平成29年度時差Biz推進賞
ワークスタイル部門受賞
日本航空株式会社
受賞理由
ワークスタイル変革の一環として、メリハリのある働き方につなげることを目的に、「時差Biz」に、約1,530名が取り組んだ。本社最上階にカフェを臨時で開設し、7時30分から数量限定でコーヒーを無料で提供し大変好評だった。時差Bizに加え、テレワークやワーケーションの説明を行うワークショップを開催し、約200名の社員が参加した。時差Bizを実施した社員の約8割が実施して良かったと回答し、また、約1割が初めてフレックスタイム制度や時差出勤を経験するなど、柔軟な働き方のすそ野が広がった。
企業理念の冒頭に「全社員の物心両面の幸福を追求する」と掲げる日本航空は、社員が「JALで働いて良かった」と思える企業を目指している。そんな同社は、働き方の柔軟性をテーマに、平成26年からワークスタイル変革に取り組んでおり、テレワークやワーケーションの利用を促進している。時差Bizに参加したのも、社員一人ひとりがさらに柔軟な働き方を考える良い機会になると感じたからだという。そんな同社の時差Bizの取組について、人財戦略部 ワークスタイル変革推進グループ東原祥匡アシスタントマネジャーにお話しを伺った。
時差Bizに参加した目的
「JALで働いてよかった」と思えるような企業でなければ、お客さまに最高のサービスを提供することも、企業価値を高めて社会に貢献することもできない。そうした理念のもとで働き方の柔軟性を追求する同社は、平成26年からワークスタイル変革に取り組み、テレワークの利用促進を進めてきた。その甲斐あって、平成27年度のテレワーク利用2,500件が28年度に5,000件、そして29年度は1万3,000件と倍々で増えている。昨年、柔軟な働き方をさらに社内へ浸透させていくために時差Bizに参加し、時差Biz期間中は混雑する通勤時間帯を避け、8時前出社か10時以降の時差出勤を推奨したという。
「仕事柄シフト勤務の社員が多いので、シフト勤務以外の社員対象でしたが、ほとんどの部署でフレックスタイム制度を導入していたので、時差出勤は特に問題なく多くの社員が利用しました」(東原アシスタントマネジャー)
こうした活動を進めていくことで、社員一人ひとりが働き方について考える機会につながっていくという。ただ、「具体的な行動も大事ですが、重要なのは、時差出勤やテレワーク制を活用することで生じた時間をどのように使うのかです。育児や介護、自己啓発や趣味など、その人に合った時間の使い方を、一人ひとりが真剣に考えることで、物心両面の幸福につながるのだと考えています」(東原アシスタントマネジャー)
具体的な取組内容
時差通勤を推奨する他、時差Biz期間中は本社最上階にカフェを設置して、7時30分から数量限定でコーヒーを無料で提供し、時差出勤を促した。また、テレワークやワーケーションの利用促進のために行っているワークショップで、時差Bizの取組も紹介し社内周知を図った。こうした活動により約1,530名の社員が時差Bizに参加し、参加した社員の約8割が時差Bizに参加して良かったと回答している。また、参加者の1割が今回初めてフレックスタイム制度や時差出勤を利用したという。社員からは、「思っていたほど業務に対しての弊害がないので、今後も活用していきたい」「集中できる時間が確保できて良かった」という声も多く聞かれた。そうした反面、マネジャークラスから上司と部下のコミュニケーション不足が生じるのではという声もあったという。時差出勤やテレワークによって、当然のことながら会社で顔をあわせる時間は減る。そうした点について東原アシスタントマネジャーは、「今は、長い時間会社に居ることが美化される時代ではありません。マネジメントのやり方も変えていく必要がありますし、何よりも一人ひとりが意識を変えていくことです」と力強く語った。
時差Bizに期待すること
「時差Bizは、これからの働き方を考えていく良い機会だと思います」と言う東原アシスタントマネジャーは、今年も時差Bizが社員の意識変革のきっかけとなることを期待しているという。
テレワーク利用者は、会社でやるべき仕事、リモートの環境でもできる仕事など仕事内容によって棲み分けをするなど、自分の生活スタイルに合わせた利用をする人が増えているという。さらにワーケーションの利用者も増えている。ワーケーションとは“ワーク”と“バケーション”を組み合わせた言葉で、休暇中でも一時的にリモートで仕事をすることを認める制度だ。
「私も今年のゴールデンウィークにシンガポールでワーケーションを行いました。連休の間に出社日があり、突発的な業務が入ってしまってもワーケーションの利用を想定することで、長めの旅程を計画できました。結果的に、気分的にも満足した状態で休み明けからの仕事にも取り組めました」(東原アシスタントマネジャー)
ワークスタイル変革を進める同社は、年間総労働時間1,850時間を目標にしている。これは、年次有給休暇を20日間取得し、月の残業時間が約4時間で実現できる数字だという。まだ、昨年度は達成していないが、かなり近い時間数になってきているという。また、BCP(事業継続計画)の観点も絡めて、部署全体で全員が出社しない日をつくるといったことを、トライアルで行うなど、社員から働き方に対する意見やアイデアも出るようになったという。柔軟な働き方は同社の社内全体に確実に拡がってきているようだ。
業務プロセス改革
社員一人ひとりがライフスタイルに合わせた働き方を考え、実現してきた結果、「夜遅くまで残業している人はほとんどいない」「夜遅くのメール送信が激減した」など、数年前とは職場環境が大きく変わっているという。そうした動きはさらに活発になっている。ワークスタイル変革推進グループ内に業務プロセス改革チームができ、各部門、部署と話し合い、その部署に合った効率化策を考え、ITツールやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを活用して実現に向けて努力を重ねている。チャレンジ精神を持ち、自分たちの個性を活かした業務プロセス改革に全社を挙げて積極的に取り組んでいる。