平成29年度時差Biz推進賞
ワークスタイル部門受賞
株式会社アスネット
受賞理由
本社勤務者を対象に、出社時間を8:00~10:00までの間とする時差出勤を実施。セキュリティ教育等を行い出勤時間の事前申告を不要とすることで、時差出勤のメリットを最大限に引き出し、より柔軟で利用しやすい内容とした。実施後アンケートから、制度導入への賛成者は90%を上回り、通勤ストレス軽減による生産性の向上、時差出勤による時間の有効活用が個々の満足度に繋がっている事が明らかになった。この結果から社内勤務者に対する時差出勤制度導入が決定し、今後は対象者を広げるための検討を行う。
生活・企業活動に欠かすことのできないシステム開発をはじめ、官公庁、独立行政法人のインフラ構築、運用、保守など、幅広いソリューションサービスを提供するアスネット。そんな同社は、平成13年の設立当初から、社員一人ひとりのスキルアップや成長を支援する体制を整え、常に向上心と目標を持って楽しく働ける環境づくりを目指している。昨年、時差Bizの取組をきっかけに、時差通勤をトライアルで導入し大成功を収めたという。その成功の秘訣を阿部一尋代表取締役と総務・人事部の小甲由美リーダーに伺った。
時差Bizに参加した目的
社員の働きやすい環境づくりに力を入れる同社は、常に社員の声に耳を傾けているという。お客様先で開発業務に取り組む社員も多い同社だが、2カ月に1度全社員が本社に集まり、仕事の進め方や社内制度、レクリエーションといった、様々な事柄に対してディスカッションを行っている。そのディスカッションで議題となり全社で話し合った結果、2年前から「半休制度」が導入された。そして、最近ではフレックス制度が導入できないかという声が上がっていたという。そんな時に「東京都情報産業協会」の総会に出席し、時差Bizの取組を聞いた阿部代表。時差Bizの趣旨に興味を持ち、すぐに社内に持ち帰ってアンケートをとったそうだ。すると、多くの社員から賛同があり、時差Biz期間に時差出勤をトライアルで導入することにしたのである。
「時差出勤を導入するのであれば、そのメリットを最大限に活かすために、思い切って事前申告不要にしよう、と決意しました」(阿部代表)
しかし、社内からは事前申告不要を心配する声も上がった。「通常の定時である9:00になっても一人も出社していないということもあり得るわけです。それは対外的にまずいのではないかといった声がありましたね」と小甲リーダーは言う。
しかし、事前アンケートの結果、早く出社して早く帰りたい人、ゆっくり出社したい人など、出社時間のバランスが良かったこともあり、阿部代表の試案通り、事前申告不要で時差出勤をスタートすることが決まった。
具体的な取組内容
時差出勤をスタートさせるに当たって、最も心配したのは、意外にも鍵の開錠・施錠の問題だったという。これまでは役職者のみが鍵を持っていたが、社員全員が最初に出社、最後に退社となる可能性がある。そこでセキュリティ教育を徹底し全社員に鍵を貸与した。
「最初は鍵のかけ忘れなどを心配しましたが、余計な気苦労でした」(小甲リーダー)
事前申告不要で自由度が高いことで、朝起きたときに自身の体調が悪かったり、お子さんや家族の体調が悪いといったときにも臨機応変に対応できるので、結果はとても好評だという。また、交通障害や天候不順によって遅刻になるといったストレスもなくなったという。そして何よりも社員一人ひとりが、自分の一日の時間の使い方、働き方を自分自身でスケジューリングしているという意識が生まれ、主体的に仕事を進めるようになったという。
「時間の意識がしっかりしてきたことによって、余計な残業が減りましたね」(阿部代表)
事前申告不要だと、チームメンバーに聞きたいことがあるのに、いつ出社するかわからない……など、社員同士のコミュニケーションに支障がでるのではといった不安もあったそうだが、それも取り越し苦労だった。早く帰るときは、都度その旨をチームメンバーに伝えるなど、チーム内のコミュニケーションが時間を意識して進められるので、却って仕事が効率的に進むようになったという。
時差Bizに期待すること
昨年の時差Biz期間にトライアルで導入した時差出勤だが、実施後のアンケートで、仕事への影響はない85.71%、制度の導入に賛成92.86%という結果となり、昨年秋から時差出勤制度が正式導入された。
「現在は本社勤務社員のみが対象なので、お客様先で仕事をしている社員に対して何か制度を考えるなど、対象となる社員の拡大が今後の課題ですね。そうした自社の状況も含め、時差Bizに参加する企業が増えて、もっと大きな取組になることを期待しています」(小甲リーダー)
また、今後は、在宅勤務の利用促進なども検討しているという。現在は育児休暇と併せた在宅勤務など、必要に駆られ制度を利用した社員はいるが、将来に向けて、全社員が日常的に在宅勤務を活用できるようにしたいという。
「私たちの仕事は、何時までに何を仕上げるかが重要で、成果物が評価の対象となります。仕事が何処でも効率的にできる環境があれば、必ずしも会社に来なくていいのではないでしょうか」(阿部代表)
社員一人ひとりが働きやすくなるためには何が必要かを、社員自らが発信していくこと。そうした発信や要望を吸い上げて、可能な限り場を提供するのが会社の役目と考える同社は、ルールで縛り過ぎない、社員の能力を活かす環境づくりを常に意識しているようだ。
常識に縛られない発想で
仕事も新しい社内制度の導入なども、まずはやってみることが大切だと考えている同社は、「昔からそうだから」「前例がないから」といった考え方は一切せず、常に常識にとらわれずチャレンジしていく。そうした企業姿勢が形となったのが、「Meeting Force」である。「Meeting Force」はPDFやJPEGなどの既存ファイルに手軽にメモができ、それを複数の端末でリアルタイムに同期共有できるという、コミュニケーションサポートアプリ。8つの企業・団体が集い、それぞれの得意分野を生かし協力しあって生まれた画期的なアプリだ。社内外に向けた、こうした常識にとらわれない姿勢が同社の魅力の一つだろう。