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インタビュー

平成30年度時差Biz推進賞-ワークスタイル部門受賞

平成30年度時差Biz推進賞

ワークスタイル部門受賞

東京急行電鉄株式会社

受賞理由

鉄道会社として従前より分散出社に取り組んでいたが、近年、従業員の働きやすさと生産性向上を目的に、スライド勤務やサテライトオフィス勤務など、働く時間と場所の自由度を高める取組にも注力。今回の時差Bizでは、分散出社の中でも生産性向上の観点から、特に「朝型勤務(アーリーワーク)」を積極的に推奨するため、早朝出社した社員にセルリアンタワー東急ホテルのブレッド等を提供するなど、恒常的施策に加えキャンペーン施策を実施した。また、時差Bizをより多くの会社が実施するよう、都内に事業所を有する当社連結子会社約40社に時差Biz実施を呼びかけた結果、スライド勤務導入など全社が時差Bizに参画するに至った。

東急電鉄は初年度から時差Bizに参画。鉄道利用者の快適な時差通勤を応援する取組を行い、平成29年度時差Biz推進賞(プロモーション部門)を受賞した。鉄道事業者としての取組だけでなく、自社の社員向けの取組も行っていたが、今年はさらに内容の充実を図ったという。
社員の働きやすさと生産性向上を目的に、働く時間と場所の自由度を高める取組に注力している同社は、時差Bizへの参画をワークスタイル・イノベーションの一環と位置付けている。そんな同社の時差Bizの取組について、人材戦略室労務厚生部統括部長の下田様、同部主事の髙橋様、事業開発室NewWork担当プロジェクトサブリーダーの野﨑様から話を伺った。

時差Bizに参加した目的

人材戦略室 労務厚生部 統括部長 下田 雄一郎様
人材戦略室 労務厚生部
統括部長
下田 雄一郎様

同社が時差Bizに参加する目的は大きく2つあるという。1つは鉄道事業者として安定・安全輸送を実現するためにオフピーク通勤を推奨、実現すること。そしてもう1つは自社の社員に対しての働き方改革を推進していくことである。
「“ワークスタイル・イノベーション”を全社員向けに進めており、その軸となっているのが時間や場所などを自分の職務や環境に合せて選択できる“Smart Choice(スマートチョイス)”です」(下田統括部長)
所定の時間に所定の場所に出退社するという従来の働き方から、時間や場所にとらわれない働き方へ変えていくことで、多様な職務や個人の環境に合せた生産性の高い業務を実現していくのが目的だ。この取組は鉄道事業者として進めている分散出社にもつながっていく。
「さらに、昨年と大きく違うのは、沿線にある都内の連結子会社約40社にも声をかけて時差Bizを実施したことです」(髙橋主事)
時差Bizは参加企業が増えることで、より大きなムーブメントになっていく。そうした点を鑑みて、本社と連結子会社が一体となり、より多くの人の参加を促すことで、点ではなく面としての広がりを持たせてムーブメントをつくった。

具体的な取組内容

事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 サテライトシェアオフィス事業 「NewWork」担当 プロジェクトサブリーダー 野﨑 大裕様
事業開発室 プロジェクト推進部
イノベーション推進課
サテライトシェアオフィス事業
「NewWork」担当
プロジェクトサブリーダー
野﨑 大裕様

