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インタビュー

インタビュー

ナビタイムジャパン株式会社

独自のアルゴリズムでその人にとって最適なルートを提供する

 鉄道の経路を検索する際、鉄道事業者や経路検索サービスのアプリを利用する人が多いと思います。経路検索では、最短や乗換えが少ない、最安などが選べますが、コロナ禍を契機に、混雑状況を発信しているものも増えてきています。

 また、物流においては、ECによる物流量が急増する中、決められた時間に配達するため、最適なルートの検討が日々重要となっています。

 そうした中、ナビタイムジャパンでは移動課題に合わせた様々な経路検索サービスを提供しています。今回はそのうち、鉄道の混雑回避と物流業界支援に関する取組について交通データ事業部副事業責任者の永森枝里子氏に伺いました。

<交通データ事業部 副事業責任者 永森さん>

ナビタイムジャパンについて

 ナビタイムジャパンは2000年に創業し、ナビゲーションサイト・アプリの開発・運営を展開しています。「経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕する」を経営理念に、全ての移動手段に対してリアルタイム情報を考慮した上で、その日、その時刻、その場所でその人にとって最適なルートを提供する「トータルナビゲーション」の技術を強みとしています。提供しているサービスは、鉄道やバスの乗換検索のほか、トラック・自転車専用のナビゲーションや海外を含めた旅行者向けサービスなど交通手段に合わせたアプリケーション等を提供しており、最適な移動の提供や経路検索技術を強みに様々な事業展開を行っております。また、これらの技術を法人向けに提供し、課題解決や業務支援のサポートとして展開しています。

強みの経路検索技術を応用して生まれたサービス

・電車混雑回避ルート

 当社では、経路探索の技術力に強みを持っていますが、この技術力を生かし開発したのが「電車混雑予測」です。こちらは2016年4月から開始したサービスで、時刻表やルート検索時の画面に混雑度をアイコン表示し、混雑状況がわかるようになっています。

<電車混雑回避ルート>

 これまでの混雑に関する情報は、30分毎など一定の時間間隔でしたが、電車の種別や始発・終着駅、他路線からの乗り継ぎしやすさによって混雑が異なるのではないかと考え、電車1本毎の情報を提供したいと考えました。予測にあたっては、大都市交通センサスなどの公表データと当社の経路探索エンジンを組み合わせて独自技術により、シミュレーションしています。電車1本毎のシミュレーション結果を可視化したものは、動画でも公開しています。(https://www.youtube.com/watch?v=7f_Y1FfD4M4)シミュレーションは鉄道のダイヤ改正や車両編成の変更が行われるたびに実施しており、日々精度の向上を図っているところです。

 さらに細かく見ていきますと、階段等乗換えに便利な号車は混んでいるなど車両別でも混雑度合いは違っているため、そうした車両毎の混雑情報も提供しています。その他にも駅や地図、一部バスにおいては、リアルタイムの混雑情報も発信しています。

<車両別混雑度表示>

 こうした取組を始めた経緯として、テレワークやオフピーク通勤ができず、混んでいる時間帯に乗らざるを得ない人に対し、なにかサポートできないかという思いがありました。各駅停車や少し早めの電車に乗ることで少しでも混雑を避けられるなどの様々な選択肢を提示することで、サービスを利用されている方の移動体験をよりよいものにしたいと考えています。

※電車混雑回避ナビゲーションについてはこちらもご参照ください。

 https://www.navitime.co.jp/lp/predict_congestion/

物流の効率化でも活用

 トラックや物流事業者に向けたサービスも様々展開しています。「トラックカーナビ」というトラック専用のカーナビアプリでは、大型の車長や車幅など車両の情報を入れていただくことで、当社でデータ化した全国約192,000箇所の大型車の規制情報をもとに自分のトラックが走行できる道だけを案内してくれるナビゲーションです。

<トラックカーナビ>

 この大型車向けのナビゲーションを活用した「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」も提供していまして、これは管理しているトラックが今どこを走行していて、その荷物の運搬・配送状況がどうなっているか管理できるサービスです。また、走行中のトラックを管理するだけではなく、経路検索の強みを活かして最適なルーティングの計画部分も一緒に支援しています。

 このサービスは、VICSの渋滞情報に加え、当社のカーナビサービスを利用されている方の走行実績を活用したプローブデータも利用しておりまして、VICSが対応していない道路でも、どの時間帯にどこが混んでいるといった情報が逐次集積され、サービスで利用しています。

 その結果、約90%が到着予定時刻の±5分以内に到着と、より正確な所要時間を出せるというところが一つの強みとなっています。

※物流に関するサービスについてはこちらもご参照ください。

・「トラックカーナビ」:https://truck.products.navitime.co.jp/truck/top
・「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」:https://fleet.navitime.co.jp/
・高速道路の渋滞予測:https://www.navitime.co.jp/highwaycongestion/prediction/?fromlink=pcnavi.header

サービスの提供に向けた地道な努力

 当社では検索データや実際の走行データなどのデータを活用し、電車混雑や渋滞予測のサービス提供を行っていますが、こうしたデータのみで分析しているわけではありません。電車混雑予測や車両別混雑度表示では、実際に現地にいって、シミュレーション結果と齟齬がないか状況を確認したりしています。また、21年3月に全国の路線バス・コミュニティバスのカバー率100%を達成しましたが、その時は、自治体や事業者様にご協力いただき、全国をまわって時刻表や運賃データを収集したり、交差点付近の同一名称の複数バス停の位置を一つずつ正しい位置を調べるなど現地調査もきめ細やかに実施しております。こうした地道な努力が高品質なサービスとお客様の満足度向上につながっていると考えています。

今後の展望

 コロナ禍により、過去の統計が通用しないところが出てきており、これまで以上にリアルタイムな情報が求められているのを感じます。すでに駅や一部バスでリアルタイム情報を発信していたり、イベントなどでの突発的な混雑を駅混雑予報データとして時間帯別に提供していますが、それ以外にも22年3月に東急電鉄の協力のもと、AIカメラによるリアルタイムの混雑状況の把握の実証実験技術検証を行いました。こうしたリアルタイム情報を考慮した情報発信について、引き続き検討をしていきたいと考えています。

 移動する人々にとって役に立つ情報を提供したいという思いが、混雑情報提供など様々なサービス開発のきっかけになっていますが、このようなサービス提供による一人ひとりの行動の変化の積み重ねで、混雑緩和や物流業界の人出不足などの社会課題に対しても少しでも貢献できれば嬉しいです。