富士食品工業株式会社
2024年問題は物流業界だけの問題ではない
物流業界の働き方改革、通称「2024年問題」を見据え、物流各社で業務の見直しによるドライバーの働き方改善を模索していますが、これは物流会社だけの問題ではなく、メーカーや配送先にも影響する、全業界が向き合う問題として動き始めています。
業務用調味料を扱う富士食品工業株式会社は、商品を届けるにあたり、保管場所の見直しや委託先の物流業者との連携を通してこの問題に取り組んでおり、その取り組みの背景と現状、そして今後の展望について、業務部の三浦さんにオンラインでインタビューを実施しましたので、その内容をご紹介いたします。
物流現場での課題は、待機時間と附帯業務
物流業社が2年かけて実態調査を行ったところ、大きな問題は「待機時間」と「附帯作業の多さ」が上がってきました。
お得意先の荷受が混んでいて2-3時間その場で待たされたり、本来ドライバーは配送と積み込み・積み下ろし作業となりますが、附帯作業(倉庫への棚入れ作業等)を指示されることもあり長時間労働に繋がっていると考えられています。
当社品は重量が10-15Kgが主体となりますのでより負担増としてドライバーの労働環境に影響を与えていると思います。
こうした問題を解消するために、既存のお得意先には直接伺ってご協力のお願いを、新規のお得意先へは附帯作業はお受けできない旨を明記し納品開始前にご案内を行っています。
また、毎日のように配送や附帯作業があるお得意先へは1回の納品数量を増やし納品回数を減らしていただくようご協力のお願いをしています。
ただ、食品の共同配送は数メーカーの荷物を纏めて配送しているので、3メーカーあれば3メーカーが足並みを揃えた対応をとらなければならない為、難しさもあります。
取り組みに改善の兆しはあるものの、新たな問題とも直面
リフトの免許を持っているドライバーを希望される事もありますが、今はそういう話が事前にあればお断りするというのは常識的にはなってきています。例えば30分かかる棚入れ附帯作業がゼロになれば、その30分の労働時間がなくなるわけです。
お得意先の抵抗はあると思いますが、納品ボリュームの多いメーカーが率先して附帯作業削減依頼を行っていただけると問題になっていることもあり、受入れていただける様になったと聞いています。弊社の委託先業者では、附帯作業については全配送先の半分ほどで「なし」で対応いただけるようになり改善されているとのことでした。
待機時間については、納品予約システムを取り入れるお得意先が増え、何時間も待たされることは減ってきていますが、事前に予約をしないと受け取ってもらえない、ピンポイントの時間なのでルート変更をしなければならない等、実際には不都合もあるようです。また予約システムも独自開発もあればプラットフォーム化されているものもあり、ドライバー側で何個もアプリやID設定をしなければならず操作が大変になり、結局ドライバーに負担がかかってしまった例もあります。現在は、待機時間や附帯作業が料金化されつつありますのでお得意先と負担についてもご協力いただけるようお願いしていきたいと思います。
お得意先からは附帯作業料がコストに跳ね返っても仕方ないと言われることもありますが、ドライバーの就業時間が限られることや元々の人手不足もあり、現状と同じ対応では運びきれない可能性があることを情報共有させていただきながらご理解を得ていきたいと思います。
きちんと届けるためにできること
当社が取り扱う商材は食品原料の為、外食産業への提供ができないと店舗が開けられなかったり、原料が1つ不足するだけでスーパーやコンビニの店頭に加工食品が並ばなくなるなどの可能性もあり、お得意先のご希望通りにきちんと運び切ることを目指しています。
そういった背景もあり、物流業者との調整、確認を今後も進めていきたいと思います。
仮にリードタイムが延びることになっても事前にお得意先へお伝えしておけば計画的に動いていただくことが可能になります。急に納品不可とならないようにお得意先との調整も大切です。特に心配しているのは繁忙期です。今まで、年末年始・ゴールデンウィーク・お盆等全国的に長期休暇となる直前の繁忙期に配送が集中して届けきれなかったことが何回かありました。更にリードタイムが延びるとなれば在庫量を増やさなければならず、在庫量を増やす為には保管倉庫を準備しなければならない等、様々なことに関わってきます。
当社は静岡に工場がありますが、北海道、東北、九州等のお得意先へはいったん配送する為の倉庫に移動しご注文をいただいたらすぐにお届けできるようにしている為、各地の在庫量が変わってくることも視野にいれる必要があります。24年4月以降からの変化については1年前にならないとはっきりしないようです。お届けのリードタイムが延びたり配送料が上がるのは今から予測していますが、その結果、在庫量の増加や倉庫間移動のリードタイムが延びるところまでははっきりしません。また長距離移動についてもフェリーや鉄道といったトラック以外の手段も検討していかなければならないと思います。現在は、委託業者と取り組んでいる附帯作業・待ち時間の撤廃・軽減を継続しつつ、新たに予測される案件について遅れることなく対応していきたいと思います。