令和元年度受賞企業インタビュー
スムーズビズ推進大賞 大賞
シックス・アパート株式会社
<情報通信業>
受賞理由
独自のテレワーク制度「SAWS(Six Apart Working Style)」を導入し、全従業員が必要な時だけオフィスに出社し、普段の勤務場所は業務に支障のない範囲で自由とするワークスタイルの取組を通年で実践。この制度を活用して地方に移住した社員や、故郷に帰省した際にワーケーションをする社員も多い。そうしたテレワークのノウハウを自社だけでなく、地方自治体へ提供するとともに、地方自治体と連携することで地方の活性化にも寄与している。
- ●人の流れに関する取組:社員のQOL向上を目的に、社員30人全員が必要な時のみ出社する ワークスタイルを実施
- ●モノの流れに関する取組:宅配便配達日の管理、紙の削減、少額経費精算支払いをAmazonギフト券による 支給などさまざまな工夫で雑事のために出社する必要を無くす取り組みを実施
- ●普及啓発に関する取組:・都内近郊23社内にも声をかけ「TDMテレワーク」グループとして
グループ内外でのノウハウ共有
・他社、自治体、メディアなどからのテレワーク関連相談への積極的な情報提供
シックス・アパートは、2003年に外資系企業の日本法人としてスタートし、ウェブサイトの構築・管理のためのCMSプラットフォーム「Movable Type」をはじめとした製品やサービス、コンサルテーションを提供してきた。そして、2016年6月末にEBO(従業員買収)によって親会社から独立。組織がスリムになったのを機に、全社員の合意のもと「SAWS」を制度化。「毎日オフィスに来る」必要を無くし、働く時間、場所ともに自分の裁量で管理できるというテレワーク環境を整え、通年で導入・実践している。そんな先進的なテレワークの取組についてお話を伺った。
スムーズビズに参加した理由
2016年の7月から、必要なとき以外は出社不要の究極のテレワーク制度といえる「SAWS」を導入している同社。昨年の時差Bizにも参画し、見事に「ワークスタイル部門」を受賞した。そんな同社にとって、スムーズビズへの参画は、ごく自然の流れであった。「私たちの取組をより多くの方々の知っていただく良い機会ですし、地方自治体との連携強化にも繋がると考えました」(古賀代表)
同社の必要な時以外出社不要の働き方によって、社員が都内から地方に転居したり、家族で帰省し実家で仕事をしたりしている。また、地方に住む方を社員として迎え入れるなど、地方活性化にも繋がっている。実際にこれらの取組を積極的に自社ウェブサイトや、メディアからのインタビューを通して発信してきたことで、青森県や秋田県大館市、神奈川県鎌倉市などの市町村から声がかかり、テレワークを活用した地方で地域活性のための取組を実施している。「お陰さまで、時差Bizへの参画、受賞の影響も大きく、地方自治体からの問い合わせも増えています」(古賀代表)
スムーズビズへの参画を通して、同社の取組のさらなる拡がりが期待される。
取組に当たり苦労したこと
「SAWS」を従来通りに実践する他、今年は東京2020大会を想定して、初めてお盆時期の1週間オフィスを完全に閉鎖した。
「社員にはテレワーク文化が根付いていますので問題ないですが、配達物はコントロールが必要です。大会期間中の人やモノの流れを少しでも抑制することが目的に、新聞や郵便をはじめ、宅配事業者と連携しました」(古賀代表)
テスト実施したことで、来年の大会期間中ずっと閉鎖するのは難しいが、一定期間の完全閉鎖は可能だという実感を得たという。また、今回の経験はBCP(災害時事業継続)にも活かされるという。今年は都心や首都圏にも台風被害が多く、交通機関の運行にも影響が 出た。そうした際に事前にオフィスを閉鎖するなど対策をとることができる。同社は社員の住居が東京都内だけでなく、地方にも分散しており、被災した場合でも、誰かがオンラインで仕事の拠点となれる仕組みを確立している。また、本社が被災し停電した際には、自動 的にクラウド上でルーターが立ち上がるようになっている。さらには、本社に人が居るときに被災することを想定し、食糧や水も備蓄。LEDランタンやスマホの充電池、保温用毛布、靴まで準備したという。
「夏などは軽装で履物がサンダルだったり、女性はハイヒールだったりするので、それで避難するのは難しいという意見があり、各サイズの靴を購入しました」(草野マネジャー)こうしたことに関して社員が話し合い、ビデオ会議等でも活発な意見交換を行える環境にあるのも同社の大きな特徴だ。
東京2020年大会のレガシーを目指す取組
以前から独自のテレワークに取組み、普及推進を行う同社は、テレワークの利点は交通混 雑緩和だけでなく、社員のQOL向上と業務効率の向上が本質だという。 また、前述したようにテレワークの仕組みを整えることはBCP面でも力を発揮する。「小さい会社だからできるのでは、という意見をいただきますが、災害時など物理的に出社できない状況になったときの対策という観点で訴えると、多くは理解していただけます」(古賀代表)
災害が増えている状況の中、テレワークの普及推進は企業活動の上でも、とても重要な意味を持っている。また、同社が進めている地方自治体との連携も年々拡大している。青森県、秋田県に加え、今年は石川県金沢市の中学生が同社を訪問し、テレワークを体験した。さらに今年は、同社の社員が秋田県大館市に招かれ子連れでワーケーションに参加。コワーキングスペースで親が仕事をしている隣で、子どもが夏休みの宿題をやっている光景を目にしたことが、とても印象に残っているという。都内では子どもとともに作業ができるコワーキングスペースはまだ多くない。そうした点にも何か提案できないかを考えているという。テレワークを軸に、東京2020大会時だけでなく、これからの時代の働き方を提案・推進していく同社の姿勢にブレはない。
スムーズビズ参加者の声
関わった取組
テレワークだからこその“コミュニケーションの場”作り
週に数回は出社しますが、リフレッシュしたいときにはパソコンを持って温泉に行って仕事をしたり、長野に住む社員に会いに行って現地で仕事をしたりと、楽しく仕事をしています。テレワークは自分のペースで仕事を進められますが、それだけにメンバーとの連絡やコミュニケーションが重要になってきます。時には会って話をした方が良いときもありますし、仕事が一段落したときは飲みに行きたいと思うときもあります。会う機会を作るために、会社で定期的にランチ会を行っています。また、先日は有志でビデオ会議飲み会を行 い、社長も参加して盛り上がりました。テレワークを推進している会社が、顔を合せるコミュニケーションの場を設けることに矛盾を感じる人もいるかも知れませんが、テレワークだからこそ社員全員のしっかりとした意志疎通が重要です。これからも自由に仕事をし、自由に集まり、自由に解散できるような環境をさらに進化させていきたいと思っています。