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インタビュー

「新しい日常」における働き方に関するインタビュー

アマゾンジャパン合同会社

自立性を大切にする企業文化に基づくコロナ禍での働き方

 今回は、社員の自主性を尊重し、多様な働き方が企業として根付いているアマゾンジャパン合同会社 コーポレート人事本部 エンプロイーリレーションズ&エンゲージメント部長の曽我野さんに、同社の働き方を支える行動指針、企業文化、コロナ禍における取組などについてお話をうかがいました。

<曽我野さん>~Amazonオフィス内のカフェテリアにて~

 アマゾンジャパン合同会社は、総合オンラインストアAmazon.co.jpを運営する法人です。書籍、DVD、CD、家電製品、車&バイク、おもちゃ、ヘルス&ビューティー、食品、ペット用品、ファッション、電子書籍、Amazonデバイスなど、数億アイテムを超える幅広い商品を取り揃え、地球上で最もお客様を大切にする企業になることを目指し、低価格で、簡単・便利にお買い物をお楽しみいただけるよう努めています。

 Amazonでは、大切にしている哲学があります。それは、今日も「Day1」、毎日が常に、最初の一歩を踏み出す日、新たな挑戦を心待ちにする日であるという考え方です。
初心を忘れず、危機感を持ち続け、起業家精神を忘れず、お客様を起点に、謙虚であれという姿勢をとても大切にしています。この企業文化がAmazonを支える力となり、刺激となっています。

 Amazonには、世界で100万人の社員がいますが、全社員の行動指針として、「リーダーシップ・プリンシプル」という、14項目からなる信条があります。全員がリーダーであるという考え方のもとで、社員一人ひとりが、日々の活動において、常にこの「リーダーシップ・プリンシプル」に従って行動するよう心がけています。
 一つの項目を例に挙げますと、「オーナーシップ」は、自分のチームだけでなく、中長期的視点を持ち、会社全体のために行動し、「それは私の仕事ではありません」とは決して言わない、というものです。これは社員が、会社全体のことを考えながら、主体的に働くことにつながっています。

※リーダーシップ・プリンシプルについて、こちらから詳細をご確認いただけます。

 本社、カスタマーサービス、配送センターで、それぞれ働き方が違いますが、本社では、コロナ禍前からコアタイムなしの完全フレックス勤務が導入されており、在宅勤務も可能でした。これは、海外とのミーティングが多い中、決まった時間にオフィスにいる必要がないという面もありますが、社員の多様性を重視する文化から生まれたものであり、どこで働くかではなく、どのように働くかを大切にしています。また、「今日は家族が病気なので」とか「家の設備点検があるので」など、在宅勤務する理由を伝えなくてよい、在宅勤務をする社員に評価上のバイアスがかからないようにするなど、在宅勤務を利用しやすくするようにしています。
 お客様からのお問い合わせに対応するカスタマーサービスも、一部は完全在宅勤務です。様々な理由でフルタイムでの勤務が難しい人もいますが、そのような人たちの持つ能力をお客様のために活用してほしいと考え、完全在宅勤務を前提とした社員を登用して活躍してもらっています。

 新型コロナウイルス感染症が急拡大する中、昨年(2020年)3月に通知を出して、本社勤務の社員について、業務の性質上可能な社員は原則在宅勤務としました。在宅勤務はコロナ禍以前より利用されており、社員の主体性を尊重する職場風土もあったため、スムーズに切り替えることができました。
 一般的には、在宅勤務などに切り替える際、人事が施策を検討・実施すると思いますが、弊社では、人事部門が中心となって何かの取組を全社的に積極的に呼びかけるようなことはしておらず、社員が行動指針に従って自律的に動きます。
 他にも、在宅勤務の拡大によりコミュニケーションが課題となっているという話も聞きますが、弊社では、チャットツールを使って、頻繁にコミュニケーションをとるようにしていますし、チームごとにオンライン上でのティータイム、飲み会を開催するなど、バーチャルでも、あたかも同じ空間にいるような工夫をしています。オフィスで勤務しているときとは異なり、お互いの家族やペットを紹介し、笑顔を分かち合うようなことはコロナ禍においてこそ進んだ取組といえるでしょう。

