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インタビュー

インタビュー

働き方デザイン委員会

 スムーズビズではこれまで、テレワークを含めた多様な働き方の啓発等に積極的に取り組まれている働き方デザイン委員会(旧TDMテレワーク実行委員会)の様々な取組について取材しておりますが、社会活動が戻りつつある中、働き方デザイン委員会及び委員会に参画されている各企業の最新の取組状況について、それぞれお聞きしました。

株式会社アトラエ

 当社は2003年に設立され、求人メディアやエンゲージメントの向上などに関する事業を行っています。
 当社は役職がなく、全員がフラットな体制の組織となっており、ルールもミニマムにしています。働き方も創業時からテレワークやフレックスを導入しており、リモートワークの事前申請や条件はなく、個人の裁量と責任で、働く場所や時間を自由に選択できます。オフィスとリモートで情報格差がないよう、徹底した情報のオープン化を図っており、Slackなどのツールを活用しつつ、経営戦略や組織情報などについて、全メンバーが経営者と同じレベルの情報を得られるようにしています。一方、オフィスも、仲間と顔を合わせ、信頼関係を育むための大切な拠点と考えており、コミュニケーションが生まれやすい開放的な設計にするとともに、フリードリンクを提供するバースペースを設けるなど、つい行きたくなるような空間づくりに取り組んでいます。
 また福利厚生においても、ビジョン実現に寄与する挑戦を応援する特別休暇制度(最大6ヶ月間)の付与や男性の育児休暇取得にも取り組んでいます。
 リモートが増えた今だからこそ、今後は対面で会う機会も増やしたいと考えており、例えば、「社内運動会」なども実験的に実施しました。意欲あるメンバーが無駄なストレスなく、活き活きと働き続けられるよう、今後もアップデートし続けていきます。
※アトラエ社の取組「ATPF」はこちらもご参照ください:https://atrae.co.jp/culture/workstyle/

<広報担当 南さん>

楯の川酒造株式会社

 当社は1832年に山形県酒田市で創業されました。日本酒の製造が主ですが、山形産の果物やヨーグルトをブレンドしたお酒や、子会社ではワインやシードルなどの製造を行っています。
 当社は社長の指示のもと、働き方やDXに関する取組を推進しています。本社は山形ですが、営業や経営企画、広報などの職種は東京等におり、ジョブ型に近い雇用形態で、フルリモートにて勤務しています。こうした取組推進の背景として、一つ目は、デジタルマーケットや海外営業などの業種は県内で人材を確保することが難しく、首都圏を含めた全国の人材を活用したかったからです。二つ目は、首都圏の販路拡大のためです。県内は豪雪地帯で雪のリスクがあるため、そうした事態にも対応できるよう、最初は東京に事務所を設置しましたが、営業は出払っていることも多く、事務所に戻らないこともあったため、現在は事務所を閉鎖し、完全リモートワークで行っています。
 リモートワークを推進するため、SaaSや電子稟議等のワークフローシステム、クラウドサービスなどを導入しており、他の酒蔵と比較しても非常に先進的だと思います。一方、デジタルに疎い社員が脱落しないよう段階的な導入やフォロー体制の構築など、工夫をしながら取組を進めています。これらを導入した結果、製造部署を含む社内全体でデジタルの知見が高まっており、老舗酒蔵にありがちな「先輩の背中を見て盗め」ではなく、「情報はオープンに、ノウハウを共有する」文化も醸成されています。
※楯の川酒造については、こちらをご参照ください。https://www.tatenokawa.com/ja/sake/

<広報担当 高梨さん>

シックス・アパート株式会社

 当社は2003年12月に創立した、ウェブサイト構築システムを開発するソフトウェア会社です。私たちの新しい働き方への取組の第一歩は、2011年に東日本大震災後の節電要請を受けて、夏期のみ毎週水曜日を全社員リモートワークと定めたことでした。2016年夏に親会社から独立した際に、リモートでの働き方をさらに推し進め「必要な時だけ、出社する」フルリモートのワークスタイル「SAWS(サウス、SixApart らしい Working Style)」を開始しました。
 SAWSは、ルールは最小限にして働き方の柔軟性を高め、働く個人のQOL(クオリティオブライフ)の向上を目指す働き方です。「ライフが充実するとワークも向上する」という考えのもと、いつ・どこで働いても、業務に支障なく、責任を全うできる働き方を社員が自分で選んで実践しています。
 一人ひとり異なる働きやすい環境作りを支援すべく、「SAWS手当」と名付けたリモートワークのための手当を全社員一律で毎月定額を支給しています。SAWS手当の用途は自由で、領収書の提出などの申請も不要です。自宅の通信費や光熱費、デスクや椅子などの購入費用に充てたり、コワーキングスペース利用料などに活用されています。2022年7月には光熱費の上昇を受けて、毎月の支給額を5千円増額し、2万円としました。
 リモートで働く社員同士のコミュニケーションを活性化させるため、コロナ禍前は、毎月全社員が集まれる広さの会場を借りて社員総会と交流会を行なっていました。今はコロナ禍で遠くに住む社員も増えたので、社員総会と交流会を毎月オンラインで開催しています。オンラインであっても交流を促進するため、誕生月の社員に近況を聞く時間を設け、会社からのプレゼントを選んでもらうイベントを開催しています。それぞれの人となりも伝わり、雑談のきっかけづくりにもなっています。
※「SAWS」の取組はこちらもご参照ください:https://www.sixapart.jp/saws/

