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イベント

スムーズビズの各イベントの
ご紹介をさせていただきます

「スムーズビズ推進大賞」受賞企業によるオンライン座談会~新しいワークスタイルの定着に向けた先進事例紹介~

 東京2020大会や感染症の対策の一環として取組が進んだ、スムーズビズの各取組。
 東京都では、これらの新しいワークスタイルの取組継続及び社会への定着に向けて、2019年11月に「スムーズビズ推進大賞」を受賞された企業・団体様による受賞後の取組状況やコロナ禍における対応事例など最新の状況を紹介する座談会を2022年1月24日(月)に開催しました。


当日のプログラム

■開催日時:2022年1月24日(月)15:00~16:30
■開催場所:オンライン(Zoomを使用)
■プログラム:
 【第1部】都の取組紹介
 【第2部】スムーズビズ推進大賞受賞企業による取組紹介
 【第3部】座談会形式でのディスカッション・質疑

■パネリスト:

シックス・アパート株式会社

シックス・アパート株式会社
広報・『リモートワーク大全』著書
 壽 かおり 様

日本電気株式会社

日本電気株式会社
人事総務部  シニアマネージャー
 宗 由利子 様

サプライチェーン統括本部
物流統括センター長
 渡辺 朋子 様

京王電鉄株式会社

京王電鉄株式会社
経営統括本部  経営企画部 部長
 川田 裕史 様

コニカミノルタジャパン株式会社

コニカミノルタジャパン株式会社
コーポレート本部  経営企画部 副部長
 牧野 陽一 様

働き方デザイン委員会

働き方デザイン委員会(旧:テレワーク実行委員会)  委員長
 長沼 史宏 様
(アステリア株式会社 執行役員・コミュニケーション本部長)

日本マイクロソフト株式会社

MINDS(Millennial Innovation for the Next Diverse Society)
日本マイクロソフト株式会社 MINDSコミュニティリーダー
 山本 築 様

【第1部】都の取組紹介

第1部では、東京2020大会に向けたスムーズビズの展開と総括について、東京都から説明を行いました。

小松弘尚氏

東京都 都市整備局都市基盤部調整担当課長 小松 弘尚

 まずは、東京都より東京2020大会に向けたスムーズビズの展開と総括について説明があった。
 展開では、2019年に行ったイベントや取組みの紹介、コロナ禍における呼びかけ、大会期間中における広報活動について説明された。
 総括では、都が行ったアンケート調査が示され、緊急事態宣言下ではあったが、大会期間中約6割の企業にテレワークやオフピーク通勤を実施いただいたことが発表された。
 その他にも2020TDM推進プロジェクトの登録企業・団体が5万社を超えるなど多くの企業や個人の皆様に協力いただいたおかげで、道路・鉄道とも交通量が減少し、選手や大会関係者の円滑な輸送サービスが実現されたことに謝意が述べられた。
 最後に、大会やコロナ禍を機に大きく進んだこれらの取り組みを後戻りさせることなくレガシーとして定着させること、また感染症拡大防止や台風・地震など非常時の事業継続、BCPの観点からもスムーズビズへの引き続きの協力を求めた。

 

※東京都の取組紹介の資料はこちら

【第2部】スムーズビズ推進大賞受賞企業による取組紹介

第2部では、スムーズビズ推進大賞受賞企業(6社)に自社の取組について、講演いただきました。

壽 かおり 様
イメージ
※「リモートワーク大全」
リモートで働く個人のノウハウ満載です!

▶シックス・アパート株式会社

広報・『リモートワーク大全』著書
   壽 かおり 様

 当社では「最小限のルールでQOL(クオリティオブライフ)の向上を目指す出社不要のワークスタイルSAWS(サウス)」と名付けた、働き方を行っています。
 私たちは東日本大震災を契機にテレワークを導入、2016年親会社から独立したことをきっかけに、オフィスを50席以上から10席のみとし、基本、家やワーキングスペースなど好きな場所で働きオフィスには必要な時だけ出社することとしました。
一方、従業員同士のコミュニケーションを図るため、毎月1回全社員が集まり全体会議やパーティーを行っていました。

