ここから本文です。

インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

アンハイザーブッシュインベブ ジャパン株式会社

(2021年11月1日インタビュー実施)

 自社の荷揚げは横浜港、神戸港、沖縄で行っています。当時、横浜市主催の大会時に向けた横浜港の説明会が、船会社や荷主等を対象に4回行われました。説明会では、東京港の運用と同様、渋滞対策としての一時保管場所、臨時待機場所、混雑時の車両誘導員の増員等の説明がありました。また、臨時駐車場所を横浜市が用意して渋滞の緩和に向け様々な政策が行われましたが、実際には、大会期間中の一切の遅延は発生しませんでした。

 平時、東京港を利用している荷主(他会社)が、大会時に新潟港を利用するなど港の分散が行われたと伺っています。

人の流れに関する取組――――――――

■テレワーク8割を目標に、外部委託先でも環境整備(業界のモデルケースに)

 自社では、平時よりリモートワークの推進や、年次休暇の積極的な取得を奨励しているため、オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」という。)期間中には特別な対応は行いませんでしたが、新型コロナの流行に伴い、安全・健康管理について特に留意するようになりました。

 特に、時差出勤よりリモートワークを推奨しており、リモートワーク率8割を目標として取り組みました。

 テレマーケティングをコールセンターに外部委託していますが、当初は、委託先からリモートワークはできないと言われていました。しかし、委託先には専用チーム(10~15名)があり、荷主として同じチームで働く人を安全・安心な環境に導くため、リモートワークの環境を整備していただきました。この取組みは、テレマーケティング業界ではテレワーク実施のモデルケースであり、新型コロナが流行した2020年から毎日、半分はリモートワーク、半分は出社での対応という環境を実現していただきました。

 この他、COVID-19対策として、以下の取組を展開しています。

実施したCOVID-19対策

実施したCOVID-19対策

物の流れに関する取組――――――――

■事前に取引先との調整を実施

 2021年7月、取引先に大会期間中の大規模規制による荷物の遅延に関する文書を発信しました。併せて、東京2020大会期間中の17時以降の夜間配送の希望についても取引先に確認しましたが、取引先からの希望は特にありませんでした。発信は、発注形態がEDI(電子データ交換)6割、FAXが4割のため、主に文書での通知(FAX)としました。HPは現在作成中のため、HPでの公開は行なっておりません。

■大会による影響度をクラス分けし、顧客の配送ステータスを毎日確認

 東京2020大会時の顧客への配送状況を把握するため、取引先ごとの影響度を分析しました。ひとつ具体例を挙げると、聖火リレーのコースと規制時間を各自治体から発信された情報等から把握し、取引先の場所と併せてマッピングしました。

 また、東京都の個別コンサルティングを活用しながら、取引先ごとに、大会情報(日付、競技時間、競技名、会場)を基に、影響の度合いをポイントとして、エリアや時間指定ごとにポイント等を付与し、独自でカラーリング(集計)を行って影響度のクラス分けを行いました。

 エリアポイントは、規制場所からの距離で付与し、時間指定ポイントは、時間指定のある場合に、配送時間帯の混雑予想も点数に加えました。

 影響度のクラス分けは初の試みであり、2年間の準備期間と個別コンサルティングからの提供データのおかげで行うことができました。なお、他の大会やイベントでの実施はまだ予定していません。

 この影響度のクラス分けの情報を基に、各顧客の配送ステータス(準備・配達中・出荷完了)を毎日チェックしていました。影響度の最も高い顧客が1件ありましたが、所在するエリアが規制外に位置しており、問題なく配送されました。その他、時間指定もありましたが、一切遅延することもなく配送することができました。

■その他取組みについて

 自社が取り扱う製品は100%輸入品のため、検品については大規模なイベント等のあるなしに関わらず平時から実行しています。商材としてビンの取り扱いがあり、割れてしまうとケガ等に繋がりかねないため、輸入した時点での検品の強化、品質の管理、監督は常に意識して行っています。

 日本市場は自動マシーンにより6本/1パックを単位としていますが、あるメーカーのビンビールは「ルーズケース」と呼ばれる24本バラ/1ケースで到着します。今後は、日本市場同様の単位で届くようになる予定です。日本仕様のラベルを貼る(ラベルの重複)作業や、ビール樽やカプラーの口に異物が入っていないかの確認作業があります。商材は食品であり、安全性と品質を兼ね備えた商品を顧客に届けるのは使命であると考えています。

 コンビニエンスストアへの配送については、コンビニ毎の卸会社の物流センターに、毎日11時までに納品しています。

 昨今、コロナ禍の影響により、業務向けから個人向けの利用が上回っており、これまでEコマース向けの配送は1台・10t車両/週でしたが、現在は6台・平均13t車両/週となっています。また、世界的にも人員やコンテナが不足しており、港に届いたコンテナをそのまま陸送するドレージ配送が難しくなっている地域もあります。

東京2020大会を振り返って――――――――

 2020TDM推進プロジェクトから提供された情報、特に大会時の遅延等を想定した所要時間・経路探索システムは情報が非常に細かく、使い勝手も良かったです。

 自社のアクションプランは、大会関連情報を基に顧客位置をマッピングして対応するものでした。

今後について――――――――

 人の流れに関する取組みについては、平時より推奨しており、今後も継続していきます。テレマーケティングについても環境が整備されたため、これまでと同様の対応が浸透しています。

 物の流れについては、2019年からの業務量軽減のため、ドライバーの拘束時間を減らしていくことを検討しています。

 配送については、日本に到着してからの輸入通関、倉庫保管、全国への配送を3拠点(横浜、神戸、沖縄)で外部委託しています。また、クロスドックと位置付けている一時保管場所が北海道(石狩)と福岡にあり、今後は北関東、南関東等全国各地に増やすことを検討しています。現在のクロスドック拠点は間借りしており、委託先を管理会社としています。

 物流の2024年問題(働き方改革関連法によって、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることで、物流業界に生じるドライバー不足等の諸問題のこと)への対策としても、ハブ&スポーク方式(中心拠点(ハブ)に貨物を集約させ、拠点(スポーク)毎に仕分けて運搬する輸送方式)で配送時間を短くする必要があると考えています。クロスドック(一時保管場所)をどれだけ持てるかで配送時間、拘束時間を減らすことができるため、一時保管場所を増やせるよう委託先とも連携して検討しています。