平成30年度時差Biz推進賞
プロモーション部門受賞
東京地下鉄株式会社
受賞理由
早朝時間帯に4路線で臨時列車を運行(東西線・半蔵門線・日比谷線・副都心線)。「東西線早起きキャンペーン」(通年)を実践したほか、夏の時差Bizに合わせ8月10日まで期間を拡大して豊洲駅混雑緩和キャンペーン「とよすプロジェクト」を行った。そのほか、東京メトロアプリにおける平日の全時間帯、全路線の列車の混雑情報の提供(有料列車および綾瀬駅~北綾瀬駅間を除く)、夏の時差Biz中の「メトロ de 朝活」の開講、「サテライトオフィスサービス」の実証実験といった、オフピーク通勤を促進する取組を幅広く実施した。
都心部地下を走り、多くの通勤客の重要な「足」となっている東京メトロ。そのほとんどの路線が、朝8~9時及びその前後の時間帯に集中して混雑する。その混雑の緩和を目指し、同社ではこれまでも積極的に各種施策を実施してきた。駅の整備・改良といったハード面はもちろん、通勤客が楽しめるキャンペーンなどソフト面でも工夫を凝らし、快適な通勤・通学の実現に向け努力を続けている。その詳細な内容について、鉄道本部営業部旅客課に所属する梅川勇太課長補佐、西崎絋一郎様の両名から話を伺った。
時差Bizを続ける理由
最混雑時間帯1時間の混雑率(木場→門前仲町)が199%(国土交通省調査 平成29年度)にのぼるという東西線をはじめ、多くの混雑路線を抱える東京メトロは、時差Bizがスタートする以前、平成19年から「東西線早起きキャンペーン」を行うなど、通勤混雑の緩和に対して積極的な取組を実践し続けてきた。
「駅の改良工事などハード面での対応も進めていますが、完成までには相応の時間がかかります。そこでソフト面の取組としてキャンペーン等を行うことで、少しでも混雑緩和につなげていこうと考えました」(西崎様)
しかし、混雑緩和は一社だけでは簡単に実現できない。特に時差通勤を「自分事」とする意識の醸成などは、その最たるものと言えるだろう。そのような中都がスタートした時差Bizは、多くの企業が参加することで徐々にムーブメントが形成されている。そこに参加し続けることで、通勤するお客様からの協力も得ながら、鉄道事業者として列車や駅を快適に利用してもらえるよう今後も力を尽くしていきたい――それが、東京メトロの現在の姿勢だ。
具体的な取組内容
通年で実施している「東西線早起きキャンペーン」は、東西線及び東葉高速線内の指定駅でキャンペーン時間に乗専し、専用端末で事前登録したICカードを使用することで、メダルが獲得できる仕組みとなっている。メダルを貯めるともれなく商品券がもらえるほか、今年度はWチャンスに力を入れ、旅行券など豪華プレゼントが抽選で当たるように進化させた。そのほか、月50メダル以上集めた人に対する月代わりでのプレゼント(抽選)もスタート。いつからでも始められ、継続的にご参加いただけるキャンペーンとして設計し直した。このキャンペーンには約9,700人が継続参加、およそ3%の混雑緩和効果があったとのことだ。
また、平成30年4月からは有楽町線豊洲駅でも「とよすプロジェクト」を実施。当初7月末までと予定していた開催期間を、時差Biz期間に合わせて8月10日まで延長した。東西線でのキャンペーン同様、ICカードを用いて、メダルを獲得していくというスタイルだが、こちらはメダルを「オフピークメダル」「ルートメダル」の2種類用意。最混雑時間帯前後の指定時間帯に豊洲駅で下車した場合だけでなく、駅構内で比較的ご利用の少ないルートを通ることでもメダルが獲得できるよう工夫した。結果、参加者数は1日当たり約4,600人(キャンペーン対象時間帯における豊洲駅降車客の約1割)となり、最混雑時間帯からキャンペーン指定時間帯へと2%程度の通勤客がシフトするという成果が得られた。特にルートメダルの効果は大きく、比較的ご利用の少ないルートの利用者は約10%増加し、駅構内の混雑緩和にも大きく貢献した。
時差Bizに期待すること
東京メトロでは、冬の時差Bizに合わせて通年で実施している「東西線早起きキャンペーン」での特別なキャンペーンや再度の「とよすプロジェクト」を実施している。特に「とよすプロジェクト」では、これまで専用端末を通さないと獲得できなかったメダルを、ICカードを改札機にタッチするだけで貯められる仕組みに変更。賞品も種類を増やし、オフピークの通勤がさらに「楽しみ」になるよう、工夫を凝らしていく予定だ。そのほか、今年度も実施した、東西線の混雑する時間帯等の情報を東京メトロアプリやパンフレット、駅構内ポスターで展開するという混雑の「見える化」も促進して、その緩和に努めていくという。
「冬の時差Bizでは、寒さのため早朝出勤を辛く感じる方もいるでしょう。とよすプロジェクトでは、ラッシュ時間帯以降もキャンペーン対象時間帯に含みます。近年では、早朝出勤だけでなく、少し遅い出勤を勧める制度を持つ企業も増えていますから、そんな方々を中心に『遅めの出勤』にも目を向けて欲しいですね」(西崎様)
「今回の時差Bizで実践した『お客様が利用する駅構内のルートを変更していただく』といったような新しい取組を常に考え、実行し続けていきたいですね。また、今後は豊洲駅だけでなく、他の駅でも時差通勤促進キャンペーンを行うなど、時差Bizの拡大に資する施策を検討していきたいと考えています」(梅川課長補佐)
そのうえで、時差Bizを通して社会全体が混雑緩和に向けて動いていくムーブメントが、さらに加速することを期待していくという。
オフピーク通勤の新たなきっかけづくりとして
東京メトロでは、路線・駅におけるキャンペーンとは異なる形のオフピーク通勤施策も複数展開している。その一つが「メトロ de 朝活」。平成30年4月からスタートしたこの試みは、時差Biz期間中も継続して行われた。出勤前の30分間で、コンパクトにまとめられた多彩な講座を受けられるだけでなく、軽食とドリンクもついて一回の参加費は2,300円。その手頃さで、利用者からも好評を得ることができた。スタート当初はEchika fit 永田町だけでの実施だったが、8月からはEchika 表参道、9月からは大手町駅に直結する大手町フィナンシャルシティにも会場を設けるなど、徐々に活動を拡大しつつある。
また、千代田線北千住駅、南北線溜池山王駅において、サテライトオフィスサービスの実証実験も開始。平成30年6月から夏の時差Bizを含める9月末までを実施予定としていたこの実験は、平成31年3月31日まで期間を延長するとともに、東西線葛西駅、有楽町線池袋駅へと設置場所も増え、取組の広がりが伺える。このように同社では、次々と新しい取組を展開し、様々な人にオフピーク通勤の新たなきっかけを提供し続けている。