026年)で50周年を迎えます。多くの方にご利用いただいている経路検索サービス「駅すぱあと」は1988年に発売されました。当時の社員が、こんなものがあったら面白いのではないかと思ったことが発端となり、日本で最初の経路検索サービスとして開発されました。
小泉 「駅すぱあと」は電車やバス、飛行機、船舶など、全国の公共交通機関に対応しており、リアルタイムに運行情報を把握して遅延情報を表示するなど機能向上が図られています。一方、MaaSと呼ばれる新しい移動の概念が海外からやってきて、日本でもカーシェアやシェアサイクルといった新しい交通サービスが全国的に広がっています。当社も「駅すぱあと」で培ったノウハウを生かし、「複合経路検索」を軸とした新しいサービスを事業化し、交通事業者や自治体が進める交通DXを支援しています。
渡辺 本社は、高円寺駅から徒歩5分の場所にあり、他に大阪や福岡にも拠点を設けています。約170名の社員のほとんどは東京本社に所属しており、そのうち8~9割が在宅勤務です。技術部門に人材が多く、全社員の6割ほど占めています。残り3割が営業・マーケティング部門や私たち管理部門で構成されています。

「テレワーク推進」をきっかけに在宅勤務をトライアル
小泉 当社はエンジニアをはじめ、社員の労働環境の改善などに努めてきました。例えばフレックスタイム制は15年以上前から導入していますが、2020年7月に10時~15時だったコアタイムを11時~15時に変更しました。これは、コロナ禍の緊急事態宣言中にも呼びかけのあった、平日朝のラッシュ時を避ける「オフピーク通勤」に対応するためでした。
渡辺 在宅勤務・リモートワークの実施についても、当時の東京オリンピック・パラリンピック期間中のスムーズビズの取組の一つである「テレワーク推進」がきっかけです。期間中、在宅勤務が推奨されましたが、当社としても環境や制度整備に取り組みつつ、社内の各チームが自主的にトライアルでやってみようということになり、それがそのまま定着しました。
小泉 当時、エンジニアの社員がリモートワークに活用できるいろんなツールを試していて、良かったものが全社で広まっていく流れができていたと思います。リモートワークを実施した社員の声としては、自宅での育児・介護にメリットを感じるという社員だけでなく、ワーケーションを実験的に行う社員もいました。私自身も企画の仕事を、発想を広げるために普段と違う環境でやってみていました。
渡辺 会社としてもリモートワーク支援の目的で、在宅勤務の環境整備費用として一人10万円を支給したり、光熱費・通信費として5,000円を毎月支給しています。エンジニアの社員からは、自分の気に入った作業環境を自宅に作れると好評です。なお、通勤に係る費用は定期券でなく、出社回数に応じて申請する方法を採っています。

社員自ら便利なツールを探して提案、社内浸透へ
小泉 社内には3~10名ほどのメンバーで構成されたチームが多数あり、勤怠管理はWeb上で打刻できるものを全社で利用していますが、勤務開始・終了の連絡はチームによって違ってきます。例えば、出勤・退勤のときに、全社のチャットツールの中にあるチームのチャンネルに報告すれば良いとするところもあれば、その日に実施する作業を定型文で毎朝出すことにしているチームもあります。またそういった報告はせず、1日1回実施されるチーム会議に顔を出すというルールを作っているチームもあります。各チームリーダー、マネージャーの裁量が大きいのが特徴です。
渡辺 リモートワークだとコミュニケーションが希薄になるのではという懸念については、社員からさまざまなコミュニケーションツールの提案があり、社内的に利用が進んでいて、特に大きな問題は生じていません。
小泉 ビジネス向けチャットツールを活用していますが、絵文字やリアクション機能を適度に活用して、テキストだけでは冷たくなる印象を和らげるなどの工夫をしています。他にもバーチャルオフィスツールでは、誰かのデスクに立ち寄って雑談したり、その場ですぐにアイデアを共有したりしています。四半期に一度行われているエンジニア社員のリアルイベントでは、チームを超えた情報交換の機会があり、リモートワークが標準の環境下でも適度な情報交換がなされています。
オンラインコミュニケーションの弱点を克服
小泉 リモートワークは人事の観点から言うと、もしかしたら帰属意識の低下が起きているのではないかという不安感があります。普段の仕事で大きな問題にはなりませんが、長期的な視点で見たときに、自分の仕事やチームの範囲の中でしかコミュニケーションを取っていない人がいて、何か問題が起こったときに、チーム以外の誰に聞けば回答をもらえるのかがわからないといった声が出てくるかもしれません。現状では年に1回の全社会議や懇親会、前述したエンジニアのリアルイベントなどを行っていますが、入社後に“横のつながり”をもっと作れる仕組みや連携する機会を提供できるようにしていく必要があると考えています。

社員の能力の最大化。「やってみる」ことから始める
小泉 当社には、エンジニアたちが自ら作業環境や働き方について意見を出し合い、改善して業務効率を上げていくボトムアップ型の組織風土が定着しています。フレックスタイム制やリモートワークといった柔軟な働き方を導入する理由は、働きやすい環境を提供することで、社員の能力を最大限に引き出すためです。こうした人材観やカルチャーは、当社の独自性ある商品を創り出す原動力になっていると考えます。
渡辺 当社の行動指針に、(失敗してもいいから)「まず、やってみる」という考えがあります。リモートワークなど新しい制度を取り入れる際には不安を感じることもありますが、失敗したら出社に戻せばよい、週3日の出社をやってみたらよいと柔軟に考えたからこそ、現状、うまく運用できているのだと思います。エンジニアの採用の競争率が高くなる中、優秀な人材を確保するためにも、これからも理想とする働き方を追求していきたいと思っています。
※詳しい業務内容については、ホームページをご覧ください。