 コロナ禍により、2020年4月にはオフィスも閉鎖し、ミーティングも全部オンラインに切り替え集まる機会をゼロにしましたが、元から家で働いていたので、リモートによるコミュニケーションにもスムーズに移行できました。
そして、住んでいる場所にいる時間が増えたことによって、地域の人とのつながりが増えたり、個人のスキルを生かして地域の紹介サイトを構築・運営するなど、これまで以上に地域貢献が増えました。
 リモートワークは、感染症流行時だけでなく、災害時のBCP対策や多様な人材を獲得するためにも必然だと思っています。
同時に、個人においても、住む場所の自由、家族や趣味の時間の増加、満員電車の回避という点でも、リモートワークは有用であるということを実感しています。このような取組みが皆さんの参考になればと思います。
SAWSの取組みはこちらもご参照ください:https://www.sixapart.jp/saws/

宗 由利子 様
渡辺 朋子 様

▶日本電気株式会社(NEC)

人事総務部 シニアマネージャー 宗 由利子 様

サプライチェーン統括本部 物流統括センター長 渡辺 朋子 様

【人の流れ・働き方改革】

 弊社はテレワークへの取組みを継続してまいりましたが、東京2020大会のスポンサー企業でもあったことから、スムーズビズの活動を活用させていただきながら、2019年の夏には、1週間連続で社員が会社に来ないで働いてみる、大会の半年前には、一日誰も会社に出社しない状態で業務を継続してみるというトライアルを行ってきました。これらの成果は、直後の緊急事態宣言時に功を奏したと考えています。
 COVID-19による第一回の緊急事態宣言の時は、8割ぐらいの社員がテレワークを行い、今も7割ぐらいの社員がテレワークを継続しています。そうした中、弊社ではこれからの働き方を「Smart Work 2.0※」とし、働き甲斐にフォーカスした施策を練っています。具体的には、ロケーションフリー、コミュニケーション・ハブ、共創空間の3つを最適に組み合わせ、社員の誰もがこの3つの働き方をできるように改革を進めています。
 テレワーク中心の働き方でコミュニケーションが不足するところもありますが、デジタルを使いコミュニケーションの機会をつくっています。例えば、月に1回タウンホールミーティングとして、社長からのプレゼンテーションと社員からの質問の機会を設け1万人以上の社員がつながっています。
 また、出社をしない働き方が前提になった中で、会社に来る意義は何か。チームのオープンなコミュニケーションをより活性化させる場所や、お客様と積極的にコミュニケーションを取れるような場所を会社の中に作っていくなど、働く場所についても今、改革を進めています。

Smart Work 2.0については、こちらをご参照ください。
https://jpn.nec.com/press/202111/20211122_01.html

【物の流れ】
 弊社は製造業でもあり、物の流れについても様々な取組みを行っています。取組みの契機としましては、2019年6月に行われたG20大阪サミットで交通規制への対応が迫られました。そのため、まずは交通規制情報を周知するための基盤を構築し、社内関係部門と情報共有をできるようにしました。次に、物流量抑制を狙って納期を少し緩やかにしたり、余裕を持たせるなどをして、結果として50%減とすることができました。東京2020大会時には、東京湾岸に点在するサプライチェーンの重要拠点ごとのリスクを想定して、さらに対策を練りました。現在のCOVID-19下でもこうした取組みを続けています。
 こうした取組みは台風や大雪、今後のCOVID—19等々サプライチェーン上の災害において、交通インフラの制約が見込まれる中でもスムーズにビジネスを継続していくためには有効と考えられるので、これまでの経験を生かして引き続き取組んでいきたいと考えています。

川田 裕史 様

▶京王電鉄株式会社

経営統括本部 経営企画部
 部長 川田 裕史 様

 弊社では、社員に向けたものと沿線のお客様に向けたもの、それぞれについて取組みを行っています。
 社員に向けた取組みとしては、京王八王子と京王多摩センターで弊社が運営するKEIO BIZ PLAZAというサテライトオフィスを利用できるようにしたり、コアタイムの短縮などフレックスタイム制度の拡充を行っています。
 沿線の方々に向けたものとしては、通勤と働き方に関する取組みがあります。

