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インタビュー

東京2020大会期間中のTDMの取組等に関するインタビュー

日本電子計算株式会社

(2021年11月2日インタビュー実施)

 2018年に九段下で開催された2020TDM推進プロジェクトの説明会の参加をきっかけに、オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)時の対応の検討を開始しました。

人の流れに関する取組――――――――

■出勤に関する社内通知等での呼び掛けと、柔軟なリモートワークへのシフト

 東京2020大会の対策として準備を進めていましたが、コロナ禍によりテレワークの取組が加速しました。

 コロナ禍を受け、出社率の会社目標を40%未満とし、各部署に協力依頼を行うことで、全社的にも出社率は40%以内に収まっていました。

 出勤に関しては、社内通知を発信し、出社を控えることや、時差出勤を行うように呼び掛けました。

 東京2020大会が開催されるからということからも、感染症対策の面からも、社内では受け入れられました。

 自社は、テレワーク先を自宅に限っていないため、セキュリティが確保されたネットワーク環境下であれば、自宅近くや出張先近くのサテライトオフィスを使用したリモートワークも可能としました。

 全社員にスマホは配布していますが、職場に電話してくるお客様もいるため、郵便物や社内便の受け取り、電話番等で、各部で毎日数名が出社していました。総務部では郵便対応で2名、電話当番で2名の合計4名は最低出社していました。

 通勤手当は、従前は定期代を支給していましたが、実費精算に変更しています。

■ワークスタイルに合った働き方を実現させるサテライトオフィスの設置

 サテライトオフィスは、2020TDM推進プロジェクトの説明会に参加する以前より、グループ会社が設置した池袋サンシャインにあるスペースを使用していました。当時はその1箇所のみの使用です。

 2021年6月からは、三井不動産株式会社が全国展開しているサテライトオフィスを契約して利用しています。

 サテライトオフィスを契約した理由は、東京2020大会やコロナ禍でテレワークが推進されるなかで、小さな子どもや介護を抱えている方等、自宅で勤務できない環境下にある人の働き方の選択肢を広げるためでした。現在ではそれぞれのワークスタイルに合った働き方ができるようになっています。

■電子契約の活用により、手続き等の電子化を促進

 IT企業として、コロナ禍以前よりペーパレス化を進めており、社内の業務手続きをワークフローとしての電子化を進めていましたが、最後に、押印の問題が残りました。

 押印が出社の要因の一つとなっていたため、社内押印を廃止し、電子化しました。

 加えて、弁護士ドットコム株式会社のクラウドサインによる電子契約を利用し、契約書の押印行為も電子でできるようにしました。これ以外にも、出張の申請や書類の交付等についても電子化を図りました。書類のうち、稟議は10数年前から電子化されています。

 これにより、通常の社内業務を行うための出社は8割程度無くなりました。郵送される請求書等もあるため出社をゼロにすることは出来ませんが、例えば、請求書がPDFで送付されれば、そのまま会計処理できるよう体制は整っているため、まだ電子化を進める余地はあると考えています。

 請求書は、取引先からメールに添付して提出してもらうこともありますが、郵送されたものを社内でPDF化するケースもあります。

 社内の各事業部には、なるべく電子契約とするようアナウンスをしていましたが、請求書の電子化については、電子メールでの送付が取引先の負担になる場合も考えられるため、特にお願いはしていません。

 社内システムは社外向けに営業・提案はしておらず、あくまで社内のためだけに技術本部が対応しています。

 自社は、公共事業部と証券事業部、産業事業部、金融事業部、BPO事業部の5事業部制となっており、各事業部で開発・運用しているシステムをお客様向けの業務サービスとして実施しています。お客様向けの勤怠管理システムは、産業事業部において営業・提案しています。

■会議等のオンライン化を推進、会議室も感染対策を徹底

 会議室は三密を避けるため、ドアを開放して固定したり、例えば16人部屋は半分の8人までになるようイスを間引いたりしました。もともと会議自体が多かったのですが、開催数を減らし、参加人数も減らすようにしていました。

 また、Zoomでのオンライン会議等を行うように推奨していました。コロナ禍となり、対面での会議はだいぶ少なくなりました。

 システム会社であるため、会議等のオンライン化は、特に大きな問題はありませんでした。

 取引先との打合せは、こちらからオンライン会議をお願いするだけでなく、先方からお願いされることもありました。研修、採用などもZoom開催としました。

 緊急事態宣言下では、本社1階の受付を閉鎖し、お客様にも来社いただかないようにしていました。やむを得ない場合には、お客様を担当する社員から総務に連絡してもらって入口を開けるという体制をとっていましたが、宣言が解除されてからは、1階の受付閉鎖を解除する等、緩和できるところは緩和しています。

 会議についても、現在は新型コロナが収束してきたこともあり、Zoomと対面のハイブリッド会議が多くなっています。

 また、対面で打合せをする場合は30分以内としています。

 対面であれば議論しやすいことも、オンラインだと難しい場合があり、コミュニケーションについての課題は多いと思います。

物の流れに関する取組――――――――

■運送会社との連携による配送時間や運行ルートの見直し

 自社では、専業の運送会社に社内・社外の配送をお願いしています。東京2020大会時には、運送会社に配送時間や運行ルートについて検討をいただきました。

■各部署で取引先と事前調整

 証券系や公共系の業務では、証券会社や自治体への紙書類の納品があるため、東京2020大会の影響を説明してご理解をいただきました。説明にあたっては、各部署で取引先との調整も行っていました。

■ストック確保等が必要な物を検討して対応

 配送するものとしては書類が主ですが、サーバーやパソコン等を納品することもあります。

 物品・備品の調整について、コピー用紙は事前に多めに購入し、1、2か月分ほどストックしていました。この他、文房具類は大きいものでもないため発注調整等は行っていません。

 社内の自動販売機、特に食べ物等日持ちしないものの交換時間等の調整はあったようです。

東京2020大会を振り返って――――――――

 東京2020大会では、コロナ禍の影響もあったと思いますが、想定していたほど影響はなかったという印象でした。テレワークの取組みが進み、ここまで出来るということが分かったので、継続して取り組んでいきたいと思っています。

 2020TDM推進プロジェクトからの情報については、事前にどの程度影響があるのか把握できないと対応の取り方も検討できないため、確認の意味で活用していました。

 社屋がある九段下は、日本武道館があり、観光客など人の往来が多くなることが予想されたため、大会輸送影響度マップ等を参考にしていました。実際には無観客となり、想定していたよりも混雑もなく、自社にはあまり影響はありませんでした。有観客だった場合、もっと対応しなければならなかったことは多かったと思います。

 2020TDM推進プロジェクトからのメールマガジンは、新しい情報のキャッチとその都度の判断材料として、非常に役に立ちました。

今後について――――――――

 コロナの第六波が来る恐れがあるため、これまでと同じ体制で、今後も出社率を4割以下に抑える予定です。

 また、会議室のドアの開放やイスの数の間引きは変えておらず、当面はこのままで進めていこうと考えています。

 テレワークの目標についても、社内アンケート等を行ったうえで、改めて社員のニーズ等も踏まえて考えていかなければならないと思っています。

 テレワークが常態化し、出社が半数以下となれば、社屋の床面積を小さくすることも考えられますし、空間の有効利用等も考える必要が出てくると思います。ただし、執務室の面積を小さくすると密になる可能性があるため、この点についても留意する必要があると考えています。

 出社率を上げてしまうと執務室が密になるという懸念も出てくるため、当面は現状維持という方向性です。