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インタビュー

スムーズビズ推進期間結果公表イベント

令和元年度受賞企業インタビュー

スムーズビズ推進大賞 大賞

株式会社伝三郎商会
<情報通信業>

受賞理由

モノの流れに関する取組という観点で、効率的な物流事業の支援アプリケーションを開発した。TDM(Travel Demand Management/交通需要マネジメント)およびTSM(Traffic System Management/交通システムマネジメント)による交通量削減に貢献する配送マッチングアプリは、貨物と配送可能な車両を直接結び、配送車両台数の削減や交通混雑緩和に寄与することを目指す新規性のある仕組みである。

  • ●モノの流れに関する取組:マッチングアプリを利用したTDMとTSMに寄与する仕組み

取組の詳細についてはこちら

現在、東京都では、交通需要マネジメント(TDM)として、自動車の効率的利用や公共交通への利用転換などによる道路交通の混雑緩和、鉄道などの公共交通も含めた交通需要調整をする様々な取組を進めている。そんな中、モノの流れに関する取組として注目されるのが、伝三郎商会の配送マッチングアプリだ。同社は2020TDM推進プロジェクトの重点取組地区を配送先とする輸送負担の軽減化に着目し、アプリを使った新規性のある仕組みを紹介する。アプリは、4年以上の開発期間を得て2019年6月に完成し、その後、実証実験を重ねてきたという。東京2020大会時の交通混雑緩和への貢献を目指して、アプリの普及を続ける同社代表取締役 藤田様、東京事務所の清水様に話を伺った。

スムーズビズに参加した理由

代表取締役 藤田 武利 様
代表取締役
藤田 武利 様

「自社で開発を進めていたアプリケーションなのですが、このシステムが少しでも交通混雑緩和に貢献し、東京2020大会に役立てばという思いでスムーズビズに参加しました」と語る藤田代表。本マッチングアプリは、まず、幹事となる配送会社が配送してほしい貨物の情報を登録。メンバーとなる配送会社が配送可能な車両情報をアプリ上に登録しておくと、配送可能な貨物が表示され、メンバーが受託意思を明示すると、幹事配送会社が配送者を決定できるというシンプルな仕組みだ。ポイントとなるのは、想定される公的機関(自治体など)が、東京2020大会期間中、本アプリを無償で借り受け、幹事配送会社の公募と選定を行うという運用の公平性を求めたフローだ。また、全ての参加者には『3か条』と呼ばれる規則を順守することが求められている。そこには、目的の理解とともに、安心公平、誠実義務に関する諸条件が記されている。アプリの機能を重視するだけでなく、参加者にフェアを求めた運用を目指している。ちなみに社名の由来は、藤田代表の祖先である明治時代の実業家、藤田伝三郎とのこと。

「藤田伝三郎は、物流とは関係はありませんでしたが、鉱山開発など国家的なプロジェクトに参加することで社会に貢献した人物です」(藤田代表)

荷主と配送会社を直接結び付ることで、あらゆる無駄を省き、物流のムリ・ムラ・ムダをなくしたいという大きなビジョンの源は、藤田伝三郎の志に由来するのだろう

取組に当たり苦労したこと

東京事務所 清水 宏美 様
東京事務所
清水 宏美 様

実証実験におけるもっとも大きな苦労は、アプリケーションの開発そのものというより、業界の古い商慣習だったというのは、東京事務所担当の清水様。「本アプリは荷主と配送会社の関係にも公平性を求めるものです。荷主優位の商慣習がなんといっても高いハードルでした」

また、特に中小の配送会社においては、伝票を始めとした紙ベースのやりとりが多く、配車担当が電話やファクスで受発注をするなど、アプリケーションの導入に理解を得にくい環境もあった。そこで、アプリケーション自体を直感的に使えるようなシンプルなものにした。参加した配送会社からは「実際に使用してみたら、とても簡単だった」、「電話が減って業務が効率化した」、「これまでベテランの勘や経験に頼ってきた配車業務が見える化できそう」というような声が聞こえるようになってきた。更に、「荷主さんに『午前の時間指定を軽減してほしい』と伝えたところ、好意的に時間帯を変えてもらえた」と配送会社や荷主の意識が少しずつ変わるようになった事例もあるという。業務提携先との実証実験では、配送の午前指定によるムラを平準化して前後の時間帯に散らすことで、トラック台数の削減率22.2%を達成した。

「この結果をみると、東京2020大会時の配送日時の変更と配送先別にまとめた貨物の配送の実施においても、同程度の効果が期待できるのではないかと考えています」(清水様)

東京2020年大会のレガシーを目指す取組

藤田代表
藤田代表

本マッチングアプリには、数時間単位の車両の空き時間や、積載率の低い荷台の空きスペースなど『狭域エリア内の配送に強い』という特徴もある。アプリ上に時間やエリアの情報を登録することで、急な配送依頼や荷物の少ないエリアへの配送など、自車での配送が難しい貨物に対して、集荷先に向かうまでや、配送先からの帰り便の空きなど配送可能な車両を結び付けることができる。首都圏という狭域エリアの配送で生じる小さな隙間の有効活用を、ぜひ東京2020大会時に実感してほしいという。実証実験における配送のムラの平準化は、業界内でも注目を集めたが、まだまだPRが足りないという藤田代表には、課題を抱えながらも古い慣習が残る物流業界への思いがある。

「もし荷主様に、『貴社のやり方には無駄がありますよ』と指摘すれば、快く思う人はいないでしょう。しかし、本マッチングアプリは、その無駄がはっきりと見えてくる仕組みです。導入していただくことで、自らを客観的にみられるようになっているのです。東京2020大会で活用していただくことが、何よりのPRになりますし、ひいては物流業界の働き方改革にもつながると思っています。今回、スムーズビズ推進大賞推進賞をいただいたことを励みに、本アプリの普及啓発に一層力を入れていきます」(藤田代表)

スムーズビズ推進者の声

東京事務 清水 宏美 様
東京事務
清水 宏美 様

関わった取組

モノの流れの改善に寄与するマッチングアプリの推進

前職も物流会社で事業企画をしており、現在は本アプリの企画・広報を担当しています。シ ンプルな機能がモットーのアプリですが、蓄積された情報を『共有財』として開示することで様々な付加価値が生まれました。例えば、荷主・配送会社の取引実績だけでなく、これまでの取引評価を可視化しました。これにより、初めての相手でも安心して取引することができます。また、配送依頼や、車両の空き情報を可視化することで、荷主と配送会社が互いにニーズを把握し、歩み寄ることを促しています。従来のような1対1の取引ではなく、相互に選択肢が広がる分、選ばれるための努力が必要になります。荷主側には時間指定の緩和や、荷待ち時間の軽減といった努力が求められますし、配送会社側には荷主のニーズにあわせて車両の空き時間を調整できるよう、配送の効率化や平準化、業務フローの見直しといった努力が求められます。この努力により、互いにマッチングのチャンスが広がるだけでなく、物流全体が効率化することを期待しています。