株式会社和心
(2021年11月29日インタビュー実施)
自社は千駄ヶ谷駅や北参道駅の近傍にあり、東京2020大会の競技会場も近いため、早い段階から人の流れや競技の場所・時間に関する情報収集を始めるとともに、対策の検討を開始しました。
当初は、そこまでリモートを強化していたわけではありませんでしたが、コロナ禍となったため、整備を進めるとともに、オンラインを活用しながら会議や研修等も実施し始めました。
人の流れに関する取組――――――――
■ テレワークやオフピーク通勤は現場に応じて各自の判断に委ねるとともに、大会期間中の競技情報や交通規制に関する情報は随時共有
自社としては、出社しなくても業務に差し支えない人たちはリモートワークを基本とし、そうでない人たちも、もともと出勤時間を選択できる勤務体系ですのでオフピーク通勤を推奨するなど、現場の状況に応じて各自の判断に委ねるようにしていました。また、東京2020大会開催中の競技情報や交通規制に関する情報は随時、社内で共有していました。
しかし、決算業務等があるため、出社せざるを得ない部署もありました。
出社率の具体的な目標までは設定していませんでしたが、正社員は45名程度で、通常時でも最大で30名程度の出社となっています。
コロナ禍では、出社しなくても良い社員はリモートワークに切り替え、リモートワークが多い時には出社は総務で1名、経理で1~2名となっていました。
東京2020大会開催期間中も、出社して対応しなければならない業務がありましたが、管理本部(経理・人事・総務)で4~5名を除き、その他部署は殆ど誰もいない状態でした。
現在、管理本部については特殊な理由がある社員を除いてテレワークは実施していません。コロナ禍が落ち着いているため、通常の勤務体制に戻しています。
ECサイトの企画運営等を行っているIT関係の部署や、PCがあれば仕事ができる人たちは週に1~2回のリモートワークを継続しています。
■ 「和心サミット」で従業員全体の「見える化」を図り全国の各店舗を元気に
オンライン会議は、取引先からオンラインでの打合せを打診され始めたことがきっかけとなり、社内外ともに、殆どの会議がオンラインとなりました。
このため、現在では、店舗の社員や外出中のスーパーバイザーも参加しやすくなり、今も継続して行われています。
全国の各店舗等ともオンライン会議を行っています。月に1回、全従業員(パートやアルバイトも含む約400名)を対象とした会議「和心サミット」を、Zoomを使用して開催しています。PCがない人もスマホやタブレットで参加しています。リアルタイムで参加できなかった従業員も、後日確認できるよう必ずYouTubeにアップしています。視聴後には、簡単なWebアンケートを行い、各従業員からの意見をフィードバックできるようにしています。
コロナ禍前は、経営会議に参加した上長が、その内容を後日従業員に共有する流れで行っていましたが、正確かつリアルタイムでの情報共有が難しく、また、LINE-WORKSやメールばかりでは本社や各店舗でどんな人が勤務しているのか分からないことが多かったため、今回、オンライン化が普及したことを契機に、従業員に「見える化」を図ることを目的に実施するようになりました。これまでは、3ヵ月に1回や半年に1回のペースで本社に集まったり、地方にいったりしていましたが、オンライン化により人もお金も動かすことなく、以前より頻繁に会議や打合せができるようになり、非常に便利になりました。
コロナ禍により、インバウンドの顧客が減ったり、地方等ではショッピングセンターやデパートが閉鎖したりする等、各店舗も元気がなくなってしまいがちでしたが、オンラインでの見える化により、店舗のスタッフ紹介やその地域の特色や現状等を共有することで、お互いに励まし合い、エールを送り合えるようになりました。オンライン会議は非常に好評です。
現在、携帯電話は上層部や外出の多い営業等が所有しておりますが、社内連絡などは基本的にLINE-WORKSとなっており、常時連絡は取れるようにしています。しかし、詳細な説明が必要な場合等は、短文での説明が難しいため電話連絡となりがちです。また、店舗で使用しているIT機器やPC、タブレット等も調子が悪くなると、LINEでの連絡や説明等には時間がかかってしまうため、電話もしくは出社しての対応となっています。
■計画的な有給休暇の取得促進
通常は、暦通りの休日となっていますが、営業部に属するスーパーバイザーや店長クラスは、店舗が開店しているときは交代でのシフト勤務となっています。
計画的な有給休暇の取得については、東京2020大会以前から(夏季休暇や年末年始休暇と併せて有休取得など)経営層から推奨されています。そして、東京2020大会の年は、開催時期に合わせて連続して休暇取得するよう呼びかけがありました。ただし、総務や経理等は、請求書対応や取引先からの電話対応などがあるため、誰かが出社していました。
店舗の売上等はPOSシステム(販売時点情報管理:小売業の日々の売上や販売した商品をデータ化して管理するために必要なシステム)で把握できていますが、顧客からの問合せやクレーム対応もあるため、一斉休業は現実的に難しいです。 土日はコールセンターが対応するため本社を閉めることもありますが、店舗部(本社1階部)は開店しているため、必ず誰かは出社しています。コールセンターがあっても、本社に問合せがくることもあります。
