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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

株式会社ニシヤマ

(2021年11月4日インタビュー実施)

 2014年に発生した広島市での集中豪雨による土砂災害において、広島営業所の社員が出社できないことがありました。その中には一般事務を担当する社員も含まれており、営業事務業務が停滞してしまうため、その対策として自宅から基幹システムにアクセスできる仕組みを構築しました(構築までの間は大阪支店の営業事務がフォロー)。そこから在宅勤務の必要性の意識が強まっていったため、コロナ禍においてもテレワーク等の取組にスムーズに移行することができました。

人の流れに関する取組――――――――

■被災時の経験をもとに事前に対策を実施、2班に分けて計画的に出社して出社率を低減

 まずは社員をA班とB班に分け、交互に出社して出社率を半分もしくは半分以下になるように対応しました。また、緊急事態宣言下では、週3日の出社となる週は週2日となるように調整しました。これは土日祭日に関しても同様で、休日出社に於いてもA班、B班を順守しました。班の分け方は、業務への影響が最小限となるよう、課長職であるマネージャーが調整しました。

 緊急事態宣言中は、顧客からも「来訪を見合わせて欲しい」と要望があったため、オンラインで営業活動を行いました。現在、営業ツールの一つとして継続して行っています。

 国内に加え海外にも拠点があり、テレワークの流れは一気に波及していきました。

 環境整備の際は、情報システム部門の社員(SE3名、派遣社員2名)が、在宅勤務用のパソコンの用意や、自宅からアクセスする際の支援など様々な準備を行っており、非常に忙しかったと聞いています。

 様々な取組に対して戸惑いはあったと思いますが、一人ひとりがしっかりとやりきってきたと思います。

■労務管理として社内掲示板に自社の方針やシステム打刻方法を掲載

 物流の社員は物のやりとりが基本であるため、人間が対応しなければなりません。出社率が半分になると、残った人は無理を重ねる必要があり、心身ともに負担が大きくなってしまいます。ピッキングミスや誤納にもつながりかねません。このため、在庫アイテムが非常に多い平和島物流センターでは、全員が出社していました。拠点には社屋内に倉庫があるため、感染予防の観点から班を二つに分け、AとBの班ごとに出社し、また営業部門との接触も極力控えていました。

 コロナ禍では、9:00~17:30の定時時間の前後2時間でのオフピーク通勤が認められました。

 オフピーク通勤を認めたことで、コロナ禍前では想定できなかった勤怠管理が発生しました。労務管理のために、オフピーク通勤でも通常勤務時間7時間半を確保できるよう、社内掲示板に会社としての方針やシステムへの打刻方法等が掲載されました。

■有給休暇の計画的な取得の促進・実施

 日常的に休暇取得を促進していますが、商社という立場からもコロナ禍による一斉休業は検討しませんでした。

■手続きの電子化

 15年程前に自社の基幹システムを入れ替えたことをきっかけに、書類の電子化、ワークフロー申請(社内の各申請書をクラウドで管理するワークフローシステム)が進んで来ました。

 オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」という。)によって、更にフォーマットの見直しやワークフロー化等が加速していきました。

 契約書の押印は、社内便で現物をやりとりしながら行っていますが、各種申請・登録業務、経費精算等は、電子化したシステムで実施されています。

■早くからWebミーティングを開催、社員がオンライン会議に慣れる機会を意図的に創出

 「Webで集まったからコミュニケーションが取れている」というわけではありませんが、テーマによってはWebミーティングの方が良かったという人もいます。

 これまでのように、一堂に会する必要のないWebミーティングでは、日程調整、招集もし易く、拠点間の打合せの頻度は確実に増えていると思います。また、ミーティングの内容も対面式と遜色ないレベルであると思います。

 毎月初めに、各拠点とはWebで繋いで朝礼が行われていましたが、感染予防の観点から当面中止となり、代わりに経営トップからのビデオメッセージやコメントが、社内掲示板に載るようになりました。2021年11月に緊急事態宣言が解除となりましたが、それまで班を分けて勤務していたため、別班の人間とは1年半会っていない状態でした。

 新入社員は、入社時からWebだったため、非常に苦労したと思います。

 コロナ禍の始めの頃、営業本部長の提案で大人数でのZoom飲み会を開催しました。世の中の流行りであるオンライン飲み会に触れることや、自社でも実施できること、会議の際は「小部屋」を作ってグループ討議できること等、様々確認することができました。

 2020TDM推進プロジェクト事務局とも複数回打合せさせて頂き、そこで頂いた「対策の準備は早めに」、「出荷も早めに」といったアドバイスは営業部門に展開していました。

物の流れに関する取組――――――――

 戦略会議は半期に1度開かれますが、2019年10月度に行われた下期会議での席上、社長から東京2020大会での物流の問題点を洗い出し、社員に告知・教育するよう指示があったことをきっかけに、対策の検討が始まりました。

■ 運送会社別の混雑状況の確認をもとに、営業部署との協働による早めの出荷準備及び出荷指示の実施

 大手運輸会社の配送拠点の管理者には、配送状況のどんな些細な変化でも連絡するよう申し入れていました。混雑時は中継地点を動かしたり、陸送を船や鉄道に変えたりする等、ダイナミックに移し替えて対応すると聞いていましたが、慌てて何か対応するということは各社ともありませんでした。特別なルールをつくる等の対応もなかったようです。

 当社では営業部門が個別に状況を確認し、調整の上、早めの準備、早めの出荷指示を心掛けていました。

 当時の2020TDM推進プロジェクト事務局に、東京2020大会期間中の物流に関する社内向けの情報提供について相談させて頂きました。そこで頂いた様々なアドバイスを盛り込み、社内掲示板で全社員に、運送会社からの情報や大会スケジュール、道路混雑・交通規制情報・目的地到達時間検索等の情報を共有していました。お忙しい中でのご担当者様の丁寧な対応に、今でも感謝しています。

東京2020大会を振り返って――――――――

 一般的に、都内から発送した荷物は多くの地域へ翌日には到着しますが、遅延を恐れて早めに出荷指示がかかっていた時期がありました。実際には、東京2020大会は無観客となったため、大きな混乱はなく、通常の配送スタイルで問題はありませんでした。

 2020TDM推進プロジェクトホームページは、漏れなく完璧につくられ、各競技のみならず大会運営そのものにも興味を持つことのできる優れた内容だったと思っています。

 メールマガジンは楽しく読ませていただきました。

 個人的には、この2020TDM推進プロジェクトはもっと広くPRして欲しかったと思います。愛称や略称等の公募や、昨今よく見かけるニュースのテロップにQRコードを張り付けて宣伝すること等で、個人や企業を問わずもっともっと広く浸透できたのではないかと思います。

 企業向けの内容ではありますがが、コロナ禍、無観客という特殊な状況において、このプロジェクトが発信していた情報は、少しのアレンジで世の中の一人ひとりがより身近にオリンピックを感じられるツールになり得たと感じています。

今後について――――――――

 人の流れに関する取組について、テレワークは、産休時や子育て中の人など、在宅勤務であればキャリアを活かして仕事ができる人は、今以上に活用できると思います。

 緊急事態宣言解除後は、基本出社とし、オフピーク通勤を継続して実施しています。今後の新型コロナの感染拡大次第では、いつでも2班体制へ移行できるように準備をしています。

 物の流れについても、東京2020大会に備えて準備したことや実施した取組は、災害時の対応にも活用できるため、今後も役立てていきたいと思います。