三菱UFJ信託銀行株式会社
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う2度目の緊急事態宣言下での対応として、多くの企業でテレワークなどの取組を推進していただいています(2021年2月時点)。
その中には、2020年4月の第1回目の緊急事態宣言時において対応に苦慮された経験が活きている企業もあるのではないかと思います。
今回は、三菱UFJ信託銀行株式会社が、コロナ危機の中でどのように業務スタイルの変革に取り組み、テレワークなどの新しい働き方を社内に浸透させてきたかについて、経営企画部 業務改革推進室 上級調査役の金子さんに、お話をうかがいました。
2020年4月からスタートした「業務スタイル変革プロジェクト」を通じて、テレワークの環境整備や利用促進、オフィス密度の緩和など感染拡大防止策に加えて、ペーパーレス や押印レスといった業務プロセス改革などにも取り組まれてきた中で、ご苦労された点や今後の展望について、オンラインでのインタビュー内容をご紹介します。
〇コロナ禍を契機とした「業務スタイル変革プロジェクト」の推進
当初は、2020年の夏に予定されていた東京2020大会期間中におけるテレワークや時差出勤などの新しい働き方の実践に向けた準備を進めていましたが、感染症対策として取組を大幅に前倒しで行う必要に迫られました。
既に在宅勤務は制度としてありましたが、対象は育児や介護対応が必要な社員と管理職に限定されており、家庭の都合などにより行うもの、という雰囲気でした。
大会に向けて準備していた在宅勤務用のノートパソコンの配備や通信環境の整備は、1度目の緊急事態宣言時には間に合わず、不急業務を止めるなどの対応に加えて、出勤抑制をする中で、戦力となる社員にやむを得ず自宅待機をお願いせざるを得ない状況も発生しました。また、ペーパーレス等の業務プロセスの見直し、勤務ルール等の整備、出勤時のサーモグラフィや座席間のパーティション配備など総合的な対応の必要性を認識いたしました。
こうした課題の解決に対し、社長からのトップダウンで立ち上げたのが「業務スタイル変革プロジェクト」です。
本プロジェクトは、テレワーク環境の整備、出社時の安全な職場環境の整備のみならず生産性の向上を通じたお客様提供価値の向上も視野に入れ、システム・人事・総務・リスク管理・コンプライアンスの各部署と経営企画部が一体で進める全社横断的なものとしました。
プロジェクトの推進に当たっては、①IT基盤整備、②業務改革(各部署のペーパーレス化・押印レス化の実現サポート)、③組織・人財戦略(出社とテレワークが並列する新しい働き方に対応する人事制度運営)、④職場環境整備(感染防止のためのワークプレイスの検討)、の4つのワーキンググループを設定し、前述の課題に取り組んでいます。
例えば、IT基盤整備のワーキンググループでは、段階的に、ノートパソコンや業務用スマートフォンの追加配備をしながら、WebexやZoomなどの非対面コミュニケーションツールの導入、安全・安心なネットワーク基盤の増強などを図っています。業務改革のワーキンググループでも、社内の各種紙文書の電子化や社内文書を紙に押印して回付するのではなく電子データとして回付できるシステムの導入、お客様との取引等に当たっての電子契約や電子署名のシステム導入などを順次進めています。
一方、こうしたハード面の基盤整備の取組を進めていく中で出てきた課題もあります。在宅勤務による上司・部下間のコミュニケーション不足を解消するためのシステムツールや、自宅では勤務が難しい社員に対するサテライトオフィスの拡充が必要と感じています。まだまだ紙で行う業務も残っています。信託実務の根幹を支える事務品質の維持、お客様情報の保護の観点と、社会インフラとしての業務の確実な遂行との両立の観点から最適な環境構築を引き続き検討していきます。
〇信託業務におけるオンライン化の工夫
コロナを踏まえて対面で面談したくないといったお客様のニーズを踏まえ、個人のお客様へは、お客様のさまざまなお悩みやご質問について、非対面コミュニケーションツールを利用しご相談いただけるよう、オンライン相談の予約を2020年11月から弊社HPで開始いたしました。信託での手続については、不動産や資産承継等、契約手続に至るまでに複数の相談を要するものも多いため、そのような場合のご相談にも当該ツールをご活用頂いています。
また、同様にコロナ禍においてはご家族にもなかなか会いづらい環境にある中、アプリで離れたご家族の健康状況の見守りや日常や旅行の写真で思い出を共有、万が一に備えて将来伝えておきたいことを記録できる等、家族間の繋がり・コミュニケーションをサポートできる機能をもった「わが家ノート」というスマートフォン向けアプリのご提供を開始しました。今後も、こういったオンラインサービスの充実をお客様のご要望をお伺いしながら図っていきます。
〇2回目の緊急事態宣言下での対応について
前回の緊急事態宣言時においては、取組の実施当初、山積する課題への対応に追われましたが、今回の宣言下においては、全社を挙げたプロジェクトにより、試行錯誤しながらも体制の整備を進めた結果、お客様と従業員の安全確保と業務継続の両立を実現できています。
在宅勤務制度や時差出勤制度についても十分に活用されてきたとはいえませんでしたが、コロナ禍のこの1年で、大幅に進展し、今では誰でも当たり前に使う制度になっています。
コロナが収束した後のことはまだ分かりませんが、コロナ以前のものに完全に戻るとは考えにくいですし、いつでも、どこでも、だれとでも繋がることのできる柔軟性を持ちつつ、従業員一人ひとりが自律的に働くことのできる環境整備を整えてまいります。
〇終わりに
1回目の緊急事態宣言下で様々な課題に直面し、社内一丸となって着実に業務変革に取り組まれた結果、2回目の緊急事態宣言下でのスムーズな対応につながっている様子がうかがえました。企業の皆様におかれましても、コロナが収束した後の働き方も見据えた取組として参考にしていただければ幸いです。