■書類等の電子化
一部、紙媒体から電子化されているものもありますが、まだ紙媒体が多く、人の手が必要なのが現状です。
■備品等の購入について
コピー用紙等の備品については、大量に使用するものでなければ各店舗の小口としてやり繰りしていますが、コピー用紙等を大量に使用する店舗の場合、本社で購入して、当該店舗等に納品してもらっています。
物の流れに関する取組――――――――
物の流れに関する取組みは、東京2020大会に備えて対策を検討しました。
物は海外からの輸入もあり、主に中国やベトナム、タイで製造し、国内に輸入したものを倉庫で管理しています。
自社の物流センターは、以前は千葉の習志野にありましたが、現在は静岡の伊東に移転しています。移転前は、輸入品は千葉で受け取っていましたが、コロナ禍となり、その量も少なくなりました。また、輸入品自体が小さいものは、混載で東京港に届くこともあります。更にコロナ禍により、商品自体があまり動かなくなっているため、倉庫に多くのものを保管しないで済んでいます。
現在、伊東の物流センターからは、宅配業者が各店舗に直送するケースが多くあります。配送ルートも宅配業者に一任しています。そして、海外からのECサイトでの注文も、伊東の物流センターから輸送しています。個人からの注文の場合、それほど多くないためFedEx等での輸送を行っています。海外に大量に卸すことは、(昔に比べて)今はあまりありません。
また、2024年問題については、宅配業者等から具体的な相談は今のところありません。
■店舗で出来る限りストックし、計画的に注文
自社は宅配便での運送が多く、契約している大手宅配業複数社より東京2020大会期間中は予定通り配達できない旨の説明を繰り返し受けていました。このため、店舗で出来る限りストックし、計画的に注文することを心掛けていました。
■ECサイト等で事前にも納期遅延等を案内
ECサイトでの注文は基本電子データで届き、各部署で該当する注文書をピックアップして、それぞれの部署で商品を取り揃えて宅配業者に集荷・配送してもらっています。この場合も、宅配業者から遅延の可能性について再三説明を受けていました。自社は、リペアセンター(修理や誤配達等の受付窓口)も兼ねているため、そのような問合せがあった場合、「この期間中は通常よりも時間がかかることがあります」と案内したり、ECサイトでは「通常よりも少し納期がかかる場合があります」といった文言を掲載したりしていました。
そのため、大会期間中は、トラブルはなく困ったこともありませんでした。
■宅配事業者と連携し、一か月の物量や荷の規模等の見込みを伝え、配送を調整
着物レンタル(着物ベース)についても、来店外のお客様には宅配便で、クリーニングの際も伊丹市にある専門業者と宅配便でやり取りすることが多くあります。
配送経費等も考え、宅配業者とは一か月の扱い量の程度や荷物の規模等を伝えながら交渉しています。
社内では、これまで商品を取り扱う各部署それぞれで発送をしていましたが、今は、自社のマーケティング室が音頭をとって一緒に同梱できるものはないかなど、他部署に声掛けしながら、まとめて発送する取組みが始まっています。
また、クリスマスシーズンのプレゼントやお正月の福袋など、毎年決まって配送する時などは、全社・本社等のグループがいくつも作成されているLINE-WORKSやGoogleのスプレッドシート等も活用して、発送時期の情報共有を行っています。
東京2020大会を振り返って――――――――
東京都からの各種提供情報については、社内外で情報共有を行わせて頂きました。
自社は競技会場から近いのですが、住宅地内でかつ幹線道路に面していないところにあるため、東京2020大会期間中は、それほど人が多い印象はありませんでした。ただ、通勤時間や昼食時間帯等では「人が多かった」や「結構、人が集まっていた」等の話は出ていました。
店舗で出来る限りストックする予定でしたが、無観客となり、最終的にはそれほどストックを多くすることはありませんでした。 有観客であれば、人が多く動き、店舗の売上も伸びると想定していましたが残念でした。
今後について――――――――
人の流れに関する取組みについて、仕事の内容によっては、もっとテレワークが進められれば良いと思います。
現在、押印による決済関係も電子化できるよう、社内システムの変更検討を進めています。これが叶えば、管理本部でも週1~2回はテレワークできるようになると思います。
物の流れに関しては、自社の物流は宅配便利用が多いため、荷物のサイズや送り先を管理することで物流費を抑えたいと考えています。具体的には、配送する箱の大きさも決まっているため、配送数量を事前に宅配業者と交渉・調整したり、自社の倉庫との行き来はなるべく混載にしたり、店舗にはできる限りまとめて配送したりする等、少しずつではありますが、そういった細かい点を詰めながら経費を削減していかなければならないと考えています。