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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

富士食品工業株式会社

(2021年11月9日インタビュー実施)

 2019年頃より交通緩和に向けた取組を開始していますが、都内での中継地点の設置やリードタイムの緩和等の検討を始めたのは、オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)がきっかけでした。

 2020年に2020TDM推進プロジェクトに参加したのは、東京2020大会時の影響を把握するための情報収集が目的でした。毎日お客様に商品をお届けする部門であるため、物流がどうなるのかについては早めの対策が必要となります。

 本社が新横浜駅に近いため、東京2020大会のサッカーの試合による混雑を予想し、出勤時間をずらすことも必要と考えていましたが、結果、無観客開催となったため実施はしませんでした。

 2019年のラグビーワールドカップ時は、横浜では土日開催が多かったため、平日にはあまり影響は大きくありませんでした。当時、何人かの社員が帰宅時に入場規制で電車に乗れなかったという話は聞いていました。

 2020年4月頃から、在宅勤務ができるよう、大きなディスプレイを社員の自宅に郵送したり、Web会議用のカメラやWi-Fiルーター、スマートフォンを導入したりするなど準備を進めました。

 自部署は、食品を扱う受注業務や生産業務であるため、業務を一日でも止めることはできませんし、体制の縮小もできません。特に受注業務においては、お客様からFAXやオンライン、電話等で発注を受けるため、コロナ禍前は出社しか考えられないという状況でした。

 緊急事態宣言の発令に伴い出社率を下げるため、社内システムも含め、自宅で作業できるような対策や業務フローの変更等、在宅勤務ができる体制への切り替えを、試行錯誤しながら進めてきました。最初の頃は、社員には不安や、やりにくかった面もあったことと思います。

人の流れに関する取組――――――――

■トップダウンにより取組の促進

 できるだけ在宅勤務するようトップダウンでの通達があり、緊急事態宣言下では、テレワーク率を7割としていました。JTグループとしても、できる限り出社を減らして感染症対策を行うようにとの案内がありました。

 社内では制約なしのフレックスタイム制度や、テレワークの導入も進められましたが、自社の食品を必要とするお客様にお届けすることを最優先事項としていたため、静岡の工場は通常通り稼働していました。

 緊急事態宣言が出された大阪、名古屋、仙台、福岡の営業所・営業機関は、横浜本社と同様にテレワークを実施していました。

 従業員全員がオンラインでも勤務できるような対策を講じていましたが、本社の業務部や経理部等は出社して対応しなければならない業務があるため、毎日入れ替わりで出社している状況でした。

 対策は部署ごとで行われており、100%在宅勤務としていた部署もありました。特に、経営企画部や総務部等は、率先して在宅勤務としていました。

 営業部についても、基本的には在宅勤務、外出しても直行・直帰としていました。

 連休前は受注が通常の2倍になり、その時にテレワークを行われると処理ができなくなることから、その場合は業務優先で全員出社してもらうようグループ内で調整しています。

■ コミュニケーション確保のため、オンライン会議でのカメラ使用や上長との個別ミーティングの実施を推進

 テレワークにより個人の時間が増えることで生活が豊かになるような印象がありますが、社内のコミュニケーションは確実に減っています。課題の一つとして、グループ間のオンラインミーティングの際は、カメラを必ず使用して話すように指示しています。さらに各グループで、グループリーダーとメンバーとの1対1のミーティングを増やす等を実施しています。

■商品提案はサンプルを送付して実施

 当初は、お客様の方でもオンライン会議の用意がなかったため、電話会議が中心でした。

 その後半年ほど経った2020年の秋頃から、徐々にオンラインでの商談が多くなり、今ではオンライン商談しかできないというところも多くなっています。特に食品メーカーの工場系では、オンライン商談が主流となっています。

 コロナ禍で、お客様から「来ないで欲しい」と訪問を断れることもありました。特に、食品を扱う工場や研究開発を行っているところ等は「絶対に入らないように」と言われていました。

 商品の提案についても、コロナ禍前はサンプルをお届けして、一緒に味見をしていましたが、政府からの要請が発令されている期間は、商品の案内後や事前にサンプルをお送りする形に変わってきています。