 ただし、新入社員については、入社時からずっと在宅勤務ということもあり、ちょっとした質問をチャットで気軽に聞くことは難しいかと思います。弊社では、従前から入社後三カ月程度の期間、何でも相談できる社員(バディー)を一人決めており、在宅勤務であってもチャットで気軽に質問・相談したり、また定例ミーティングを通じて、コミュニケーションがとったりできるようにしています。実際に新入社員に話を聞いてみたところ、新入社員同士でWEB会議にずっとつないだまま、聞きたいことがあれば、ミュートを解除して話しかけるといった取組をして、隣同士で仕事をしているような環境を作ってコミュニケーションする工夫をしている社員たちもいました。
 また、在宅勤務が常態化したことから、快適かつ効率的に仕事をするために必要な、通信環境やPC周辺機器に関するニーズも出てきました。ケーブルやキーボードなど小型の周辺機器は、社内のITチームが貸出を行いました。それ以外にも、自宅用モニター、さらにはスタンディングデスクなどを、社員各自が調達できるよう、COVID経費を設けることで、会社の費用で清算できるようにしました。

<COVID経費で設置したスタンディングデスク>

 また、コロナ禍によって思わぬ業務スタイルの変化と効果も見られました。例えば、オンラインでの営業が増える中、営業担当者の仕事のしかたが、人間関係ベースの営業スタイルではなく、きちんとアジェンダを設けて時間内で顧客に明確に説明・提案するという営業スタイルへと変化し、商談の効率と効果が向上したという話を聞きました。

<参考:物流センターでの働き方やDX推進による感染症対策>

  物流センターは、お客様に商品をお届けするために、24時間、365日、常に動いています。Amazon Roboticsというロボット技術を導入し、倉庫作業の自動化を進めており、幅広い年齢の人が働きやすい環境を工夫しています。
 また、安全面でも、ドアのハンドル・階段の手すり・タッチスクリーンなどの定期的な消毒、手洗いの徹底、朝礼に代えてホワイトボードでの重要な情報の共有、シフトの開始時間・休憩時間をずらすことで距離を2メートル以上保つように調整、などの取組を実施しています。
 また、「ディスタンス・アシスタント」というツールを活用して、工場内に張り巡らしたカメラから得た情報をAIで分析し、密集する場所を可視化して避けられるようにする対策も取っています。こちらのツールは無料公開しており、カメラなどあればどなたでも利用できますので、ぜひご活用ください。

<ディスタンス・アシスタント>

※物流センターにおける感染症対策は、こちら(アマゾンジャパン社のブログに移動します。)

 ポストコロナの働き方はどうするか、という話を、昨年(2020年)6月時点ですでに行い、働く場所を自分で選択できる「Our Workplace Options(OWO)テネッツ(行動指針)」という基本理念を策定し、全社員に発信しました。私たちAmazon社員は、お客様のことを第一に考え、お客様のためにイノベーションを起こすことを常に目指しています。その上で、コロナの影響に関係なく、社員やチームが、在宅勤務を続けるか、オフィスへ出社するか、またはその両方を組み合わせるかなど、柔軟かつ自律的に働き方を選択できるようにするという考え方です。
 このような取組もあり、郵便物を受け取るための出勤、経理関係で紙を扱うための交代での出勤など部署や仕事によっても違いはありますが、本社では、日々の出勤率を10%未満に抑えること、また緊急事態宣言中は夜8時までに帰宅できるよう、7時にはオフィスを退社することを指示しています。
 コロナ禍を通じて、会社のカルチャーの強化という点で、従前より全社で推進しているDiversity, Equity and Inclusion(DEI) 多様性、公平性、包括性への取組にも拍車がかかっていると思います。DEIは私たちにとってコアバリュー(最も重要な価値観)であり、14のリーダーシップ・プリンシプル(行動指針)を通じて、私たちのDNA/カルチャーに組み込まれています。多様な社員が集まり、お客様のために真に独創的なイノベーションを生みだすことを奨励しています。
 コロナ禍において、「一人ひとりの働き方や価値観の違いを理解し、互いに尊重し助け合うことの大切さ」という点でDEIはまさに共通の考え方であり、トップから社員へメッセージを発信しつつ、これからもより深めていきたいと考えています。

 アマゾンジャパン社における社員の自律性を重視する企業文化が、コロナ禍を機により強靭になったという話がとても印象に残りました。コロナ禍の中で、働き方やビジネスのスタイルの変化が求められている企業も多いかと思いますが、アマゾンジャパン社の事例が参考になれば幸いです。