センコーグループホールディングス株式会社
(2021年10月11日インタビュー実施)
2019年6月に開催された大阪サミット(G20)で、大幅な交通規制がかかりました。この経験から翌年に開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)では、更なる大きな影響が危惧されることから、TDM説明会等に参加するなど情報収集を開始。自社関東地区における営業や支店、グループ会社等を巻き込んで、2019年9月に社内で対策プロジェクトを立ち上げて取り組みを開始しました。
対策プロジェクトは東京2020大会時に想定される「サイバー攻撃」や「交通規制」、「テロ対策」、「自然災害」の観点も含め、「就労体制」と「物流対策」の2つの分科会を立ち上げて検討を行いました。
人の流れに関する取組――――――――
■社内プロジェクトを設置し、物流対策、就労体制をメインに各種対策も併せて検討実施
当初(2020年開催予定時)、東京2020大会開催時は1,000万人が東京都に集中するとのことで、国や都から要請された以下の取組の準備・呼びかけを行いました。いずれも東京2020大会の期間中での実施を想定しました。
- 時差出勤
- テレワーク
- 23区内と重点取組地区にある事業所を対象とした出社率の削減(最低50%、最高70%削減)
- やむを得ない出勤の場合は時差出勤
- サテライトオフィスの活用
- 計画休暇取得の奨励
- 会議・出張の原則禁止
- 原則Web会議の開催
- 社用車の利用禁止
テレワークについて、整備前は社内ネットワークの同時接続数に限りがあったため、東京2020大会までに10倍(約300回線から約3,000回線)とすることを目標に準備を進め、さらにサイバー攻撃に備えてセキュリティ対策にも万全を期しました。
2020年、新型コロナウイルスへの感染防止対策の推進もあり、前倒しで上記対策を実施しました。
テレワークは、緊急事態宣言の度に実施してきたため習慣化されました。東京2020大会時は各部門のばらつきはあるものの、概ね出社率30%を達成しました。
■各支店における会議室等をサテライトオフィスとして活用を検討
コロナ禍より以前に、サテライトオフィスとして支店の営業所の会議室等を使用できるか検討していましたが、コロナ感染防止対策を踏まえ、テレワークは基本自宅とし、サテライトオフィスとしては、主に千葉県流山市にある当社研修施設を活用しました。
物の流れに関する取組――――――――
■協力依頼文書を作成し、取引先への説明時に活用
2019年に、国や都の要請文書をベースに、東京2020大会期間中の対応に関する依頼文書を影響がありそうな荷主に向けて(23区内・重点取組地区・競技会場)発出しました。
そして、2021年5月にも、影響のありそうな御取引先様300社に要請文書を発信し、2021年6月には、小口配送の御取引先様に請求書と同報で要請文書を送付しました。個別調整にあたっては、直接お伺いする場合とメールでの対応を行いました。
また、要請文書は、当時、自社HPでも公表していました。
交通対策は、2020TDM推進プロジェクトHPを見ながら、各社に情報提供させて頂きました。
配送業者等との連携については、業者側からの協力要請があり、随時連携をとりながら足並みを揃えて取り組むことができました。
■取引先の業態に合わせた物流対策の実施
個別に調整して大会時に実施した取組としては、納品遅延の緩和や納品分散、配送時間帯の変更(日中から夜間へ)、出発時間の変更(前日夜に荷積み明朝出発)等で、取引先の業態に合わせて実施しました。
■物流動向の一元管理で、本部での随時確認や即時対応できる体制に
交通渋滞(納期遅延)によって発生するクレームについては、Googleフォームを利用して一元管理を行いました。具体的には、現場担当者がWEB上から日々の交通情報やクレーム内容を登録し、日々、対策プロジェクトメンバーにリアルタイムに情報共有を図り、監視・対応できる仕組みとしました。
実際にクレームは2件ありましたが、事前に遅延する場合があることを周知していたため、大きな問題にはなりませんでした。
東京2020大会を振り返って――――――――
2019年の下期から取組の検討を開始しましたが、準備期間としては丁度良かったと思います。東京都からも適宜情報をもらえたので良かったです。
当時、東京2020大会の開催規模が不透明だったため、取組の対応については、ギリギリまで待ってからの対応となりました。開催方法が無観客となり、交通渋滞も無くなるとの意見もありましたが、選手や大会関係者は車での移動となることから、混雑が予想されることをプロジェクト事務局から繰り返し発信し、理解してもらったところもありました。
今後について――――――――
人の流れに関する取組みについては、今後も、テレワークやオフピーク通勤、計画休暇取得の促進、オンライン会議等を継続して取り組んでいく予定です。
今回の物流対策分科会の取組み事項や物流動向の情報共有化などのノウハウやツールについては、今後、交通規制など社内外に大きな影響を伴うイベントに継続活用していく計画です。