 通勤に向けたものとしましては、有料座席指定列車(京王ライナー)を増発し、オフピーク通勤をしやすいようなダイヤ編成としています。また、ラッシュ時間帯における混雑状況の情報も提供しています。オフピーク通勤については、鉄道だけではなくバス事業においても推奨しており、引き続き力を入れていきたいと思っています。
 働き方に関する取組みとしては、会員制サテライトオフィスの拡充やホテルでのテレワークプラン、駅構内へのワーキングボックス設置などを行っています。
 会員制サテライトオフィスは、京王八王子、京王多摩センターに加え、新宿、都庁前、府中の5カ所で展開しています。新宿と都庁前の店舗では利用者の属性も踏まえ、事前の会員登録が不要な一時利用も可能にしています。
 ホテルではビジネスホテルの利用時間別プランに加え、高尾山口駅にワーケーションとしても楽しめる体験型のホテル「タカオネ」も展開しています。
KEIO BIZ PLAZAについては、こちらもご参照ください
https://keio-bizplaza.jp/
※京王ライナーや混雑状況については、こちらもご参照ください
https://www.keio.co.jp/zasekishitei/
https://www.keio.co.jp/train/other/off_peak/index.html

牧野 陽一 様

▶コニカミノルタジャパン株式会社

コーポレート本部 経営企画部 副部長
 牧野 陽一 様

 弊社は、これまでも、テレワークなどに取り組んできましたが、これからのニューノーマル時代の働き方として、いろいろな働き方や働く場所について模索している状態です。
 2015年にテレワークを部分的に実行し、2016年夏に全社的なテレワークトライアル、そして2017年2月にテレワークを全社的に開始し、Beforeコロナからいつでもどこでも働ける環境の構築を進めてきました。2020年2月から、Withコロナになり、「社員の安心安全を守る」という、もう一つレベルを上げた、テレワーク中心の働き方に移行していきました。

 引き続き、従業員や顧客の満足度向上、事業性継続性の確保、優秀な人材の確保を目指し、働き方改革やテレワーク、スムーズビズに取り組んでいきます。
 これらを経て、現在、ニューノーマル時代の働き方と働く場所の方向性として、オフィスワーク、テレワークが融合した、ハイブリッドな働き方が必要になってくると考えています。社員の環境、業務内容等は人それぞれ異なるので、テレワークだけ、オフィスワークだけというのではなく、それぞれに合った場所を用意する必要があります。オフィスは、単なる働く場所というところから、知を生む場所に、変わっていきます。これからの組織、会社には、生き生き働く環境づくりが大事になると思います。
 そのためには、業務効率、創造性、エンゲージメントといったものがオフィスで実現される価値として重要になってくると考えています。テレワークが進んでも、出社しないといけない業務もあります。そうすると、「働く場所=オフィス」ではなく業務効率を意識する形で環境を用意するというところも十分に考えないといけない。そして、「働く価値を高める=最大のアウトプットを実現する」ということを考えれば、その仕組みづくりも必要です。
 当社では、10年、20年後を見据え、働き方、企業とともに進化し続けるオフィスづくりが重要だとを考え、「つなぐオフィス」をリアルオフィスの中で実践しています。
 
※「つなぐオフィス」については、こちらもご参照ください。オフィスの見学等も可能です。
https://www.konicaminolta.jp/business/solution/space-design/

長沼 史宏 様

▶働き方デザイン委員会(旧 TDMテレワーク実行委員会)

委員長
 長沼 史宏 様
(アステリア株式会社 執行役員・コミュニケーション本部長)

 私たちは、2019年7月、オリンピックの1年前に、TDMテレワーク実行委員会として、交通混雑の緩和を目的に 活動を開始し、現在、IT企業を中心に約50社で運営しています。当初はテレワークを推進する企業が中心でしたが、最近では山形の酒蔵や地方自治体も入っています。
 2020年初期からコロナのまん延とオリンピックの延期により、ほぼ強制的に、6割ぐらいの企業がテレワークを始め、一気にテレワークに対する捉え方、目的が変わりました。この間も、会社の中でいろいろな古いしきたりがテレワークの阻害要因になっているということで、私たちはハンコの供養祭というムーブメントを起こしてきました。

