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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

株式会社ロータス

(2021年11月24日インタビュー実施)

 弊社はJR浜松町駅の近傍にあり、オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)時には、周辺に大きな混雑が予想されたため対策の検討を開始しました。

 自社の事業形態は、様々な整備工場が加盟している事務局であり、加盟店や取引先、社内などの会議や打合せが非常に多くあります。コロナ禍になる前は、各部署に毎週のように全国から人が集まり、多いときは週に3~4日会議が行われていました。東京2020大会開催中も当然会議はあることから、自社に集まる方達の宿泊先の確保も難しくなることを想定して、会議の時期をずらしたり、会議の開催場所を都外に変更したりする等の検討も行いました。

 取引先は、東京に本社のある企業が多いため、そちらの対応に合わせることや、スムーズな出勤の維持を目的に、2020TDM推進プロジェクトに登録して情報収集を始めました。

人の流れに関する取組――――――――

■ 全従業員にノートパソコンを支給、自宅からサーバへのアクセスを可能としてテレワークを促進

 コロナの感染状況に応じて、1週間のうち2~3日を交代で在宅勤務とし、出社率は40%程度の頃もありました。

 2021年11月からは全員出社となりましたが、2022年2月現在は週に3日の在宅勤務としています。

 テレワークを始めた頃は、世の中のパソコン需要が増えたため、新たな機器を入手することが難しく、出張用のノートパソコンを数名で使用し、その他は私用パソコンを使用していました。現在は全従業員のデスクトップパソコンをノートパソコンに変更して対応しています。

 また、自宅から会社のサーバにアクセスできるようにしたため、全員がテレワークできるようになりました。部長職以上が出社するなどして、全員が不在の部署はできるだけないようにしていたため、取引先等からの不満はありませんでした。

 出社している人数が少ないため、出社した人(部長職以上含む)が問合せ対応やFAX、荷物の受け取り等の対応をしなければならず、その負担はあったと思います。

 無観客でなければ、恐らく東京2020大会期間中は、全員がテレワークになっていたと思います。

 なお、就業規則には在宅勤務の規定は行っていません。

■ 複数の勤怠を設定し、柔軟な勤怠を選択可能に

 オフピーク通勤については、通常9:00~17:00の勤務時間を、8:00~16:00、10:00~18:00、11:00~19:00の3つの時間帯とし、本人の希望と顧客への対応に不備がないよう選択できるようにしました。

■ 社外との会議や研修は対面とオンラインのハイブリッド

 オンライン会議は、コロナ禍をきっかけに促進されました。ソフトは主にZoomを使用しています。

 取引先と直接の商談ややり取りができなくなり、導入当初のやり辛い感は大きかったと思います。

 社外については、全国の加盟店との会議や研修はZoomで実施していましたが、現在は対面とオンラインのハイブリッドとなっています。直接話されたい方は自己責任で来ていただいたり、オンライン希望の方はZoomで実施したりしています。

社内WEB会議の様子
社内WEB会議の様子

■ 計画的な有給休暇の取得の促進

 東京2020大会やコロナ禍に関係なく、2021年から有給休暇の取得促進を計画し、夏季休暇等と併せての取得も推進しています。

 有給休暇は最大で年20日、夏季休暇は年5日の付与としています。もともと休暇は取り易い会社ではあると思いますが、積極的に取得するよう推奨しました。

 コロナ禍の影響もあり、2020年度は年末年始休暇を通常の12月30日~1月4日に加えて、その前後2日間好きな日を取得できるようにしました。

■メール一斉配信システムを活用し効率的に書類等を配布

 自社は、稟議書等は紙媒体で決済される形式ですが、在宅勤務が増えたこと、出勤者がバラバラで書類の処理に時間がかかってしまうこと等から、インターネットでやり取りできる方法も可能としました。FAXも電子で受け取れるようシステムを変更しています。

 先日、オンライン決裁のシステムを導入したと聞いていますが、あまり使用されていないのが現状です。

 押印についても、在宅勤務が多いときはメールで承認をもらって回すようにしました。

 メールのやり取りは、メールにPDFを添付する方法とは別に、メール配信システムがあり、コロナ禍以前よりこれを用いて一斉配信しています(対象;1,650社2,000店舗)。

物の流れに関する取組――――――――

■取引先に配送遅延の可能性を事前に何度もアナウンス

 東京2020大会は結果的に無観客ではあったものの、交通規制は行われていたので、取引先には、納品が遅延する可能性があると早めの注文を依頼していました。

 実際には、例えば、タイヤであればタイヤメーカーと、エンジンオイルであればオイルメーカー等と取引しており、そのメーカーから自社の加盟店に配送してもらっています。

 東京2020大会の1か月前からメールで取引先に案内を行い、さらに大会開催の2週間前にも同じ情報を配信するなど、繰り返しアナウンスしていたため、基本的に苦情等はありませんでした。

■配送状況を自社から一斉メールで配信

 顧客等からの問合せ等は自社にくるため、随時、遅延の可能性がある旨の案内をしていました。

 また、全国的な配送の状況や関東地方での配送の状況等についても、取引先の本社から情報をもらいながら、自社から一斉メールで配信する形で案内していました。

 地方のメーカーの営業担当から、個別に問合せもありましたが、「そこはこうしてください」等、こちらからお願いするケースもありました。

 運送は、運送会社と契約して行っており、都内や競技会場周辺は、この期間は配送できないと言われることもありましたが、早めに連絡をもらえたため、自社としても顧客に事前のアナウンスができ、大きなクレームもなかったと思います。有観客だったら、どうなったか分かりません。

■2020TDM推進プロジェクトからの各種情報

 コロナ禍以前は、東京都から提供された各種情報は、社内でも随時共有していましたが、コロナ禍となってからはあまり共有しなくなりました。

 「東京2020大会は本当に開催されるのか」等の疑問の声はあり、スポンサー企業とも深く取引があるため、当該企業等に開催確認など行っていました。

今後について――――――――

 人の流れに関する取組について、東京2020大会やコロナ禍がなければ、自社ではテレワークは実施していなかったと思います。実際にテレワークが出来ることが分かったので、今後、何かがあれば選択肢の一つになると思います。

 オフピーク通勤は今も継続しています。土曜出勤については、5週に1回の交代制でしたが、現在は実施していません。

 これまで集まって実施していた研修等も、本社からWeb配信し、Zoomで参加してもらう機会が増えました。これも継続しようと考えています。

 物の流れに関しては、今回の東京2020大会やコロナ禍により、「早めに遅延可能性等を案内しないと」といった意識が取引先にも芽生えてきているため、継続して早めの情報を下さいといった依頼をお願いしています。また、運送会社からの同趣旨の依頼が来ているため、自社としても早めの対応を心掛けています。

 運送会社でも働き方改革等により、特に危険物の取扱いが難しくなっています。例えば、エンジンオイルや整備工場で出た廃油の回収はかなり厳しく、これまでのような無理は効かなくなっているという話は来ています。整備工場が自社の加盟店になりますが、今回の東京2020大会やコロナ禍により、実情をご理解いただけるようになった側面もあるように感じています。