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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

日本電気株式会社(NEC)

(2021年10月18日インタビュー実施)

 2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)に向け、日常業務を出社せずに行うことができるよう、テレワークのトライアルをテレワーク・デイズ等に合わせ、2017年から実施してきました。

人の流れに関する取組――――――――

■会社全体でトライアルを実施し、課題を洗い出して取組を推進

 2018年の「テレワーク・デイズ」では、2万6千人がトライアルに参加しましたが、一斉に社外からアクセスしたところ、一部で「つながらない」という問題が生じました。このときは、社員はしょうがなく午後からはテレワークではなくオフィスに出社するなどして対応しました。

 2019年夏には、全社員を対象とした一週間連続のテレワークを実施しました。一日のみのテレワークだと、その日を乗り切ることができれば良いのですが、「一週間出社しない」という状況下での会議やチーム内のコミュニケーション、電話の取次ぎ、押印等の日常業務について、話し合いながらトライアルを行いました。

 2020年2月には、終日誰も出社せず、押印や電話の取次ぎの問題等も踏まえて業務を継続させるというトライアルを、全社員を対象に実施しました。その際は、安否確認の訓練等も併せて実施しました。なお、この取組みは、コロナ禍になる前から実施予定でした。

 2019~2020年のトライアルでは、基本的には大きなトラブルもなく業務を継続することができました。一部で見つかった小さな不具合にも対応しながら東京2020大会を迎える予定でしたが、新型コロナウイルスの流行により緊急事態宣言が発出されたことで、トライアルの結果を活かしながら「緊急事態宣言下の働き方」へと移行していきました。また、これがそのまま東京2020大会の対策に繋がりました。

■早い段階で取引先に説明し、理解を促進

 東京2020大会期間中のテレワーク率は非常に高く、国内社員の7割程度(約4万人)がテレワークを実施しました。

 2019年夏や2020年2月のトライアル当時は世の中では出社することが当たり前でしたので、社内の事務業務や社内会議はリモートで実施しても、お客様との会議が必要であれば適宜お客様を訪問して対応していました。しかし同時に、当社が東京2020大会に向けてテレワークを推進していることを、お客様に積極的にご説明してご理解を頂くよう取り組んできました。

 当時は、テレワークに対する理解が広まっていなかったため、お客様のところに常駐して業務をしていたSE等の職種では、テレワークを行うことは難しかったのですが、コロナ禍によりお客様からの要請が一気に増え、今ではテレワークが可能な職種も大きく拡大しました。

 当社は今の時代に合った働き方改革の一環として、働く場所を自律的に選択できるテレワークの活用を推進しており、このような取り組みを通じて、当社の働き方に関心を示してくださるお客様も多く、社会の働き方改革に少しでもお役に立てれば嬉しいです。

■会社として全社共通のシステム基盤整備に投資

 当社は従前から積極的にITを活用する取組を進めています。「デジタルワークプレイス」と呼ばれるクラウド型のMicrosoft365やZoom、Box等のシステムを2019年度から全社で一斉導入しており、これらを活用したテレワークでのコミュニケーションのあり方等もトライ&エラーを繰り返しながら検討してきました。このため、2021年には多くの社員が「デジタルワークプレイス」を使いこなせるようになり、東京2020大会を迎えることができました。

 社内のシステムを「デジタルワークプレイス」として整備していくことは、経営方針としてトップダウンで決定し、全社で共通の基盤を整備するための投資が行われました。現在は、これを全社で積極的に活用していくよう推進しています。

 契約書等の書類の電子化についても、全社的に2020年度前半ぐらいから導入しています。お客様の環境にもよりますが、「DocuSign」等の電子ツールを「デジタルワークプレイス」の一つのメニューとして利用しています。

 また、東京2020大会期間中はリモートで大会の視聴や応援を推進していました。例えば、当社がスポンサーをしている選手の活躍の結果を、随時オンラインで社内に発信し、社員はオンライン上でも東京2020大会の盛り上がりを大いに体感していました。

物の流れに関する取組――――――――

 2019年度のチャレンジウィーク時に、物流のトライアルを実施しました。

 交通規制等については、東京2020大会の開催状況や開催規模(観客の有無)等を踏まえながら対策を講じる必要があるため、事前に情報を収集し、2021年6月頃よりNECグループ内のWebサイトにTDM特設サイトを開設、交通規制、遅延リスク等の情報周知を行いました。

 東京都の大会輸送影響度マップは、自社への影響特定に活用させて頂きました。

 TDM特設サイト内では、日ごとにTDM関連情報や想定される物流への影響を示し、NECグループに向けて注意喚起を行うことで、お客様や物流取引先に対して影響リスクの共有を行いました。

■取引先等との連携による事前のリスク検討と、TDM特設サイトでの情報共有

 東京2020大会の開催方式の決定が直前となったため、事前の周知が難しい状況にありました。このため、リスク回避策として「首都圏配送への時間指定の自粛」を依頼しました。

 遅延リスクへの対策として、通常の配送日数に対して数日の猶予を設け手配・指示を行うとともに、お客様や物流取引先からのエスカレーションをスムーズに対応できるように準備しました。

 お客様や物流取引先から問合せがあった場合は、回答も含め、どのようなリスクが起こるか対応方針を示すとともに、TDM特設サイトにも情報共有として対応方針を示しました。

■事前の各種対策を検討・準備

 東京2020大会を当初の規模で実施した場合は、ルート変更やお客様の近傍に倉庫を構えることも検討しましたが、海外からのお客様が来日されないことを受け、既存ルートの時間に余裕を持たせることで変更せずに対応しました。

東京2020大会を振り返って――――――――

 物流取引先等には、事前にエスカレーション対応等の仕組みを周知していましたが、「届かなかった」や「遅れた」という問題は生じませんでした。

 東京2020大会が無観客であったため、影響は最小限となりましたが、有観客であれば、大幅な変更を伴う対応が必要であったと考えます。

今後について――――――――

 人の流れに関する取組みについて、今後も、テレワークと出社のハイブリッドを全社で進めていく予定です。その時の仕事に合わせて、ベストなパフォーマンスを発揮できる働き方を、個人やチームで選択できるように推進するとともに、オフィスの位置付けも、単なるフリーアドレスとするのではなく、コミュニケーション・ハブやイノベーション・ハブとして、集まる意義や目的に合わせた空間の整備を進めています。

 各種制度についても、社員が自律的に柔軟に働き方をデザインできるように、働く時間や場所、キャリアの選択肢をさらに増やしていく予定です。

 このようにNECグループでは東京2020大会に向けた取り組みをきっかけに、働き方改革を進めてきましたが、これからは、「Smart Work2.0」としてさらに取り組みを進化させて推進していきます。

 物の流れについては、テレワーク時の不在・再配送への対応として、いつでも連絡が取れる連絡先を記載して頂くようお取引先様へ周知しています。また、物流業界としても配送の時間指定を緩和する機運があることから、NECグループ内でも時間指定の緩和を周知しています。

 今回の取組みにより、構築された「国際イベントにおける影響リスク対応体制スキーム」を今後も活用する予定でいます。