 テレワークが常態化する中で、オフィススペースを大幅に削減しようとする企業が増えてきましたが、そこでの新たな気付きとしては、「たまには集まる」といったフィジカルな関係性、それからバーチャルオフィスなどを活用しリモート環境でも同僚との距離感を感じることのない就業環境をつくることの重要性でした。コワーキングスペースやバーチャルオフィス等の“場所”を上手に使い、テレワークが常態化しても、直接会っていた場面を、代わりに創り出していくという取組みも各社で広まりました。また、このようなニューノーマルな働き方をシェアする情報共有会も行ってきました。
 さらに、地方移住とか、ワーケーションについても実際に導入する会社が増えてきており、その受け皿となる、地方自治体さんとキックオフをしながら、企業のニーズを捉えたワーケーションの施策を展開いただきました。実際に、静岡県、秋田県の自治体の方々と、毎週ミーティングをして、いろいろと企画の面でアドバイスをさせていただきました。
直近の活動として、2021年12月3日~9日、国の障害者週間に合わせて、就労支援センターの方と連携して障害者雇用啓発セミナーを開いて、実際に今、仙台に在住の障害者の方に、大阪の会社でテレワークをしている事例をお話しいただきました。
 このように、テレワークを含めた多様な働き方は、育児中や介護中の人も、障害のある人も、いろいろな方々が社会で活躍する場を創ることを可能とし、多様な社会の受け皿にもなると考えています。この委員会は会費など頂かずに運営しています。こうした活動にご興味がありましたらお気軽にご連絡ください。
 
※働き方デザイン委員会については、こちらもご参照ください:
https://www.facebook.com/TDMtelework/

山本 築 様

▶MINDS(日本マイクロソフト株式会社他)

MINDS(Millennial Innovation for the Next Diverse Society)
日本マイクロソフト株式会社 MINDSコミュニティリーダー
 山本 築 様

 MINDSというコミュニティは、「すべての個人が自分らしく働く社会を実現する」というミッションと、異業種、垣根を越えて、そしてミレニアル世代からどうやって多様性ある働き方を日本社会に浸透していくのか、というビジョンのもと、異業種連携である働き方改革推進コミュニティとして、2018年の11月に発足しました。当初は8社の企業からスタートしましたが、現在は20社、人数では100名近くがどういう働き方を将来したいかというミッションの下に、色々なプロジェクトを発足しています。我々は、インダストリー、そしてライフスタイル、ワークスタイル、この3つからなる働き方改革の推進、その自分がどういうふうにワクワク働くのか、それがどう継続性あるものに社会として浸透していくのか、という点で大きく3つのことに取り組んでいます。

 まず、社外インターンプロジェクトです。こちらは、2019年に1社からスタートしましたが、現在、複数社を同時並行で社外インターンをキックオフしています。実際、企業間でNDA(秘密保持契約)を結びながら、自分で体験してみて、そして感じたものをさらに持ち帰り、そこから自分のキャリア、働き方、生き方、今までどういう影響を与えていくのか、こういったところをリモートで実践しています。
 2つ目は、ワーケーションプロジェクトです。リモート環境を使いながら、そこに行かなくても地域や市役所の人たち、ビジネスをやっている人たちと交流し、新しい新規ビジネスを一緒に考えることを取り入れています。コロナの環境下でもリモートで様々な方々とディスカッションをして、コロナ後を見据えながら活動しています。
 最後は、教育プロジェクトです。完全リモート環境で、松江南高校の学生の皆様に、いろいろな地域の探求学習の支援を行いました。学生の修学旅行などのイベントが中止になる中、体験、そしてワクワクというものを、リモート環境で提供していきたいということで、我々がどういう仕事をしているのか、というところを共有するとともに、学生たちの自らの探求、ワクワクを途絶えさせないようにサポートさせていただきました。
 こうしたことを大切にしながら、垣根というか境界を越えて活動を続けていると、いろいろな気づきが、主体性をもって生まれます。そうなった時、主体性ある学びの姿勢がMINDSメンバーにどう訪れるのか、それをどう共有するのか。そして、既存の習慣や規制からどう脱却し、自分たちからアプローチしていくのか。こうした3つをグルグルと速く回す、それがMINDSの活動です。引き続きこうした社会への発信も行いながら、MINDSの活動に興味のある皆様と一緒に活動していきたいと思っています。
※MINDSについては、こちらもご参照ください:
https://minds2019.com/

【第3部】座談会形式でのディスカッション・質疑

 受賞企業の皆様の講演内容からは、コロナ禍により、ワークスタイルや若者を始めとする働く人の意識が大きく変わっていることが改めて見て取れました。そして、社会全体でも、もともと働き方改革の一環や、感染拡大防止のBCPの観点で取り入れてきたテレワークについて、人材活用や生産性向上の観点から、より能動的に取り組み、パフォーマンスの最大化を図ろうとする動きが増えてきています。こうした多様なワークスタイルが定着していくことは、社会全体の多様性確保にもつながっていくものです。
 今回は、組織やチーム全体でテレワークの生産性向上を図りながら、ポストコロナでどのように多様なワークスタイルの定着につなげていくかというテーマで、座談会を開催しました。

