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インタビュー

平成30年度時差Biz推進賞-ワークスタイル部門受賞

平成30年度時差Biz推進賞

ワークスタイル部門受賞

コクヨ株式会社

受賞理由

社員が働くことにワクワクしながら多様な働き方を継続的に考えていく機会として、「ワクワク、スマートワーク」をテーマに掲げ、フレックスやテレワークを実践。3か月間、個人や部門単位で255人が参加し、「仕事の内容に合わせて、自律的に時間と場所を選択して働くこと」や「上司と部下の相互信頼性の高いコミュニケーションの実現」を目指した。活動促進のため、朝食提供や参加者コミュニティ形成なども実施。今後、参加者の行動記録データをもとに効果測定を行い、組織としてスマートワークを実現するための課題抽出につなげていく。

文房具やオフィス家具の製造・仕入れ・販売だけでなく、働く環境やオフィス空間の提案も行い、快適な「働く」を広く提供し続けているコクヨ。自社においても快適な「働く」を実践するため、さまざまな取組を行っている。平成27年にはコアタイムなしのフレックスタイム制や在宅勤務などの制度をスタートさせ、社員に対してその活用を勧めてきた。しかし、制度だけが整っていても人は動いてはくれない。そこで同社は時差Bizを追い風に、社員一人ひとりが自らの働き方を考えるよう促進していった。そのための取組とは、いったいどのようなものだったのか。人事統括ユニットリーダー赤木様と、勤労厚生ユニット藤井様から話を伺った。

時差Bizに参加した理由

経営管理本部 人事総務部 人事統括ユニット リーダー 赤木 由紀様
経営管理本部 人事総務部
人事統括ユニット リーダー
赤木 由紀様

時差Bizに先駆けて、コアタイムなしのフレックスタイム制や在宅勤務制度などを取り入れてきたコクヨだが、特にフレックスタイム制に関して、使いやすい部署、それほどでもない部署にわかれてしまっていたという。そんなとき、折良くスタートしたのが、東京都が進める時差Bizだ。同社はこのムーブメントに参加することで、今ある制度を全社員が積極的に活用するよう意識付けできるのではないかと期待した。
「働く時間や場所をいかに柔軟化しても、『制度があるだけ』では人は動かず、働き方も変わって行きにくいというのが実感でした。ならば時差Bizと連携することで、働き方を変えようという社内の気運を高めたいと考えたのです」(藤井様)
そしてそこにはもう1つ、上司と部下との相互信頼に基づいた効率の良いコミュニケーションの実現という目的も備わっていた。フレックスや在宅勤務を活性化するなら、さらに密なコミュニケーションの構築も欠かせないと考えたからである。
「目指したのは形だけではない、実のある働き方の改革。それは私たちにとって、一種のチャレンジになりました」(赤木リーダー)

具体的な取組内容

東京品川SSTオフィス
東京品川SSTオフィス。
コミュニケーションのハブとなる「POOL」エリアは、
多目的に活用される。

夏の時差Biz期間を含む、7月後半から10月後半までの3か月間、「ワクワク、スマートワーク」プロジェクトを実施し、フレックスタイム制やテレワークを活用しながら働くことにチャレンジした。この取組に参加したのは、社員公募100人、部門単位(9部門)155人。プロジェクト参加者には、各々行動記録を取ってもらうこととしたが、これは「のちに制度をさらにブラッシュアップしていくため、実際にどんなことが起こり、どんな効果や問題点が生まれるのか浮き彫りにしたかったから」だと赤木リーダーは語る。
このプロジェクトを推進するため、同社が実施した取組の1つは、7月25日から8月10日の毎水曜・金曜7:30~8:45に朝食(サンドイッチと野菜ジュース)を提供したこと。「ご褒美 Breakfast キャンペーン」と名付けられたこの取組は、早朝出勤&早帰りを推進するための試みだった。結果として、思った以上に反響は大きく、「朝食をとりながら他部門の人とコミュニケーションが取れて良かった」「朝食を食べる習慣ができ、健康にも良かった」などの声が聞かれたという。
加えて、SNSを活用したプロジェクト参加者の情報交換コミュニティを立ち上げて、主に参加メンバー間の交流も深めていった。

時差Bizに期待すること

経営管理本部 人事総務部 勤労厚生ユニット 藤井 加奈子様
経営管理本部 人事総務部
勤労厚生ユニット
藤井 加奈子様

「3か月のプロジェクト終了後も、フレックスについては引き続き推進し続けています。今回の部門参加者からも、『積極的に活用をとの呼びかけがあったため利用者が増え、自分も気兼ねなく制度を利用できた』との声が聞かれ、プロジェクトが成果につながったと感じています」(藤井様)
また、現時点では介護や育児などの理由がある社員に限って利用できる在宅勤務も、将来的に対象範囲を広げていけるよう検討中であるという。
時差Bizに対しては、「一企業では成し得ない形で機運を醸成できるので、今後も継続し続けて欲しい」と期待する。さらに「時差Bizは混雑緩和だけでなく、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の観点からも有効に働くと感じます」という赤木リーダー。事実、今年は各所で台風被害があったが、フレックスやテレワークを時差Biz期間中に経験していたため、スムーズに対応することができたのだそうだ。
時差Bizの経験を応用し、広く働き方改革につなげていく。これからも、そんな形でコクヨの快適な「働く」を目指す道のりは続いていくだろう。

コミュニケーションと生産性の向上を目指して

フリーアドレスの東京品川SSTオフィスで、個人の執務内容に合わせ思い思いの場所で働く同社社員
フリーアドレスの東京品川SSTオフィスで、個人の執務内容に合わせ思い思いの場所で働く同社社員

コクヨの東京品川SSTオフィスには、壁がない。およそ1,460坪の広さがワンフロアで、フリーアドレス。基本的にはどこで仕事をしても問題ない。
「以前は複数のフロアに部署が分かれて仕事をしていました。ただこの状態だと、フロアを超えて社員同士が頻繁にコミュニケーションをとるのは難しい。そこでオフィスの移転を機にワンフロア化をおこない、人やコミュニケーションの流動化を実践することはできないか、ということをチャレンジしてみたのです」(赤木リーダー)
とはいえ、制度同様「場」をつくっただけでは人は思うように動かない。そこでワイン好きを集めたイベントや、パパママランチ会などを開催し、気軽に社内コミュニケーションが取れるきっかけづくりなども行った。現在では、自主的に部署を超えた交流が行われている。また、時間の経過とともに、個々の社員がその日の業務に応じて、「みんな」といるか、「一人」でいるかを選択して自身の業務する場所を決めるようにもなったという。
そもそも、オフィスをワンフロアにしたことの根本的な目的は、業務について自律的に考え、上司ともうまくコミュニケーションをとりながら成果を出していく仕組みづくりにあった。その先には、「自分で自分の働き方をマネジメントできる社員」を育てていきたいとの思いがある。