株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル 様
―社員一人ひとりが自律し、個々の力を最大化させる柔軟な環境づくり―
訪日外国人旅行者数の劇的な回復と増加に伴い、観光・インバウンド業界は今、かつてない活況を呈しています。多様化するニーズに応え、高いサービス品質を維持するためには、働く側の柔軟な体制づくりが不可欠です。
今回は、訪日旅行専門のDMC(Destination Management Company)として業界を牽引する株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル(以下、JTBGMT)に、在宅勤務やフレックス制度、変形労働時間制をいかに「現場のリアル」に即して運用しているか、お話を伺いました。

110年を超える歴史と、グローバルビジネスが求める「柔軟性」の真意
1912年、海外からのお客様を日本へお迎えするという役割から始まったJTBの歴史。そのミッションを純粋に受け継ぎ、訪日旅行に特化して分社化したのがJTBGMTです。現在、同社はレジャー事業と法人事業の2本柱で展開していますが、その業務体制にはインバウンドならではの特徴があります。
「私たちの顧客は世界中の旅行会社や企業です。当然、そこには時差が存在します。かつては電話やFAXが主役でしたが、現在はウェブ会議が主流です。相手の時間に合わせて、自宅から早朝や深夜に会議へ参加することも日常的です。こうした業務特性があるからこそ、場所や時間に縛られない働き方は、単なる福利厚生ではなく、ビジネスを円滑に進めるための必須条件なのです」(南氏)

「15分刻みのシフト」と「手当」で支える自律的な働き方
同社の柔軟な働き方を支える大きな柱が、弾力的な変形労働時間制とフレックス勤務です。全社員が利用できる変形労働時間制は、以前は限られた勤務シフトのみでしたが、現在は朝5時から夜10時までの間で、15分刻みで勤務時間を設定できる他、長さも3時間~12時間の間で変更できるようになっています。また、役職者と育児や介護を抱えた社員が利用できるフレックス勤務は、社員本人が勤務時間を自主的に管理し、業務を計画的かつ合理的に遂行することにより、業務効率の向上やライフワークバランスの実現が可能な制度となっています。
具体的な運用面での工夫について、事務局として制度を支える深瀬氏はこう補足します。
「制度を形骸化させないためには、現場や利用者の状況に合わせた調整が不可欠です。例えば、私が所属する総務人事チームでは代表電話や社員からの問い合わせの対応があるため、メンバー間で当番を決めて『最低2人は必ず出社する』という独自のルールを設けて運用しています。一方で、月に4回以上在宅勤務をした社員に対し、テレワーク勤務手当を支給しています。」(深瀬氏)

この手当は、在宅勤務を活用することで自律的な働き方を推進し、生産性向上及び社員のエンゲージメント向上を実現したいという思いから導入されたものです。
「会社としての姿勢を示すことが大切だと考えています。ハード面でも、自宅で効率よく働けるよう、ノートPCに加えてポータブルモニターを貸与するなどの支援を行っています。出社と在宅の切り分けは社員の自律性に任せており、基本的には各部署の状況に応じた柔軟な運用が定着しています」(南氏)
特に育児中の社員から高い支持を得ているといいます。
「夕方にお迎えに行き、家事や寝かしつけを終えた後に、残った仕事を自宅で片付ける。こうした調整ができることで、『自分の責任で仕事を最後までやり遂げられる』という満足感と生産性の向上に繋がっているという声も届いています」(深瀬氏)
アナログからの脱却と、コロナ禍で見えた「組織の絆」
今でこそデジタル活用が進む同社ですが、かつては「紙の手配書」が溢れるアナログな職場でした。 「20年前は、駅で切符を買うときのような紙の書類ばかりでした。転機の一つはコロナ禍でした。出社が困難になる中、急ピッチでシステムを整え、FAXもデータ化して自宅で確認できるようにしました。現在では、一部を除き、ほぼ全ての業務がリモートでも完結できるように環境が整っています」(南氏)
また、観光需要が消失したコロナ禍では、多くの社員がJTBグループ内外の企業等への出向を余儀なくされました。しかし、この経験が組織に強さをもたらしました。
「インバウンドが回復し、戻ってきた社員たちは、驚くほどモチベーション高く活躍してくれています。異なる環境を経験したことで自社の価値を再認識し、それが今の旺盛な需要を支える現場の力になっています」(南氏)
社長自らが全社員と「1on1」を行う、驚きのコミュニケーション術
組織規模が大きく、在宅勤務が混在する中で、同社が最も力を入れているのがコミュニケーションの質の向上です。
「メールやチャット(Teams)だけでは、どうしても直接的な会話が減り、認識の齟齬が生まれる懸念があります。そこはやはり直接会話をする機会が非常に大事だと考えています。実は社長自らが、京都を含む全拠点の社員一人ひとりと1on1を実施しています。社長に直接声が届く環境があることで、社員も安心して業務に励むことができます。また、社長がそこまでやるなら自分たちもやらなければ、と中間管理職にも良い循環が生まれています」(南氏)
さらに深瀬氏は、同社らしいユニークなエピソードを付け加えます。
「スポーツイベント開催時などには、変形シフトやフレックス勤務を活用して出勤時間を後ろ倒しすることで、朝8時からオフィスで試合観戦をしてから業務に入ることもあります。制度をうまく活用することで、社員が楽しみを持って働ける環境を大切にしています。こうした心の余裕が、お客様へのおもてなしにも繋がると考えています」(深瀬氏)
今後の展望:グローバルNo.1 DMCとして、多様性を力に変える
JTBグループでは、2035年にグローバル事業の比率を50%まで引き上げる目標を掲げています。その中核を担うJTBGMTにとって、働き方の改革はさらなる成長への鍵となります。
「今後はグループ内の海外拠点との『交換留学』のような人財交流も含め、よりグローバルな視点で職場環境をアップデートしていくつもりです」と南氏は展望を語ります。
インタビューの締めくくりとして、南氏は次のように決意を述べました。
「さらなるグローバル化を見据える中で、多様なバックグラウンドを持つ人財が最大限に力を発揮できる土壌を築くことが、私たちの持続的な成長には不可欠です。制度の導入をゴールとするのではなく、社員一人ひとりが自律的に成長し続けられる環境を整えることで、インバウンド業界の発展に貢献してまいります」(南氏)