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 コロナ禍により、ワークスタイルや若者を始めとする働く人の意識は大きく変わりました。そして、社会全体においても、もともと働き方改革の一環ではじまり、その後感染拡大防止のBCPの観点で取り入れられてきたテレワークですが、や人材活用や生産性向上の観点から能動的に取り組み、パフォーマンスの最大化を図ろうとする動きが増えてきています。こうした多様なワークスタイルが定着していくことは、社会全体の多様性確保にもつながっていきます。
 第3部では、第2部のスムーズビズ推進大賞受賞企業の取組紹介を踏まえ、テレワークなどにより生産性向上を図りながら多様な働き方を進めて、ポストコロナでどのようにワークスタイルの定着につなげていくかというテーマで、座談会形式でお話を伺いました。

◇リモートワークの課題に対する取組み
 «ポイント»
 ●テレワークでもリアルと同じような環境を作るためには、管理職の育成が課題
 ●社内外のつながりが、新しいイノベーションのきっかけを生む
 ●組織全体で新入社員などのニューカマーをサポートすることも重要

 コロナ禍が長引く中、個人のレベルで在宅勤務をどうやるかというのは、各々経験を積んできて、ノウハウが上がってきているのではないかとと思いますが、今後はチームでどのように成果を上げるかといった点がより課題となると考えます。
 在宅前提でもチームとして成果を上げるために、どういう取組みがあればいか、どういった点から始めたらいいとか、ヒントになるようことを教えてください。

長沼氏働き方デザイン委員会
長沼氏
 まずは、簡単に確認がとれるよう、電話とかメールではなくチャットを導入するなどして、バーチャル内でリアルと同じような環境をつくる必要があると思います。あとは、早く会社に来ているから偉いというのではなく、仕事のアウトプット量やクオリティで評価するといったことも必要になると思います。
 テレワークは、どちらかというと管理職の方にとって非常に難しくなってくるのかなと思います。上司の方々からすると、目の前に部下がいた方が管理しやすい。そういった点で、新しいワークスタイルに合ったマネジメント能力を身につけるために管理者側の新たな教育も必要になると思います。

テレワークにおける部下へのマネジメントに関連して、コロナ禍でフルリモートの時にどうやってコミュニケーションを取ったらいいのだろうとか、今後ハイブリッド化が進んでいく中で、どういった工夫や集まり方をすればいいのかなど、なにかアドバイスがあれば教えてください。

壽氏シックス・アパート
壽氏
 メンバーが集まる際にはクリエイティブなディスカッションをするなど、機会を活かす取組みを考えていくのがいいと思います。私たちもコロナ禍前は月に1回しか集まらなかったのですが、普段リモートで働くからこそ、こうして集まる時が貴重な機会となり、部署やポジションの違うメンバー同士が積極的にコミュニケーションを図っていました。これからのオフィスのあり方についても、コミュニケーションを誘発するためのものとして考えていく必要があるでしょう。
 また、リモートによるコミュニケーションが増えることで、企業の垣根を越えて異業種の企業同士のコラボや、志を同じくする他社のメンバーとのコミュニティ活動など、新たな関係性を作りやすくなります。社外とのリレーション強化は、新しいイノベーションのきっかけにもなるでしょう。

 在宅勤務が増えると新入社員の教育やメンタルヘルス等のフォローをどうするかも課題となると思いますが、どう対応していますでしょうか。

宗氏NEC
宗氏
 弊社では、コロナ禍において新入社員は、入社式からすべてオンラインで対応しており、中途採用もすべてオンラインで進めています。一方で、そういうニューカマーの人たちが新しい職場に入っていった時に、これまでの出社前提であれば日々顔を合わせながら、顔と名前を一致させて覚えていきましたが、なかなかそれができないという中で、いろいろな取組み、工夫をしています。どうしてもメンタル含めて非常に難しい状況になっていく社員もいますので、産業医も含めてサポートする仕掛けも用意して進めています。また、チームで積極的に集まって、チームの力を蓄える時間というものを作っていく、あるいは、そういう場所を会社としても積極的に用意しています。

