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インタビュー

「新しい日常」における働き方に関するインタビュー

サクラファインテックジャパン株式会社

コロナ禍での、「感染症BCP」に基づく「がん診断を進展させる」ミッションの遂行

 コロナ禍の中で、多くの企業が、社員の安全確保や事業継続に向け、試行錯誤されているかと思います。
 今回は、「人を大切にする」という企業理念のもと2013年から感染症対策や感染症BCP策定の取組を進めるとともに、新型コロナウイルス感染症拡大時には、速やかに感染予防と業務継続の体制をとることができた「サクラファインテックジャパン株式会社」の代表取締役社長兼CEOの石塚様と人事・総務部 担当部長の谷口様に、進めてきた取組やその経緯、コロナ禍での対応などについて、オンラインインタビューを実施しました。取材時点(2021年2月上旬)において、原則全員在宅勤務となっており、石塚様と谷口様も、ご自宅から対応いただきました。

<代表取締役社長兼CEO 石塚様>

〇サクラファインテックジャパンのミッション・理念

 サクラファインテックジャパンは、江戸時代の薬種商販売業を起源とし、400年の歴史を持つサクラグループの一員であり、病理学的検査分野における標本作製機器などの製造・販売を行っています。

我々のミッションは、「クラス最高のイノベーション、品質およびお客さまへの配慮を通じて、病理と患者さまのための一体化されたソリューション(商品、アプリケーション、サービス)を提供することで、がん診断を進展させる」です。このミッション遂行に向け、社員一人ひとり、さらにお客様、患者様を大事にすることを理念としています。

〇社員一人ひとりの能力発揮に向けた取組

 人を大切にするということを理念として掲げる中、特にコミュニケーションを大切にしています。社員のコミュニケーション確保策として、オフィスは壁をなくし、パーテーションも低くしています。また、仕事に加え、雑談・飲食、さらには映画鑑賞も可能なコミュニケーションスペース「あうんテラス」を設け、コミュニケーションの促進につなげています。コロナ禍ではそういった活用は控えていますが、以前は、年に2回全社員が集まる会議も実施していました。
 また、社員の能力発揮のためには、“働きやすさ”と“働きがい”の両輪を推進する必要があります。そこで、2019年から、時差出勤制度を導入し、通常8:45~17:30であった勤務時間について、始業時間7:30~9:45 の7 類型で選択できるようにすることで、異なる業務形態や通勤事情にあわせた働き方ができるようにしました。また、年間5 日(計40 時間)の範囲内で、1 時間単位で休暇を取得することができる時間単位の年次有給休暇も導入することで、様々な機会にあわせて柔軟に休暇を取得できるようにしました。ただし、この時点では、テレワークは、介護や育児を理由とする社員に限定していました。
 また、今年度は、健康保険組合連合会東京連合会などにより推進される健康企業宣言に参加し、職場の健康づくりに取り組む環境を整え、健康優良企業「銀の認定」を取得しました。

<あうんテラス>

〇コロナ禍前からの感染症対策・感染症BCP策定

 医療機器を提供する弊社では、感染症対策はことさら重要であり、社員、お客様、そして家族を守るため、新型コロナ感染症拡大前から対策を進めています。

<ワクチン集団接種の様子(2018年)>

 例えば、2013年に風しんが流行しましたが、その際は、風しん予防ワクチンの接種促進として、医療機関における風しん予防ワクチンの接種費用を全額補助しました。加えて、接種率向上に向けて、希望する社員に対しては、企業内で風しん予防ワクチンの集団接種を実施しており、これは当時本社のあった江東区で初めての取組でした。現在では、風しん以外にもインフルエンザワクチン等の集団接種も実施しています。
 さらに、2016年には、東京都福祉保健局、東京商工会議所、東京都医師会による「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」に参加しました。このプロジェクトは、必要な知識の習得や風しん予防対策など、実践すべき取組として、①感染症理解のための従業者研修(50問のeラーニングの実施など)、②感染症BCP(業務継続計画)の作成、③風しん予防対策の推進、の3つのコースが設定されており、企業が実情に応じたコースを選択して取り組むものです。我々は、3つのコースすべてに取り組み、3コースすべてを達成した最初の企業となりました。

〇新型コロナウイルス感染症拡大への対応

 このように働き方改革や感染症対策を進めていた中、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。
 弊社では、従業員、家族を感染症から守るため、感染症が拡大する昨年2月以前から、発熱等のかぜ症状のある従業員または家族に同様の症状がみられる従業員の出社禁止、不要不急の出張(国内外)の延期または中止など感染予防策を実施しました。
 3月からは感染症BCPに基づく対策を実施しました。全社員がテレワークをできるようにした上で、出勤班、在宅班の2班に分け、1週間交代で出勤と在宅勤務を交互に行い、社員同士の接触機会をなるべく減らすようにするとともに、出勤する際の出勤パターンも新たに2パターン(始業時間10:00、10:30)追加しました。そして、3月末からは在宅勤務を拡大し、交代勤務ではなく、原則全社員在宅勤務とし、現在(2021年2月上旬)も継続しています。
 また、7月には、感染症対応ガイドラインを策定し、感染症予防に関する行動の原則等を示し、運用しています。

〇コロナ禍における働き方

<自宅でのWEB会議の様子>

 3月末から原則全員在宅勤務としましたが、業務上で大きな混乱は生じませんでした。これは、従業員約170名と会社規模がコンパクトであるだけでなく、普段からコミュニケーションを重視し、風通しのよさがあったからこそだと思います。さらに、IT部門も、WEB会議ツール等の浸透に向け、頑張ってくれました。
 もちろん、出勤せざるを得ない業務もあります。機器開発では現物に触れないといけないですし、対面で会ったほうが良いもの、紙でのやりとりが必要なものなど、さまざまあります。その場合でも「出社した方が便利だが本当に必要があるのか」という視点のもと、業務の棚卸をしています。例えば、コールセンター業務をオンライン上でできるようにしたり、FAXや経理上の紙資料をPDFで受け付けられるようにしたりするなど、いろいろと工夫をしながら、その範囲を減らしてきました。
 それでも、一律に在宅とすることは難しいですが、出社するとなった場合は、本当にその必要があるのか、ということを見極めることが必要です。弊社では、出社状況について管理本部長が集計し、出社割合が多い場合は、その必要性を確認し、バランスも考慮して、出社状況をコントロールしています。その結果、現在、1日の出社率は15%(20~30名)程度であり、これは2回目の緊急事態宣言後でも変わっていません。

 説明したとおり弊社ではコミュニケーションを重視していますが、在宅勤務により対面で会うことがなくなったため、コミュニケーションの機会をどのように確保するかが課題となりました。
 そこで、全社員からランダムに5~6名のグループを組み、WEB会議で15分程度の雑談をする企画(「シャッフルTeams」)を実施しています。また、年に2回の全社会議を、初めてオンラインで開催するとともに、季節ごとのプレゼント企画(ハロウィンやお歳暮オンライン抽選会)などを企画しました。今後も、皆で試行錯誤しながら、より良いコミュニケーション策を検討していきます。
 コロナ禍で我々の働き方は大きく変わりましたが、感染症が終息した後も、在宅勤務が選択肢として残っていくだろうと考えていますし、社員の働きやすさにつなげていきたいと考えています。

〇終わりに

 ご自宅からインタビューに対応いただいた石塚社長は、在宅勤務の拡大に伴う社員間のコミュニケーションを課題としている企業に対して、自社の取組が参考になれば、とおっしゃっていました。この記事をお読みになっている皆様の参考になれば幸いです。