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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

株式会社オートバックスセブン

(2021年11月4日インタビュー実施)

 テレワークは、「働き方の多様性」の観点から2017年10月より開始しています。

 2019年のテレワーク・デイズに参加することで、会社として本格的にテレワークを浸透させていきました。いずれも人事担当の執行役員から指示を受けて、豊洲本社を中心に展開しました。

 テレワークの準備については、本格稼働させた2019年には既にパソコンもネットワーク回線等もおおよそ整備されていたためにそれほど苦労はなく、費用についてもSkypeからTeamsへの契約変更に要する程度で済みました。

 オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)に向けた対策の計画については、東京2020大会が2020年に開催されることを前提に、出社の流れをどうするか等を検討していましたが、開催の延期や新型コロナウイルス対応が必要となり、緊急事態宣言下では原則、出社禁止措置等を採用しました。

 2021年のテレワーク・デイズにも参加しましたが、2020年のコロナ禍により、テレワークは大分浸透していたため、2020年と比較して出社率やコストが大きく下がったということはありませんでした。

 社内の反応としては、テレワークを検討・開始した2017年は「テレワークで業務をすることは無理ではないか」という声もありましたが、2019年に本格的に実施したときには「やれば出来る」「こういう働き方も(選択肢の一つとして)必要だ」等の反応に変わっていきました。

 豊洲駅周辺について、以前は特に朝の通勤ピーク時間帯等、非常に人が多くみられましたが、2020年頃から減ってきた感じがします。昼食時も飲食店等は以前のような混み具合はなくなり、周りの会社もテレワークが浸透しているのだろうと感じています。

人の流れに関する取組――――――――

■部門ごとに月別・日別の出社率をExcelでまとめて把握・共有

 2019年頃は豊洲本社で出社率50%程度でしたが、コロナ禍の影響が大きくなった2020年は出社率30%程度となっていました。現在の出社率も、おおよそ30%前後となっています。

 自社では、契約社員(約200名)もテレワークができるよう体制を整備しました。

 派遣社員は、派遣契約に準じるためテレワークの対象外としていますが、派遣元との合意が得られればテレワークや時差出勤なども可能としています。

 コロナ禍の影響が大きくなり始めた2020年8月頃から、部門ごとに月別・日別の出社率をExcelにまとめて把握しています。結果を各従業員が閲覧可能なフォルダに保管しているため、個々人が出社率を控えようという意識にもつながっていると思います。

 各店舗やお客様からの問合せへの対応業務など、出社しないとできない業務もあるため、各部門の機能、役割に応じた出勤体制を取っています。

 テレワーク中のコミュニケーションツールとして、新たにTeamsを導入するとともに各部門でどのような使い方をしているのか等を社内で紹介しました。

 通勤交通費についても、原則、定期代としての支給を中止し、実費精算に変更することで経費削減につながりました。

■サテライトオフィスサービスを契約、利用を推奨

 2019年に、会社としてサテライトオフィスサービス(ZXY(ジザイ)等)の三社と契約し、その利用も案内していましたが、コロナ禍になってからは外出を控える動きがあったため、案内を控えました。

 サテライトオフィスは現在も利用可能で、当該地への交通費も実費精算としています。利用の可否等については、各部門の判断で行っています。

■オンライン会議を本格的導入

 2019年頃から会議等のオンライン化を開始しており、2020年のコロナ禍で本格的に導入しました。

 取引先とも可能な限りオンライン会議としました。実際の商品やサンプルを見なければならないときは、場合によって出向いたり、来ていただいたり、対面での打合せとなりました。

■社内書類等の電子化を推進

 出張費の精算などは一部電子化しています。領収書等は後日原本を提出しなければなりませんが、会社から貸与されたスマートフォンで領収書を撮影し申請しています。

 契約関係も、全社的な導入には至ってはいませんが、契約社員との契約は電子化する等の取組を行っています。

 押印行為については、契約社員との年間の労働契約については電子署名としていますが、外部との業務委託契約等は電子化できていないのが現状です。

■フリーアドレス化等に伴う物品等の削減

 テレワークの推進により、コピー用紙はかなり削減できており、その納入頻度も減っています。2019年のテレワーク・デイズの自社報告書では、事務用品はテレワークの導入前に比べて75.4%削減となっています。

