平成29年度時差Biz推進賞
プロモーション部門受賞
東京地下鉄株式会社
受賞理由
東西線及び半蔵門線において、早朝時間帯に臨時列車(東西線3本、半蔵門線2本)を運行するとともに、例年7月第1週まで実施していた「東西線早起きキャンペーン」を時差Biz期間に合わせ、7月31日(月)まで期間拡大で実施。また、東西線早起きキャンペーン時間帯及びピーク時間帯の混雑状況を「駅毎、列車毎、車両毎」に色別で表示した。
一日に平均724万人が利用する東京メトロ。輸送の安全性の向上に取り組むとともに、お客様の視点に立ったサービスの提供に力を入れてきた。「東京を走らせる力」をグループ理念に掲げ、鉄道事業を中心に東京に集う人々の活き活きとした毎日に貢献することを目指す同社は、「東西線早起きキャンペーン」など、お客様の快適性を高める取組を進めている。昨年、お客様にさらなる快適さを提供する大きな機会として、時差Bizに参加したという同社の鉄道本部運転部輸送課 成田喜代志課長補佐、足立茂章課長補佐の両名にお話を伺った。
時差Bizに参加した目的
昨年度の時差Bizを振り返りながら、「“快適通勤ムーブメント”という言葉が印象的でした」と語るのは成田課長補佐。足立課長補佐は、「時差Bizという東京都の取組に参加することで、さらなる混雑緩和に貢献できればと思いました」と語る。
都心部の地下を走る東京メトロの路線のほとんどは朝8時前後から9時前後の通勤時間帯に集中し混雑する。特に東西線は最混雑時間帯1時間の平均混雑率が199%(国土交通省調査 平成28年度)と都内でも有数の混雑路線だ。そんな東西線の混雑を緩和するために平成19年に「東西線早起きキャンペーン」をスタートした同社。好評だったこともあり、その後も仕組み等を改善しながら、現在まで継続して実施してきた。現在のキャンペーンは、事前登録した上で該当する区間で、指定時間に乗車し10時までに下車するとメダルが獲得できる仕組み。メダルを貯めると商品券と交換できるというもので、キャンペーン参加者も年々増えている。例年は7月第1週までの実施だったが、昨年は時差Biz集中取組期間(平成29年7月11日~7月25日)に合わせて7月末まで実施し、時差Bizと連携して混雑緩和に取り組んだという。
なお、同社では中期経営計画「東京メトロプラン 2018」の一環として、東西線における大規模な改良工事を実施するなど、抜本的な対策にも取組中だ。
具体的な取組内容
平成29年度においては、「東西線早起きキャンペーン」実施期間延長だけでなく、時差Bizをきっかけに混雑緩和のために、さまざまな取組を進めたという。その1つが、東西線の西船橋~木場間の各駅の混雑の見える化だ。過去の実績に基づいて混雑する時間帯や車両などのデータを算出し、ポスターにして駅に掲示しホームページで確認できるようにした。また、東西線で「時差Bizトレイン」、半蔵門線では「時差Bizライナー」として臨時列車を運行した。お客様が臨時列車であることを一目でわかるように東西線、半蔵門線とも時差Bizのヘッドマークを掲出した。
「臨時列車を運行するにあたり、相互直通を行っている場合は、乗り入れをしている鉄道事業者との調整が必要で、半蔵門線の臨時列車では、東急電鉄様と綿密な打ち合わせを行ってまいりました」(成田課長補佐)
増発した臨時列車を利用したお客様からお褒めをいただいたときは、臨時列車を設定したことに喜びを感じたという。
なお、鉄道事業者として時差Bizに取り組む同社は、利用者に時差出勤をお願いするだけでなく、時差Biz期間中に本社社員がトライアルで時差出勤に取り組んだ。社員からは「早朝出勤することで仕事の効率もアップした」といった声などが挙がり、その結果平成30年4月から正式に制度としての導入が決まった。
時差Bizに期待すること
今後の時差Bizの取組に向けて、成田課長補佐は「混雑緩和に向けて日々努力していますが、私たち鉄道事業者の力だけでは難しいことを実感しています。2年目の今年、時差Bizがもっともっと大きなムーブメントとなることを期待しております」と語る。時差Bizへの参加を機に、社員からも混雑緩和のための意見やアイデアが出るようになったという。そうした流れの中で、同社は「メトロで朝活」という取組をスタートさせた。早朝出勤を促すために、早朝の時間を有効活用できる場を作っていこうというもので、これまでに英会話レッスンを開催するなどユニークな取組を実施している。また、千代田線の北千住駅と南北線の溜池山王駅にサテライトシェアオフィスを設置し、駅構内で仕事ができる環境を提供していく。
「中長期的な視野に立った列車運行計画や、東京メトロの輸送のあり方を考えていくことが私のメイン業務です。2年後には東京オリンピックが控えていますが、混雑緩和はそこがゴールではありません。それまでに時差Bizを契機とした時差出勤の定着が期待されます。そのために、参加企業をはじめ連携を強くしていく必要があると思います。鉄道会社としては、時差Bizに加え、将来的にはソフト・ハードの両面から新しい対策を推進し、さらなる快適な通勤空間を実現していきたいと思っています。」と足立課長補佐が力強く締め括った。
これからも時差Bizを通した混雑緩和に積極的に取り組もうとする同社の決意が感じられた。
グループ会社での時差Biz取組を目指す
同社は鉄道事業以外にも、駅直結の「Esola池袋」や駅構内の「Echika」などを展開する流通事業、東京メトロ沿線を中心にオフィスビル、ホテル、レンタルスペースなどを展開する不動産事業、中吊りポスター、駅貼りポスターなどを展開する広告事業、光ファイバーサービス、無線LANサービスを展開するIT事業と幅広い事業分野を持つ。また、車両関連の保守業務を行うメトロ車両、物販サービスや駅業務を行うメトロコマースなど、グループ会社も多い。
今年は、東京メトログループ全体で時差Bizの取組を行うことを目指し、グループ情報誌や会議の場を活用して、グループ各社へ時差Bizを周知している。このような取組を通して、鉄道利用者の快適の実現だけでなく、東京メトログループ全社員の快適の実現を目指している。