◇オフィスのあり方・働く場所について
 «ポイント»
 ●個人のアウトプットが最大化されるよう、働きやすい環境を選択できることが大事
 ●オフィスは、チームで集まってコミュニケーションする場所になりつつある
 ●様々な用途に対応できるサテライトオフィス、テレワークプランも出てきている

 先ほども話が出てきましたが、次はオフィスの今後についても話をしたいと思います。今後はリモートと対面の使い分け・ハイブリッドとなっていくかと思いますが、これからのオフィスの役割をどう考えるか、どう変えていこうとしているのかお聞かせください。

牧野氏コニカミノルタジャパン
牧野氏
 組織、個人の働き方や家庭の環境などは各自違います。東京都のスムーズビズという中で見ると首都圏というくくりになりますけれども、日本国内、さらには海外で働くことも考えられます。そういった意味では、これからはどうやればアウトプットが最大化されるかをしっかり見ていかないといけないと思います。
 完全にテレワークがいい、出勤した方がいいとかではなく、各々が働きやすい環境を会社は用意する必要がありますし、オフィスもそうあるべきと思います。

 今はコロナ禍で、出勤抑制のためにフルリモートを含むテレワークが推奨されているところもあると思いますが、将来的に生産性を最大化できるようにというところで、時間や場所を選べる働き方というのが選択肢としてあって、それが自由に使えるのが、目指すべき姿なのかなというのを皆様の発表を聞いてきて改めて感じます。

宗氏NEC
宗氏
 出社しない働き方が浸透してきた中で、顔を合わせてチームの力を高めていくことの大切さや、積極的に一歩外に出て、お客様と対話をしていく必要性をもすごく感じています。先ほどのお話の中でも、こういう時代だからこそ、外のお客様と積極的に会える機会ができたというお話もありましたが、そういう機会を積極的に作っていく、それを会社としてサポートしていくための場所にしたいと考えています。そのために、チームで集まってコミュニケーションが図れる場所、あるいは外のお客様や部門を超えて会話できる場所としたオフィスづくりというものを今、進めています。

 企業による新しいオフィスのあり方が検討されている中で、鉄道事業者様も様々な取組みも行われています。京王電鉄様の取組みは沿線住民にどのような利用をされているか、またどういう手応えを感じているでしょうか。

川田氏京王電鉄
川田氏
 先ほども紹介しましたが、弊社ではビジネスホテルのテレワークプランや、駅構内のワーキングボックス、会員制サテライトオフィスを用意しています。ホテルでは、長い時間ゆったりと使いたいという方や、重要な商談や会議、パソコン利用が厳格に制限されているような方々への用途が主なものになるのではないかなと思います。
 ワーキングボックスは、どちらかというと、その場でさっと寄って一時間ぐらい使うといった利用が主な部分と思います。さらに、レンタルオフィスも現在つくり始めています。
 本業は鉄道会社ですので、なんとか人を動かすような仕掛けをつくっていかなければいけませんが、このような情勢においては、こうした事業もやっていかなければいけないなと思っています。

◇多様な働き方に対する企業の理解
 «ポイント»
 ●まずは取り組み、トライ&エラーで、経験をまとめ・分析することが非常に重要
 ●多様性を受け入れる会社が持続的な社会、持続的な企業につながっていく
 ●コロナ禍で、次の社会がどうあるべきか、真剣に考えている世代がいる

 新しい働き方として在宅勤務やサテライトオフィスのほかに、ワーケーションがあります。ワーケーションは生産性向上や休暇の取得促進のほか、地域貢献にもつながります。しかし、どのように進めればよいか、どうしたら会社に理解されるのかといった声も寄せられていますが、いかがでしょうか。

山本氏MINDS
山本氏
 ワーケーションのみならず、まずはチャレンジする、体験するということが、まだまだ足りていない気がします。我々、ミレニアル世代には、まずはやってみようというマインドが強くあります。役員レベルの皆さんとも一緒にやってみる、そしてダメだったものはダメ、良かったものは良い、こういうふうにトライ&エラーして、まずは取り組んでみるところが非常に重要だと思っています。
 「ワーケーションってどうなんだろう」ではなく、まずは実際にやってみて、体験して何が良かったのか、逆に何が課題かなど、経験したことをまとめ、その後自社で分析することが、一番重要だと思います。

