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インタビュー

インタビュー

株式会社キノミヤ運送

オリパラきっかけで始めたリードタイム緩和

 物流の混雑が予想されたオリンピック、パラリンピックの期間に、株式会社キノミヤ運送は混雑緩和施策に取り組み、リードタイムを1日伸ばすことに成功しました。イベントから1年が経過し、その取り組みを継続されているのか、またさらなる取り組みをされているのかを木場営業所の富永さんにお話を伺いました。

継続的な取り組みの中で変化したもの

 リードタイム緩和への取り組みは続けており、全体的に1日繰り上げることができています。これまでは受注から発送までの期間が短かったので、1日伸びることで余裕が生まれ、配車効率を上げることにつながりました。
 一つにはリードタイムが伸びたことで、高速道路ではなく一般道を使用することができるようになり、高速代だけでなく燃費も良くなったのです。当社の配送車は冷凍機を回している関係で、高速運転をしない一般道の方が若干ですが燃費が良くなることがわかりました。わずかでも積もれば年間でそれなりの金額効果になります。
 また配送ルートや配送回数を変更できるようになりました。納品の集約化を行うことで、これまで3、4ヶ所しか回れていなかったところを6、7ヶ所回れるように組み直しや、少数納品の商品は一度で納品させていただくなどをお願いしています。
 取り組みの継続で大きく変わったのは製造倉庫です。それまでは搬入車両に関して大形車両が入れないという制限があり、そのため原料を拠点から運んでくる際に4t車を3〜4台使用していましたが、8t車使用の許可を警察に提出し、台数を減らすことで高速代や人員削減などの効率を上げました。
 さらに当社は冷凍冷蔵車なので、積載量に関しては4t車では2.3tぐらいしか積めないのですが、8t車では7.3t積むことができるので、倍以上の積載効果があります。

2024年問題を気にかけないほどドライバーへの負担を軽減

 船橋に物流倉庫の拠点を置き、同系列のセンターもしくは店舗さんに卸している他社の製品も集めて混載することで、効率的な配送を行うという取り組みも行ない、それにより従業員の拘束時間を短くできています。
 残業時間に関しましても、通常時は50時間以下、繁忙期でも60時間を超えることなく、ドライバーの負担も減りましたし、有給休暇の取得ができるなどの効果が出ています。
 当社は早朝勤務・深夜帯勤務はなく、基本的に8〜11時に出社し、そこから8〜12時間が拘束時間ですが、大幅に増える事の無いように調整をしています。
 超過勤務が増える見込みの際には関係庸車または本社に応援をお願いし、混載の見直しなどで当社ドライバーの稼働削減なるように心掛けております。
 ドライバーの年齢が上がっている中で、肉体的負担を少なくできていると思います。
 2024年問題の時間外労働年間960時間に関しては通常営業ではほぼ対象ではありません。いろいろ業態も変わってきており、仕事を増やす部分もありますが、積載効率の悪いコースはなるべく自社車両を走らせないで他社に混載出来るかお願いする形を考えています。
 またその逆もしかりで、他社様の荷物を弊社で混載する形もとります。

相互協力配送により効率を模索

 運送会社との相互代替輸送も継続しています。たとえば当社名義で取引をしている元請けに対し、直接取引のない運送会社が連携することで仕事につながるというメリットがあり、当社も余すことなく荷主の配送をすることで信用を得られるというメリットがあります。
 当社の知り合いと連携することで、例えば午前中に3ヶ所回るところを2ヶ所で済むようになるべくタイトなルートを組むなどお願いしやすい関係にあり、それによって午前中1時間ほどの効率化が生まれそれを時差出勤に当てています。

 原料倉庫の引き取りもパレット積み込みを前提にお願いをして待機時間を削減しています。これには二通りの意味があって、一つは積み替えによる商品破損を防ぐ事。
 もう一つはドライバー肉体的負担を減らす事が挙げられます。

DX活用でより効率的な配送に

 昨年よりMOVOという事前予約システムを各センターで活用しはじめました。5日前から時間指定をすることで、受付を通さずバースのつけられた荷物がすぐにピックアップでき、簡易事務所で伝票を取るというシステムです。
 混んでいた拠点が緩和されたという効果も出ていて、少しずつ採用が増えています。

 待機時間、荷積や手下ろし作業は一番利益を生まない部分で、地方のドライバーさんは前の日から泊まって、朝一予約券をもらってバースを付けるまで近所で寝ている、という話もよくあり、時間が決まれば直前にセンターに入って、荷積みすれば近隣には迷惑が掛からないので非常にいいと思います。
 荷役も行わない運用をお願いしていて、80%ほどが荷役なしとなっています。
 システム導入による効率化は、当然ドライバーの労働時間に直結し、拘束時間が減ることで、ストレスも減り休憩時間に当てることが出来ます。
 今後、周りの情報を伺いながらいい仕組み、システムがあれば採用したいと思っています。

 今後ドライバーの採用と育成のキーワードは週休二日と労働時間の削減だと感じます。
 運送は経済流通の最先端になる業界です。熟練したドライバーの経験と最新のトラック機能を網羅して、若い世代を雇用していくのは最重要課題と考え労働環境を改善していくことが必須と考えます。