 商品開発等のための試食会は、感染対策に万全を期し、自社のキッチンルーム等に来ていただき実施することもあります。

■書類の郵送やFAXは事前にPDF化し、メールでの送信を依頼

 コロナ禍となり、以前は郵送でやり取りしていたものも、この一年で徐々にオンラインに切り替わってきています。

 書類の郵送やFAXについても、事前にPDF化してメールで送信してもらうようお願いしており、現在ではFAXはほとんど使用されなくなりました。

 社内書類の決裁は、コロナ禍以前より電子化がされており、責任者しか承認ができないシステムになっています。

 押印については、紙媒体で回ってきた書類であってもPDF化し、電子データとして添付したのちに、電子承認を行っています。印鑑の押印は行っていません。

 電子承認された請求書や決算上の必要書類は、承認後に紙媒体としても経理部で保管しています。

物の流れに関する取組――――――――

■都内に中継地点を設置し、配送の効率化を実現

 2020年の初めに、自社と契約している物流会社と、リードタイムや夜間配送について検討しなければいけないと話をしていました。

 物流会社では、23区内の配送のため都内に一か所の中継地点を設け、夜間のうちにこの中継地点に搬入、そこから都内への配送を行うことで効率化を図りました。この物流会社は、以前は川崎で在庫をしており、そこから都内に直送していました。

 この中継地点は現在も活用しています。

 中継地点では載せ替え作業があるため、ざっと検品は行っています。基本的に、検品は地区ごと、またはお客様ごとの出発デポで行っています。

 中継地点が増えた場合、荷下ろし、載せ替え作業があるため、リードタイムが伸びる傾向にあります。また、今後、中継地点が増えれば配送の料金も上がってきます。特に今後は、長距離配送が難しくなりますので、中継地点自体が増えてくると思います。

 中継地点では、荷物をストックすることはありませんが、自然災害時等、運行自体が止まってしまった場合は、中継地点に荷物が留まることがあります。

 自然災害発生時の場合の配送遅延は、着荷主にもご理解いただいており、たとえ到着が遅れても受領いただいています。

 郊外間の配送に関しては、例えば、宇都宮から神奈川に配送する場合は、夜間に川崎を経由して配送しています。10t車等の大型車で運搬し、川崎等から車を変えて、分かれて配送しているのが現状です。

 競技会場付近に工場や食品問屋の得意先・納入先はなかったため、東京2020大会時の交通規制による影響はほとんどありませんでした。

■交通規制外の時間帯を狙った大型車両での搬入

 都内は4t車の乗り入れ規制が厳しく、4t車が入れない道路が多数あります。宇都宮や川崎など近郊から乗り入れる場合、2t車だと効率が悪いため、夜間などの規制外の時間帯に4~10t車で中継地点までいき、そこから2t車に積み替えて配送するようにしています。

■物流会社との連携による共配便の実施

 現在、多様な食品と共配便を行っており、その物流会社と連携しながら取組を実施しています。

 共配便は、物流会社が主体となって、自社と他社間との調整を行っています。自社と他社との直接のやり取りは殆どありません。

 自社は食品を扱っており、品質を担保しなければならないため、共同配送を行う際は、信頼のおけるパートナーとなりえる物流会社と契約を結んでいます。

 加工食品業界では、待ち時間や付帯作業が多くあるため、ドライバーの労働時間が長くなってしまいます。この問題について、契約している物流会社では、共同配送を行っている複数のメーカーからの意見を集め、対策を検討しているようです。

■配送の集約化によるホワイト物流の促進

 自社は「ホワイト物流」に手を挙げ、参加しています。

 「ホワイト物流」の観点から、これまで毎日配送だったものを、食品工場の納品先が少ないところなどの地区を限定して、例えば、月・水・金などの曜日配達に変更しました。この一年は、こういった配送の集約も多かったです。

 納品先から「何故、曜日配送に変更したのか」と問われれば、営業部も「ホワイト物流だから」という話はしているようです。

 工業地帯のような地域はお客様が多いため、まとめて配送ができますが、食品工場が1つしかないような地域においては、2日に1回や土曜配送の中止等の配送集約化が進んでいます。

■リードタイムの緩和とその課題

 リードタイムの緩和策としては、メーカーや卸で在庫をもっていただきたいと考えています。

 一方で、在庫を持ったものの、その先の需要がない等のリスクもあります。外食産業も同様ですが、自分たちで消費できないものは在庫できない為、発注量を出来る限り精査することでギリギリの発注となり、結果リードタイムの緩和がなかなか進まないのが現状です。

 自社は原料をメインで製造・販売しています。その為、お得意先の製造へ影響があり、間違いのない配送、リードタイムの確定が求められますが、サプライチェーン全体で、使用量を先読みすることは難しいのが現状です。

 受注のリードタイムとしては、基本は今日の午前中に受けて明日お届けという日程で取り組んでいます。尚、弊社の協力工場に対しては発注側となりますが、発注前に数カ月の発注量を想定するなど計画的に行なっています。

 あと3年後(2024年4月1日以降、働き方改革関連法によって「自動車運転の業務」に対し、年間の時間外労働時間の上限が、960時間に制限される)までに、発注側にリードタイムを緩和してもらうのは難しいのではないかと感じています。特に、問屋や外食産業は難しく、コンビニ関係のメーカー等も数量を予測することは難しいと思います。

