平和不動産株式会社 様
インタビュアー: まず、平和不動産の沿革について教えていただけますか?
平和不動産: はい、平和不動産株式会社は、1947年に戦後の証券取引所再開時にGHQの命令により証券取引所から分離しまして、その施設管理を目的としまして設立されました。東京都中央区日本橋兜町に本店を構えています。主な事業領域は「再開発事業」、「ビルディング事業」、「アセットマネジメント事業」の三つで、社員数は約100名です。全国の主要都市でビル賃貸事業を展開しており、東京証券取引所プライム市場に上場していますが、上場企業としては非常に少人数の規模の企業です。
私たちは、主たる事業領域においてオフィスビルや商業施設の開発・運営を中心に様々な事業を展開しており、常にお客様のニーズに応えるための革新的な取組を目指してきました。

インタビュアー: さて、東京都が推進するスムーズビズに関して、平和不動産さんの取組について教えてください。
平和不動産: 実は当社も、以前は典型的な古き日本の企業で、永らく定時を午前9時から午後5時とする勤務の体制が続いておりました。
しかしながら、昨今の働き方改革が叫ばれる中で、社員のニーズも大きく変化して多様化してまいりました。
その中でこれは一例ですが、子育て中の社員から、朝夕の保育園の送り迎えがあるとか、介護中の社員からは、デイサービスの送迎がある。また、高年齢の社員からは、なるべく通勤ラッシュを避けて早く通勤したい。若手の社員からは、自分の時間をもっと確保したいなどといった声が聞こえてくるようになりました。
とはいっても、これらの要望、希望については、今までの午前9時から午後5時の勤務体制の中ではなかなか応えることが難しいというのが現実で、実態としては半休取得するか、遅出、早退の届を出して時間をずらすという方法以外にはなかなか対応策が見いだせなかったという状況でした。
そうした状況の中、当社事業部の中に「街づくり、再開発」を担当、推進していく部署がございまして、そちらの部署では仕事柄、早朝や夜に開催するイベント、ミーティング等が徐々に増加して来まして、今までの定時勤務体制の中でそれらに対応しているとそれが長時間労働につながるのではという懸念が出始めました。
そこで2017年から、まずこの部門を対象にして、「時差通勤制度」を導入してみました。さらに2020年にその結果等を踏まえまして、かねてより検討しておりました「フレックスタイム制度」と「在宅勤務制度」、「テレワーク制度」を、新型コロナウイルスの感染拡大の時期でもありましたので、思い切って前倒しで導入してみました。
同時に仕事環境を整える必要も感じ、従来、紙ベースで行ってきた稟議書、各申請書、会議資料等につきましても、どこからでもリモートで仕事ができるようにモバイルPC化、各種システム導入の環境整備を実施しました。ここから働き方が大きく変化したと考えています。
さらに、2022年にフレキシブルな働き方を一層進めるという観点から、コアタイムを廃止しまして、「スーパーフレックスタイム制度」に移行しました。当社の制度は、フレキシブルタイムを7時から19時としており、この時間内の勤務は自由に社員が決められるという制度です。コアタイムを廃止して、最低労働時間は1日2時間以上ならばよいとしました。同時に在宅勤務制度も週3回までできる仕組みにいたしました。
インタビュアー: 取組でどう変わりましたか?
平和不動産: これらの施策で、社員が日々、始業時間、終業時間、労働時間を自ら決めることができるようになり、仕事と生活の調和を図りながら効率的に業務に従事することができるようになり、ワークエンゲージメントも向上したと感じています。

インタビュアー:とはいっても一方で、苦労した点、予想外だった点を教えてください。
平和不動: はい、当初、導入初期には、社員が新しい働き方、やり方に慣れるまでに時間がかかりました。例えば会議や来客時間の設定などに苦慮した部分もございます。実際に混乱もありました。しかし、これらの課題を乗り越えることで、より強固な働き方改革を実現できました。
インタビュアー: その後はどんな感じですか?
平和不動産: 個人のライフスタイルに合わせた働き方になってきていると感じています。社員の中には朝7時台に出社する者もおります。15時頃には退社するということになります。オフピーク通勤の実践ですね。やはりすいた電車を使い、仕事に集中できる時間帯を有効に使う社員が多いのに驚きます。また、大多数の社員は、大体10時ぐらいに出社の者が多数を占めています。こちらもオフピーク通勤の実践です。その結果、会議等の設定についても、10時以降の設定になっています。全体として、柔軟に取り組んでいるようです。

インタビュアー: 社員の評価や関わりについてはどうでしょうか?
平和不動産: 社員からは高い評価を得ていると感じています。自由度の高いフレックスタイム制度やテレワークの導入により、個々のライフスタイルに合わせた働き方ができる点が好評の原因なのだと考えます。
また、働き方の施策とともに健康経営にも取り組んでおります。フレキシブルな働き方が浸透していく中、早朝、夕方の時間を活用した「朝活」、「夕活」、あるいは社内の部活動等も活発に行っています。社内ではサッカー部とか、ランニング部、ゴルフ部等が立ち上がっているという状況です。このような取組により、社員同士のコミュニケーションも活発になり、チームワークの向上にもつながってるのではと感じています。
健康経営に関する外部評価として、「健康経営優良法人2024ホワイト500」、「スポーツエールカンパニー2024」に選ばれました。また東京都からは、「令和5年度東京都スポーツ推進企業」に認定されました。非常にうれしい評価をいただいています。

インタビュアー: 最後に、企業としての展望と新しい働き方の将来についてお聞かせください。
平和不動産: 私たちは、今後もスムーズビズを推進し、さらに社員が働きやすい環境を整えていきます。デジタルツールの活用やオフィス環境の改善を続け、持続可能な働き方を実現していくことが目標です。将来的には、さらに柔軟で効率的な働き方を追求し、社員の満足度と生産性を高めていきたいと考えています。特に、AIやIoT技術を活用したスマートオフィスの導入を検討しており、これにより業務効率をさらに向上させることを目指しています。
また、再開発プロジェクトにも積極的に取り組んでいます。例えば、東京や札幌の中心地での大規模なオフィスビル再開発プロジェクトを進めており、最新の環境技術を取り入れた持続可能なビルを建設しています。これにより、都市の発展と環境保護の両立を図り、地域社会に貢献していきたいと考えています。
当社は社員数も少なく、社会に与える影響度というのは非常に少ないと考えておりますが、こうした取組が各社の事情に合わせた中で広がれば、社会全体のオフピークと、働きやすい環境の創造につながっていくと考えております。今後も引き続き、街づくり視点も含めまして、快適通勤、スムーズビズに資するような取組を推進してまいりたいと思っています。
参考 平和不動産新中期経営計画「WAY 2040」
https://www.heiwa-net.co.jp/Portals/0/images/ir/management/plan/vision_medium.pdf