平成30年度時差Biz推進賞
ワークスタイル部門受賞
CJジャパン株式会社
受賞理由
平成29年より独自の働き方改革として「ワークスタイル改善」を実施。平成30年からは月4回の時差通勤を実践していたが、時差Biz参加とともに、7・8月については最大1.5時間の時差勤務を回数制限なしで試験実施した。結果、それまで20%台であった時差通勤取得率が、時差Biz期間中には90.1%と大幅に増加。社員アンケートでは94.6%が時差勤務継続希望と回答した。今後は段階的な時差勤務の拡大だけでなく、新勤怠システムの導入など、時差勤務の安定運用が行える環境を整えていくことに努める。
「健康、楽しみ、便利さを創造するグローバル生活文化企業」というグループビジョンを礎に、食品や食品素材、バイオ事業を展開しているCJジャパン。同社は独自の働き方改革として「ワークスタイル改善」の名のもとに“ワークライフバランス”“女性活用促進・ダイバーシティ”“定着促進”“人事制度改革”の4分野の施策を実施してきた。そのうち“ワークライフバランス”分野の施策として、平成30年2月からスタートしたのが時差勤務の導入である。時差Biz期間中は、時差勤務利用者数は3倍以上と大幅に上昇したという。時差Biz参加を通して得た成果について、人事部の柏木理恵子部長代理よりお話を伺った。
時差Bizに参加した目的
「平成29年から時差Bizがスタートしていたことは知っていましたが、その時点で、当社には参加に資する制度が整っていませんでした。しかし、翌年2月に時差勤務制度がスタート。トップとも相談し、時差Bizに参加することを決定しました」(柏木部長代理)
CJジャパンの時差Biz参加の理由は非常に明確。時差Biz参加を通して、自社のワークスタイル改善がさらに推し進められていくことを期待したからだ。東京都が多くの企業とともに推進しているムーブメントに乗ることで、自社の力だけでは成しえない成果が得られるのではないかと考えたそうだ。
新たにスタートしたCJジャパンの時差勤務制度は、当初、月に4回のみ定時(9:00~18:00)の前後最大1.5時間、30分刻みで始業時間をずらせるというものだった。その制度を時差Biz期間含む7・8月の2カ月間のみ、試験実施として利用回数制限無しへと拡大した。
「その背景には、時差勤務の利用回数をさらに増やして欲しいという、従業員からの強い要望がありました。会社側が制度を一方的に推進するというだけではなく、彼らの声に応えるという意味でも、時差Bizは当社にとってまたとないチャンスになったのです」(柏木部長代理)
具体的な取組内容
今年度の夏の時差Biz期間がスタートする前の6月に、全従業員に向け、時差Biz参加について、およびその際の時差勤務制度の変更等についての説明会を開催。従業員の理解を深めるところから、CJジャパンの時差Bizはスタートした。その後、回数無制限の試験的時差勤務を開始。その反応はすこぶる良く、従来は20%台の利用率しかなかったものが、7月時点で63.8%、8月時点で90.1%と急速に伸びた。また、時差Biz実施後の社内アンケートの結果も好評で、「今後も時差勤務制度の継続を希望」との回答が94.6%にも上ったという。
しかし、その一方で見えてきた課題もあった。管理者側からすると業務管理が煩雑になることから、時差Biz終了後もこのまま制度拡大を続けるのは時期尚早ではないかとの声が上がったのだ。
「そこから約1カ月間議論を重ね、まずは10月の時差勤務の利用上限を月8回に、11・12月は1ヵ月単位で従業員が選択した時間に固定した時差勤務を行い、かつイレギュラーな場合に備え月4回勤務時間をずらせる制度へと段階的に変化させていきました」(柏木部長代理)
つまりCJジャパンは、時差Bizをきっかけにスタートさせた時差勤務制度を、自社のスタイルにもっとも「合う」形で運用し続けていこうと現在も論議を重ねている最中なのである。
時差Bizに期待すること
「当社近くの大通りは、オリンピックのマラソンコースに設定されています。オリンピック・パラリンピック期間は今まで以上に街も、交通機関も混雑するでしょう」(柏木部長代理)
時差勤務をはじめ、働き方の制度を自社に合うよう工夫し、定着させていくことは急務だと語る柏木部長代理。そのためCJジャパンは、次回冬の時差Bizにも参加し、ワークスタイル改善をより具体的な形で進化させていきたいと考えている。その際には、夏の時差Biz期間に判明した、勤怠管理の煩雑さを解消するために導入を決定した新たな勤怠システムも、しっかりと活用されるはずだ。
「当社のように100人規模の企業は、新しい人事制度導入に慎重な側面もあります。しかし、東京都が主導して、企業も多数参加している時差Bizをきっかけにすれば、社内の同意も比較的得やすい。また、今回時差Bizで賞をいただけたことが、制度推進の大きな原動力となります。今後もワークスタイル改善を推し進め、中小企業であっても社会の流れを変えるムーブメントに参加できるのだと示していきたいと考えています」(柏木部長代理)
新しい制度を実践し、不具合があればそこを修正、変化させていけばいい。それができるのは小回りの利く企業規模のメリットだと柏木部長代理は語る。CJジャパンはそのフレキシブルさを最大限に活用して、今後も進化を続けていくだろう。
自らの「最高」を求めて動く、それが独自の「Only One」
CJジャパンが属するCJグループの経営哲学の中心には、「Only One」の言葉がある。これは最初・最高・差別化された価値を創造するという意味を示す。自社サービスや商品でこの「Only One」を体現するのも大切だが、「人事等においてもその重要性は変わらない」と柏木部長代理は語る。
「他社がやっているから追随してそれを行うのではなく、誰もやっていないことでも、自分たちが体現できる『最高』を実践していこうという気持ち。それがグループの中核をなしているのです」
それが結果的には企業の成長につながり、ひいては優秀な人材を獲得することにもつながっていく。このような形で企業としての独自性を出していかなければ、今後の企業競争にも勝つことはできない。だからこそ、チャレンジを厭わず、トライ&エラーを繰り返してでも進化を続けていこうとしているのだという。
「幸い、トップとも密に対話ができる環境があります。それはある意味、新しいことを始めやすい状況でもある。制度改革においても、人事戦略においても、非常に歓迎すべき状態といえるのだと思います」