 豊洲本社ではテレワークに合わせてフリーアドレスとなり、保管場所の都合から紙媒体の書類の保管方法を見直すよう指示をしました。これにより、不要な紙媒体の廃棄やPDF化を推進しました。

 また、フリーアドレス化やコミュニケーションスペースの設置により、最大出社率5~6割程度を目途とし、本社や各拠点の在り方も費用対効果を踏まえ検討しています。

■「オフィス勤務における新しい働き方ガイドライン」の策定へ

 現在、ニューノーマルな働き方を目指し、従業員向けの「オフィス勤務における新しい働き方ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を策定し、案内しました。

 東京2020大会やコロナ禍での取組を踏まえて、出社率を最低2割から上限8割にすることを目途に、どのような働き方が最適なのか、コミュニケーションの取り方や業務のあり方等について各部門で検討し、各部門での出社率目安を策定しました。

 ガイドラインでは、テレワークも含めたこれまでの働き方改革に関する実態を評価し、労働時間が長くなった理由や短くなった理由等について整理するとともに、コロナ禍で半強制的に実施したテレワークのメリット・デメリットを整理しました。

 これらの課題等を踏まえ、「これからの新しい働き方」として、〝コミュニケーションの強化”と〝自律型チーム運営の実践”を図っていきます。

 出社率などの具体的な目安は、経営陣からの指示もあり2~8割の範囲内としました。部門ごとに業務内容も異なるため、実際に出社率が下った部門や下がらなかった部門もあったことから、最低2割から上限8割と幅をもたせ、『全社として出社率5割』を目安の指標として設定しています。

 テレワークの有用性も見えてきたため、新しい働き方を自律的に選択できる「自律型チーム運営」を目標とし、コミュニケーションの取り方等、各部門(チーム)で対応を考えて決めるようにしています。また、出社した方が効率が良いという業務と、テレワークで集中して個別にやった方が効率が良い業務とをマトリクスで整理しています。

 各部門でメンバーと一緒に考えていきましょう、という点を会社として大きく打ち出しています。

物の流れに関する取組――――――――

 自社では、各店舗に荷物を配送しています。

 東京2020大会時に、ロジスティックス(仕入れから出荷まで)に関して、自社の倉庫からオートバックスの各店舗に配送する便で、配達時間の調整(朝夕のラッシュ時やコアタイムを避けての配送)を行ったと物流部門から報告を受けています。

 配送ルートについては、交通規制がされた区間を避ける変更を行いました。

東京2020大会を振り返って――――――――

 2020TDM推進プロジェクトからの提供情報については、特に「交通規制に関する情報」や「大会輸送影響度マップ」を活用し、経営陣への説明等に活用させていただきました。

 特に、豊洲近辺は東京2020大会の会場が多かったため、影響度マップ等をベースに、自社近辺の人の流れがどのようになるのかという説明材料として有効活用しました。また、これにより出社時の影響を確認・検討していましたが、緊急事態宣言下では、原則、出社禁止措置を採用したため、休止しました。

 コロナ禍によりテレワークの取組がすでに進み、一定の効果が出ていたために2021年のテレワーク・デイズ期間中だけでみると、取組による効果(例えばコストの削減量や率、テレワーク率等)はやや限定的でした。

 無観客になったことについても「多くの観客が豊洲に集まるのでテレワークを推進してください」という大義名分が無くなってしまった印象がありました。

 まずは実際に取り組むことで、その課題やメリットが見えてくると思います。

 そういった意味でも、今回の東京2020大会やコロナの影響は、取組の推進力になったと思います。半ば強制的に取り組んだことによって、実際に課題やメリットが見えてきました。  また、会社として今後のテレワークに対する方向性は明示する必要があることから、ガイドライン(「オフィス勤務における新しい働き方ガイドライン」)の作成は重要と考えていました。

今後について――――――――

 中期的には店舗に配送する物流の効率化等は課題の一つと考えています。配車計画の効率化など、物流の効率化を全体として推し進めていくことで、SDGsやESGに貢献・寄与することができると考えています。