<広報マネジャー 壽さん>

アステリア株式会社

 当社は1998年に設立され、ソフトウェアの開発と販売を行っています。
 当社では東日本大震災を機に働き方の見直しの必要性を感じ、2011年よりテレワークの実証実験を繰返し行ってきました。そのため、2020年の1回目の緊急事態宣言時にはすでにリモートワークによる働き方が確立されており、大きな混乱もなくスムーズに対応できました。
 また、オフィスも従前は全員が出社する前提で設計された場所でしたが、コロナ禍でそのあり方も変えました。当社では、本人の意志で働く場所が選べて、より高い生産性とパフォーマンスを発揮できる環境を作り出すことが大事だと考え、オフィスを「5元化(センター、サテライト、自宅、バーチャル、リゾート)」として再定義し、環境整備を進めています。具体的には、従来の本社を四分の一に縮小し「必要な時に必要な人が集う場所」としてセンターオフィスへ刷新した一方、自宅だけでなく、全国にあるサテライトオフィスを利用できるサービスの導入や、「oVice」等のツールを活用したバーチャルオフィスなども充実させました。また、直近では軽井沢町にリゾートオフィスを建設し、23年6月に稼働予定です。こうして、社員一人一人が好きな場所を選択して働けるスタイルにすることで、モチベーションと生産性をより一層高めることができると考えています。
 さらに、ウェルビーイングの向上にも努めています。その一環で実施していることは、Good&New。楽しく、幸せな体験を語り合うと気持ちが相互に高まりメンバー同士の連帯感が強まります。リモート環境であっても、あまり接する機会の少ない同僚とでも、あっという間に打ち解けることが可能です。会議の冒頭に「Good & Newでお互いに最近幸せだったことを報告し合おう!」という全社での実証実験を行っていますが、一気に参加者の心の距離感が縮まりチームビルディングでも大きな効果を得ています。
※センターオフィスについてはこちらもご参照ください
https://www.asteria.com/jp/inlive/asteria/5376/

<執行役員コミュニケーション本部長 長沼さん>

株式会社ヘルスケアシステムズ

 当社は2009年に設立された名古屋大学発のベンチャー企業で、郵送型のセルフケアの検査キットを販売している会社です。本社は名古屋のラボで、研究開発と検査事業以外の部署が東京のオフィスにあります。
 現在、東京オフィスは完全リモートや半分リモートのメンバーで構成され、在宅者は出勤と同時に音声のみのバーチャルオフィスに入室し、必ず声をかけられる状態にしています。またコロナ以降に、毎週1時間朝礼を行い、みんなで顔合わせる機会を設けました。業務の話だけでなく、プライベートや他の部署とのコミュニケーションで嬉しかったことなどを共有する場にもなっています。
 場所もそうですし、それぞれにマッチするところで生産性を高めて働くということを重視しています。現在、社員の7割が女性で、その中の7割が子供を持つママさんという構成なので、女性がずっと安心して働けるようにしたくて、制度を整えました。生産性を重視して出勤と在宅を自分で選べるので、私も時間いっぱい働くことができ、子供のお迎えもとても楽になりました。また、年5日のファミリーサポートという自由に使える休暇があり、子供の行事や記念日など自分や家族のイベントにも使うことができます。何かに捉われない多様な働き方を推進している現在、家族の介護で福井県にいる従業員もいます。ひとりひとりのライフステージに合った働き方ができるのもテレワークの良さなのかなと思います。
※ヘルスケアシステムズについてはこちらもご参照ください。:https://hc-sys.com/

<商品企画部広報・カスタマーサクセス 高実子さん>

働き方デザイン委員会の取組と今後の展望

 委員会自体は2019年の7月から、東京2020大会時の混雑を防ぐためテレワークを普及させていこうというところからスタートしました。その後、コロナ禍や昨今の新しい働き方の推進といった流れが押し寄せてきましたが、柔軟に方向転換をしていきながら対応してきました。
 2021年の冬には、テレワークによって障害者雇用も推進できるのではないかという確信のもと、就業支援センターの方とイベントをさせてもらいました。事業者さんと、実際にテレワークで働いている仙台在住の障害者の方にご登場いただきました。単なるコロナ対策のテレワークから、より多様な社会の受け皿にしていくという可能性も秘めているのかもしれません。
 また、世界的なエネルギー価格の高騰や節電要請を踏まえ、2022年7月に「テレワークでの節電術3ヶ条」というのを作りました。自宅の空調を賢く利用しよう、電力消費のピークタイムがあるのでその時間にはちょっと控えよう、オフィスに人がいないなら電気を消そうなどといった取組をみなさんと共有しました。24時間のうち多くが仕事の時間になるので、その時間の行動を変えることによって社会に対してインパクトのある変化を起こせるのではないかと考えています。
 コロナ禍がいずれは終息していくとしても、テレワークや自由な働き方というのは、多様な社会に対しても大きな付加価値があると思っています。エネルギーの問題もそうかもしれませんし、住む場所もそうです。こうした柔軟な働き方によって仕事で住居が縛られるというのが無くなるかもしれません。そうするとまた違った社会、最終的には多様性や日本のイノベーションにも寄与するのかなと思っています。

<テレワークでの節電術3ヶ条(22年7月の討論会より)>