 チェーン展開の場合は、特定の店舗等によって期間販売等で余剰分を売り切るなど対応していただく場合もあるので、業界全体でもう少し緩やかな対応をしてもらえると良いと思います。

 賞味期限については、加工品・常温品であれば、おおよそ1年となっています。お客様は外食産業や食品工場が多いため、原料である自社の商品はギリギリまで使用していただくことが多いです。

 市販の場合、賞味期限の表示を月日から月にする等に変えていく動きもあるようですが、生産ラインで問題が起きたときに、日付を追えなくなる等の課題は残りますので、各社工夫されていると思います。

■配送の現状

 海外からの原材料は港に届きます。国内の輸送は陸送としており、主にトラックを使用しています。トラックの方が他の輸送より早く、また、どこにいるのかもすぐに分かるためです。長距離輸送に関しては、貨物鉄道やフェリーも活用し、モーダルシフトをしていますが、自然災害が発生すると動かなくなるというリスクがあります。出発地の天候に問題はなくても、到着地が荒れていれば出発しないこともあります。

 また、鉄道が止まってしまった場合も、どこでなぜ止まっているかがすぐには分からず、いつ到着するのかも分からないというリスクがあります。

 フェリーや貨物鉄道の場合、到着した地点から更に配送車を手配しなければならず、駅や港への到着時間が予定よりも大きく外れてしまうと、いつ到着するのか全く分からないということもありえます。この場合、駅や港に荷物が溜まってしまうことになります。

 車も、高速道路が閉鎖されたり、大雪の影響で止まったりすることはありますが、少なくともドライバーと連絡が取れるため、今どこにいて、いつ到着できるか等の状況を把握することは可能です。

 ドライバーの労働時間で考えれば、フェリーや貨物鉄道等で運搬し、到着地点からトラックでピストン運搬する方が効率は良いと思います。

東京2020大会を振り返って――――――――

 2020年の初めの頃は、営業車を使用する関係で東京都の交通規制に関する情報は確認しており、営業担当とも情報を共有していましたが、その後、営業自粛となってからはあまり意識しないようになりました。

 東京2020大会時には、東京港が混雑するとの情報がありました。自社は清水港の利用も比較的多かったため、そこで海外品の対応を早めて行いました。見込んでいた出荷がなくなったことも重なり、結果として2020年6月は各社の在庫が膨らみ、物流会社の方で他の倉庫の手当てをし、保管するという事態になりました。その後、お客様と相談しながら出荷対応し食品は回転が早いこともあり、半年から1年程度で元の在庫量に戻っていきました。

今後について――――――――

 人の流れに関する取組としては、緊急事態宣言が解除された今では、2/3が出社、1/3がテレワークとなっています。輪番制で週に2~3回をテレワークとし、これは今後も継続していく予定です。2/3出社が難しい部署もありますが、業務優先で調整を行っています。

 また、テレワークについては感染症対策として位置づけて実施していましたが、今後は、就業規則に規定する予定です。

 現在、感染リスクを避けるため、ひとつのグループを2つの執務室に分けています。このため、同じグループでも全く会う機会がない従業員同士は、コミュニケーションが難しい場合もあります。今後は定期的に、ローテーションを行う等の対応も検討していく必要があると考えています。

 会社内でオンライン商談を行うと、会議室の争奪戦になります。その対策としてテレワークを活用しているケースもあるようです。そういう意味でも、今後、サテライトオフィス等の導入も検討されていくと思います。

 物流に関しては、契約している物流会社より、メーカー数社から検品の簡素化に関する要望が出されると聞いているので、その際には率先して協力していきたいと考えています。

 配送は、同じ人間が出荷作業と入庫作業を行っており、またトラックを着ける搬入口もそれほど多くあるわけではないため、時間も場所も限定されます。現在は、午前納品の時間指定が集中しがちで、これを分散させる必要があり、今後は時間指定の撤廃が必要だと感じています。

 自然災害には、数年前までは無理してでも配送してもらっていたが、今は一切それがなくなったことから、荷主側の理解が進んできていると思います。これは「安全第一」という観点や、国からの「荷主の責任」といった呼びかけによるものだと感じています。同じような機運で、時間指定等も緩和されていくと良いと思います。

 「2024年問題」については、大きなメーカーの牽引力や強い号令のようなものが必要だと思います。物流を停滞させてはいけない、必ず運ぶためにどうすれば良いのかという観点で、事業を継続するために考えていかなければならないと思います。

 自社としても、JTグループとしても「ホワイト物流」推進運動に参加しているため、物流会社より「2024年問題」(ドライバーの労働時間の縮減)も見据えて取り組んでいきたいと、何かしらの取組の提案があれば基本的に協力していく考えです。