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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

株式会社佐藤運送

(2021年11月16日インタビュー実施)

 自社は運送会社であり、顧客の依頼で業務を行うことが主ですが、オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」という。)の期間中は交通規制や混雑が見込まれ、定期的な運行を行うルート便や、顧客の希望に沿って指定された時間に配送するスポット便が遅延することを危惧していました。平時からタイトなスケジュールで配送していましたが、東京2020大会期間中は様々な弊害が発生することが予測されたため、顧客に情報を提供しながら、様々な対応を検討し始めました。

 特に、首都高湾岸線を使用し、品川周辺と幕張を繋ぐメール便と、電材やエアコンを扱うスポット便の配送が遅延する可能性があることは深刻な問題でした。夏季前に需要が多くなる電材やエアコンは、仮に東京2020大会による交通規制があったとしても、遅延なく配送しなければならないため、社内でも特に重要な懸念事項として取り上げました。

物の流れに関する取組――――――――

■顧客への事前アナウンス

 まず、東京2020大会期間中は交通規制や混雑が見込まれ、配送遅延の可能性があることを顧客にアナウンスするところから始めました。

 2020TDM推進プロジェクトからの情報をPDF化して、顧客に対してその都度情報を発信して共有しました。顧客側は、東京2020大会期間中の交通規制等の情報を持っていなかったため、混雑による影響も想定しておらず、対策等も検討していない様子でした。

■顧客との配送に関する調整

 顧客と情報を共有し、東京2020大会期間中の対策を検討しました。

 結果、スポット便でのエアコン等の配送については、現場から上申して物量を減らすことになりました。エアコン配送については、指定した時間に届かなければ大きなクレーム(問題)が発生することもあるため、対応は早かったと思います。

■既存の物流システムの変更を検討

 毎日の定期的な運行を行うルート便は、主に企業の社内便を取り扱っているのですが、重要書類が多く、決まった時間に到着しなければならないため時間の調整ができません。通常は、1日に2.5往復していますが、交通規制や渋滞等により遅延して、1日に2往復しかできないという事態も考えられました。この場合は、夜間にもう1便配送するか、もしくは残業して配送してもらうことを検討していました。

 また、交通規制や渋滞に対応するため、一部配送ルートの組み直しも検討していました。

■配送・労働時間の改善

 現在、厚生労働省より計算式に基づく標準的な運賃設定が公表されています(https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2021/05/hyoujun_imasugu.pdf)。これによれば、以前より運賃は上がっているのですが、その価格は現状とかけ離れているように思います。配送コストだけではなく、配送の仕組み自体も変えていく必要があるのではないかと感じていました。

 このため、自社ではトラックドライバーの労働時間の改善として、配送の仕組みを変更しました。

 これまでは、空荷で倉庫へ行き積荷をして、別の倉庫まで1時間半かけて移動し、積荷・配送を行った後、1時間半かけて最初の倉庫に戻り、日報を書いて会社に戻るというサイクルであったため、トラックドライバーは月に60時間程度の残業が発生していました。トラックドライバーの拘束時間を減らすため、積荷・配送を行った後、倉庫には戻らず、会社に戻るサイクルとすることで、残業を1時間減らすことができるとともに、他社に比べて1時間分の余裕ができる取組を進めています。

東京2020大会を振り返って――――――――

 東京都から提供頂いた各種情報について、顧客側では積極的な取り組みが無かったため、こちらから情報を発信しなければ、東京2020大会期間中に交通規制や混雑等で影響が出ることを想定できなかったと思います。

 東京2020大会前に検討していた、ルート便の残業による追加配送や配送ルートの見直しですが、実際には、東京2020大会の無観客開催やコロナ禍の影響により道路の混雑が想定ほどではなかったため実施しませんでした。

今後について――――――――

 今後、東京2020大会のような大きなイベントが開催される際には、今回の検討を活かしていくつもりです。

 トラックドライバーの労働時間については、時短や働き方改革の流れもあり、勤務時間を長くしろとは言えなくなっているのが現状です。各運送会社でも先送りにはなっているものの、労働環境の改善を考えていかなければなりません。どのように見直していくかは、今後の課題です。