 コロナ禍でも多様な働き方が進んでいる企業と、まだこれからという企業があります。経営者、管理者のマインドやネックポイントなど、どう変えていったらいいでしょうか。

長沼氏働き方デザイン委員会
長沼氏
 一番理想的なのは経営者に理解があって、どんどんやろうというケースですが、決してそればかりではなくて、「どうすればうちの社長や上司を説得できますか」などといった相談が意外と多いというのも実態です。多様な働き方が進んでいる会社で働きたいという方が増えていると思いますが、多様性を受け入れるということで言うと、今の学生さんはSDGsに対して非常に理解が深いところがありますので、そうした柔軟な発想があるかというのも指標にされていると思います。もう一つの側面としては、これは会社としての見方ですが、やはり多様な人材を確保するのと、さらにはイノベーティブな社風をつくりだすという面でも、いろいろな人が関わりやすい社風の方が結果として持続的な社会、持続的な企業にもつながっていくことになるかと思います。
山本氏MINDS
山本氏
 このコロナ禍で、若手世代のみならず、我々世代も次の社会どうあるべきか、真剣に考えていると強く感じています。コロナになって、自分の常識が全部変わってしまうみたいなところに直面した世代というのは、次の働き方がどうあるべきかと真剣に考える流れが出てくるのだと思います。その流れで出来たプロジェクトが、教育プロジェクトです。働き方をどうにかしたい、私たちが企業を変えたいではなくて、次の世代の子どもたちに何かできないのか、という世代になり始めたのが、特徴的だなと思います。それは、我々世代だけではなく、いろいろな世代がそういう常識、次のステップをどう考えるのかと考えていると思うので、いろいろな企業の人たちのみならず、自治体の人たちとも意見交換をしながら、トライ&エラーしていきたいなと思っております。

◇災害時における取組み
 «ポイント»
 ●ガイドラインや定期的な訓練で常に備え、有事の際はテレワークを活用

 地震などの突発的な災害や、台風・大雪などで出勤できなくなった場合に、社内でどういったルールがあるのでしょうか。

牧野氏コニカミノルタジャパン
牧野氏
 弊社では安否確認システムを導入しており、定期的に訓練をしています。先ずはシステムから通知を受けた全従業員は、本人と家族の安否情報、居場所を会社に報告します。次に上司は、システム内の情報から従業員と家族の状況確認を行い、身の回りの安全確保ができたという前提のもと、部下にテレワーク活用を促せばいいだろうと思います。
 最近は、地震などの突発型と、雨や降雪などが予想される場合の進行型に分けて行動ガイドを作成しており、この取組みを非常に重視しています。

◇物流の効率化
 «ポイント»
 ●情報共有のための基盤構築、出荷支援情報を早めに展開
 ●早さだけではなく、安定的な物流サービスを供給することが重要

 東京2020大会時に行った物流の効率化に関する取組の中で、特にコロナ禍でも有効で、今後も続けていく意向があるものがあれば教えてください。

渡辺氏NEC
渡辺氏
 有効だったものはいくつかあります。まず一つ目が、規制や対応方法を社内の事例も含めて情報共有する基盤を作ったことです。しかし、まだこれはグローバルに対応できていないなど、課題もあります。もう一つは、施策に近いところになりますが、出荷支援情報を早めに展開していくとか、主要な代替手段を事前に検討しておくということ、今まさにCOVID-19でコンテナ不足が起きていますが、そういった時にも有効な取組みと捉えています。
 合わせて、今後、どう活用していくかというところですけれども、従前はどちらかというと物流ではリードタイムをいかに短くするのかという観点で議論されていたものが、東京2020大会やスムーズビズをきっかけに、安定的に物流サービスを供給するということが重要であるということに気づくきっかけになりました。
 皆様のお話をうかがいまして、これからの社会では、多様な働き方・ワークスタイルが多様性のある社会の実現につながるものと改めて実感しました。本日は誠にありがとうございました。

 今回、各企業・団体の皆様の取組紹介や座談会を通じて、多様な働き方や新しいワークスタイルの実践と定着が、企業の生産性向上に不可欠であること、そして、誰もがいきいきと働くことのできる社会の実現に繋がっていくことを、改めて認識することができました。
 ご参加いただいたパネリストの皆様、貴重なお話をありがとうございました。
 東京2020大会も契機に大きく広がったテレワークやオフピーク通勤などの取組みが、しっかりと社会に定着するように、今後も東京都はこうしたスムーズビズの取組みを推進していきます。