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インタビュー

インタビュー

アサヒビール株式会社

グループ内外と協力し、2024年問題に立ち向かう

 リードタイムの緩和は、お客様にモノを届ける物流業者だけでなく、メーカーにとっても喫緊の課題であり、各社さまざまな取り組みや工夫を行っています。2021年のオリパラ開催時期に納品時間の分散や車両台数の平準化などの取り組みを行い、リードタイム緩和にも積極的であったアサヒビール株式会社に、その後の取り組みや変化などを伺うべく、同社生産本部物流システム部東日本物流部の坂田さんにお話をお聞きしました。

オリパラは通過点で、リードタイム緩和はかねてからの課題

 2021年のオリパラ開催時のリードタイム緩和への取り組みは、今も継続をしております。従来お届け日の前日にご注文いただいていた形態を、中一日置いて前々日にご注文をいただいく形にしております。これは特にオリパラ対応ということではなく、それ以前から物流環境の変化に合わせ、お得意先様のご協力を得て進めてまいりました。現在、物量ベースでは90%以上が前々日のご注文をいただいており、これを100%に近づけられるように取り組みを続けているところです。

競合他社とも協力し、迫る2024年問題と向き合う

 そのほか納品時間の分散や、共同配送も引き続き行っており、グループ内では、エノテカ(輸入ワイン)、アサヒ飲料(清涼飲料)、アサヒグループ食品(菓子類)等の同送を、グループ外(酒類飲料、加工食品等)貨物も、グループ貨物と組み合わせた配送を一部導入しています。コロナで物量が減少した時期がありましたが、物量が回復し、それらの施策を活用しています。
 同業の競合他社とも協力して共同配送を行う背景には、迫る2024年問題があります。コストの面もありますが、乗務員不足が進む中、今までと同じ運び方をして安定的にお得意先様へ配送が持続できるのか、という点を一番リスクと考えています。荷主の立場として、車両台数を減らした輸送効率化や、乗務員が働きやすい環境の整備をすることで、安定的に配送する能力を確保したいと考えています。
 例えば、卸業者様と連携して、相互の車両を往復で活用する取組みや、長距離幹線輸送時に中継地を使ったスイッチ輸送等を一部テスト実施するなど、施策展開を検討しています。

乗務員の働き方改革が物流の持続につながる

 乗務員が働く環境面においては、付帯作業による重作業や拘束時間の増加が問題として挙げられます。お得意先様の納品先ごとに従来からの納品手順がありますので、2024年問題やホワイト物流の取り組みなどをお伝えしながら、お得意先様のご理解いただくようにしています。
 自社での対応として、現場作業においては、日中の作業比率を上げる取組み、事務作業においては、コロナ禍もあり、可能な業務のリモート化を進め、在宅勤務や時差出勤を部分導入しています。年末年始の繁忙期には、出荷量平準化のための納品日の調整や、車両回転を上げるための納品時間緩和を行っています。また拠点の出荷能力を超える場合は、他拠点も含めて、全体で能力のバランスをとるような調整を行います。
 物流のDX化なども取り入れており、得意先と連携したASN(事前出荷情報送信)による検品レス納品等を一部テスト導入しています。こういった取組みをさらに広め、作業軽減や車両滞留時間の削減につなげていきたいと考えています。

さいごに

 受注リードタイムの緩和(中一日)については、お得意先様にご理解をいただくには、丁寧な説明が必要となりますが、物流環境の変化や運べなくなるリスクについて、ご理解いただけるよう活動を続けていきます。2024年問題をはじめ、物流危機に関するテーマを媒体などで、さらに大きくクローズアップしていただけると、社会全体がさらに活動しやすくなると期待しています。