本社最寄り駅となる渋谷駅は朝8時頃に混雑のピークを迎える。そのため、その時間よりも前の7時30分出勤を朝型勤務(アーリーワーク)と称して積極的に推奨した。時差Biz実施期間は、アーリーワークを行った社員に、連結子会社が運営するセルリアンタワー東急ホテルのブレッドやスムージーを提供し、社員から好評を得たそうだ。
さらに、自社サテライトシェアオフィス「NewWork」の利用促進を図った。午前中に自宅近くの「NewWork」で仕事をして、混雑が落ち着いた時間帯に出社するというものだ。それによって仕事の効率が上がったという声が聞かれたという。
「効率という面だけでなく、社員のライフスタイルに合わせた働き方の実現という点でも好評です」(野﨑プロジェクトサブリーダー)
例えば、朝、子どもの具合があまり良くないときなど、保育園に預けて近くの「NewWork」で仕事をしていれば、万が一保育園から連絡があってもすぐに対応できるので、安心して仕事に取り組むことができる。「私も未就学の子どもがいるので、とても助かっています」(髙橋主事)
こうした朝型勤務やテレワーク活用を進めるために、「スマートチョイス推進ウィーク」を実施するなど、社員への浸透を図っていった。その結果、時差Biz期間中の時差出勤実施率は約80%、サテライトシェアオフィスの午前中利用者は約165%増(対前月比)と、大きな成果を収めた。
また、連結子会社に向けては時差Biz開始前の5月に「連結人事コミッティ」を開催。それぞれが出来る範囲で出来ることを行っていくことを確認し合うなど、グループ全体で協力体制を整えていった。

時差Bizに期待すること

人材戦略室 労務厚生部 労政課 主事 髙橋 浩平様
人材戦略室 労務厚生部 労政課 主事
髙橋 浩平様

全社的な協力体制という点では、人事、鉄道、総務の三位一体での取組も大きい。働き方を考える人事部門、混雑緩和施策を実施する鉄道部門、サテライトシェアオフィスを含めた職場環境を担当する総務部門がしっかりと連携していくことで、相乗効果を生み出している。こうした社内体制を整え先に見据えているのは、恒常的に時差Biz実施を促進することであり、「ワークスタイル・イノベーション」の実現である。
「実は、現在導入しているサマータイムやノー残業デーも今後廃止していきたいと考えています」(下田統括部長)
夏だから早く出社する、ノー残業デーだから定時で帰るということではなく、それが日常的かつ自主的となることが目的である。社員一人ひとりが創造性を発揮して業務の効率化を実現するために、自分の仕事やライフスタイルに合わせた働き方を考え、選択していくことがあたりまえになることを目指しているのである。時差Bizの取組もそこに向けた一つの施策であるが、多くの企業が参加するムーブメントであり、その影響や効果は大きいという。
「今年は冬にも時差Bizが実施されますが、夏と違って日の出は遅いですし、厚着が原因の混雑も起きます。そこでどのような施策が有効なのか、どんな意見がでるかなどを検証していくことが大切だと考えています」(髙橋主事)
連結子会社を含めて恒常的な働き方改革を進める同社は、時差Bizがさらに大きなムーブメントとなることを期待している。

働く場所の自由度拡大を支援する「NewWork」

サテライトシェアオフィス「NewWork」吉祥寺店
サテライトシェアオフィス「NewWork」吉祥寺店

働く場所の自由を推進する同社ではサテライトシェアオフィスの充実に注力しており、2016年5月から法人向け会員制サテライトシェアオフィス事業「NewWork」を開始した。自社路線の沿線はもちろん他の沿線にも直営店舗や提携店舗を設置し、その数は全国約120カ所、会員数はおよそ7万名に及ぶ。「テレワークと言われても、自宅は子どもがいるなど環境的に難しい」といった社員も多く、そうした社員に対して、自宅近くに事務所環境を設けることでテレワークを推進していく。また自社だけでなく会員企業に利便性の良い快適な執務空間を提供することで、事業としての拡大も目指している。
サテライトシェアオフィスは都内周辺だけではなく、全国に展開しており出張や帰省時などに活用するケースも増えている。また、自社の会議やお客様との打ち合わせといった会議室利用も増えるなど、色々な形でサテライトシェアオフィス「NewWork」の活用が進んでいる。今後に向けてさらに利用率を高めていくために、会員企業の方を集めた「NewWork EXPO」を11月に開催したという同社。サテライトオフィスの利用、活用事例などを紹介している。これからのニーズに合わせた店舗展開を進め、拠点数の拡大はもちろんオフィス環境の拡充に取り組んでいる。